手の温度

手を取り合って。
坂道を登って。
走って、振り向いて、笑顔を浮かべて・・・・・・――――――。

家の離れているマックスと別れたタカオ、カイ、レイ、そしてはバスから降りると、こちらも解散しようとしていた。
「今日は付き合ってくれてありがとうねvまた明日ねv」
そう笑顔で言って、は皆に背を向ける。
「・・・・・・?あれ?」
が今正面を向いているのは道路。
の家は道路を渡らず、後ろの坂道を下っていけばすぐのところだ。
、どっか行くのか?」
タカオがの隣に並ぶ。
「うんっ!今日ってほら、あったかいでしょ?お散歩に行くの♪」
そう話している間にやや遠くの信号が赤になり、車が止まったので、は道路を横断した。

気持ちの良い天気。
3月上旬にしては暖かな日差し。
そして、まわりには大好きな人たち。
どうしようもなく幸せで、心がワクワク弾んでいる。

と、走っている横にカイの姿が見えた。
反対を向けば、レイとタカオの姿。
「で、どこ散歩するんだ?」
レイに言われ、はまた笑いながらあっち。と小高い山を指差した。
公園の広場のような向こうにあるその山は、丁度中央に石造りの階段があり、ずっと上の方まで続いている。
普通に走れば絶対よりも早い3人がよりも前に行かないのは道がわからないからだろう。
はその階段を上らず、もっと左の方から登り始めた。
そこは階段とは違い、舗装されていないので、手や足を使って樹や小さな崖を登って行くようなところだった。
そんなに高い山でもないし、傾斜も急すぎないので、小学生でも登れるようなところだ。
は最初についたはずなのに、もうカイたちに追い抜かされている。
家からは近いが、何かと忙しいので、ここに来たのは久々だった。
小さな頃から登ったりしているこの山を、カイたちと登っている。
『独りじゃない』って思えて、また笑顔がこぼれる。
「ほら」
思考を現実に戻すと、カイがこちらに手を伸ばしてくれていた。
どうも手が休んでいたらしく、それをカイは『登りにくい』ととったようだ。
・・・また、嬉しさがこみ上げる。
手を取ると、カイはにあわせてゆっくり登るようになった。
上には、もう到着してしまったレイとタカオが手を振っている。
手を振り返し、カイとも残りを登り始める。
「ね、カイ」
話し掛けると、カイは返事をせずにこちらにチラッと視線だけよこした。
「なんでお散歩付き合ってくれるの?」
答えは返っては来なかったが、かわりに握っている手にギュッと力が込められた。
暫くすると上につき、カイは手を離してしまった。
ちょっと残念に思っていると、の腰くらいある段から登るのを手伝うように、レイが手を代わりに差し出してくれた。
「ふぃ〜。ありがと」
「いえいえ」
レイと笑い合っていると、遠くからタカオの呼ぶ声が聞こえた。
そちらに目をやってみると、どうもベイブレーダーを見つけたようだった。
3人でそちらに駆け寄ってみると、小学生中学年くらいの子たちがバトルをしていた。
タカオもレイも、そちらに夢中になっている。
は、ベイブレードから目を離すと、周りの景色を見た。
あまり手入れの行き届いてない道。
コケの生えた噴水。
後ろを振り返れば、下の方に民家が見えた。
懐かしくて目を細めていると、隣にカイが並んだ。
「・・・あっちの道を行くとね、私が通ってた幼稚園があるんだ。すぐ後ろが山でしょ?だから私たちは『裏山』って言って、よく遊んだんだ」
小高なところから見たので、よく目を凝らせば遠くにパステル色の屋根が見えた。
「ね、カイ。ここの上に登れる?」
「ん?」
が指差したのは、噴水の上にある平たい石の事だった。
だいぶ古いものなのだろう。それは石造りでコケが生え、もう何年も水を噴き上げていないようだった。
水も薄汚れていて、水草が有象無象に生えている。
「・・・・・・」
カイが無言で見ていると、が石を支えている細い棒のようなものに飛び移った。
「登れる?」
そのままカイを見る。
「――――――・・・」
カイはまた無言だ。
だが、少し前かがみになると、2回のジャンプでその石の上に降り立った。
「うーん。やっぱりカイはすごいや。多分レイも出来るんだろうね〜・・・タカオやマックスには無理そうだな」
はそのまま宙ブラリンになり、前後に身体を揺すり始めた。
「・・・おい・・・落ちるぞ・・・早く登れ」
言われ、は苦笑を浮かべた。
「残念☆私は一回も登ったことがないのだ☆」
「・・・手を・・・」
カイが手を伸ばしたが、はその手を取らず、結局元の位置に戻った。
そのまま、またカイに背を向ける。
のしたい事がわからなくて、カイは伸ばした手を引っ込め、ジャンプしての横に降りた。
「・・・お前は何がしたいんだ・・・」
「さてv」
曖昧にごまかし、は、今度は石で作られている大きなモノを見上げた。
つられて、カイも見る。
太陽が眩しくてしっかり見えないが、それは4本の柱だった。
地に長方形の形に斜めで置かれているので、それぞれ2本が宙で交差している。
ふと横に目を戻してみるとが居ない。
かわりに、1本の柱の前で助走をつけている姿を発見した。
「―――っ・・・おい・・・!」
カイが止める前には走り出した。
傾斜が30度くらいあるそれを、は勢いに任せて駆け上り始めた。
と、すぐに止まる。
「あー!何してんだよー!」
ようやくカイとが居ないことに気がついたタカオたちがこちらを発見する。
「やっほー!きっもちいいよー?タカオたちもやってみなよー?」
交差しているところがゴールね!とが言うと、タカオたちはが登っているところとは違うところを登り始めた。
「レイはこういうの得意そうだね」
「ああ。まぁな」
あえなくタカオが失敗したので、今度はレイが助走を着け始めた。
体制を低くして、猫のようにしなやかに登る。
「なぁんだ。以外に簡単だな」
それを見てタカオが悔しがり、下からレイに早く降りろと怒鳴っている。
レイはクスクス笑いながら勢いよく走り、ど真正面にいるタカオにギリギリまで近付き、ジャンプして一回転を加えて地面に降りた。
「レ〜イ〜!!あっぶねぇじゃねぇかぁ〜っ!!」
条件反射的に腕で頭を庇ったタカオを笑いながら、レイは悪い悪いと謝りながら笑っている。
そうして、やっぱり悔しいのか、タカオが登り始めた。
「カイ」
その様子を呆れながら見ていたカイはに呼ばれ、まださっきの場所にいるを見上げた。
「カイもやってみないよ?」
に手招きされ、カイは溜息をつきながら柱の前に来た。
ろくに助走もつけなかったくせに、カイはレイみたいにとはいかないものの、危なげも無く交差のところまで登った。
それを見て悔しそうに叫ぶのはタカオ。
「やっぱすごいね」
今度はが見上げる立場になり、パチパチと拍手を送る。
「・・・・・・」
カイが無言で傾斜をくだり、ぴたっとの居るあたりで止まった。
「おい」
座ってるは、仁王立ちのカイを見上げる。
丁度後ろ側に太陽があるので、からカイの顔は見れない。
目を細め、何?と聞くと、先程と同じ問いが返って来た。
「・・・お前は何がしたいんだ」
カイの問いに、はまたニコッと笑った。
「昔私がしたことをしてもらってるの」
は見上げるのに疲れて、視線を真正面に移した。
「ここに登ることも、噴水の上に上ることも、この『裏庭』に来ることも」
ひとり、見ようと思っていた風景を、今は4人で見ている。
マックスとキョウジュがいないのは残念だけど、カイたちが居てくれる。
「私はカイたちのサポーターだけど、私だけ住むところ、離れているでしょ?
だからさっき追いかけてくれた時はホントに嬉しかったんだ〜」
自分だけ、追いかけてるんじゃないってわかって。
ちゃんと皆も、自分を追いかけてくれてるんだってわかって。
「『仲間で居れる』って思った」
ベイブレードは持っているけれど、聖獣を持っているわけでもなければ特別に強いわけでもない。
そんな自分が、ときどきみんなに着いて行っていいのだろうかと思ってしまう。
「私はベイブレードを知っている。でも、カイたちは私が幼い頃やっていた事は知らない。・・・ここがね、私を育ててくれた大地なの」
と、がまたカイに視線を戻した。
「なーんて・・・カッコつけすぎたかなぁ?」
あはは、と照れたように笑うと、カイがの頭に手を乗せた。
そのまま、クシャクシャっとやや乱暴になでられる。
「・・・さっきの答え・・・」
「え?」
「・・・を、もっと知りたかったから・・・」
それだけボソッと言うと、カイは勢いよくそこを降りた。
『なんでお散歩付き合ってくれるの?』
自分の小さな疑問。
「ぁっは・・・!」
答えてくれるのが嬉しくて、もカイの後を追うようにダッシュで降りる。
カイが降り終わった。
振りむかない。
ならば。
「―――――っ!?」
いきなり来た背中からの衝撃に、カイは驚く。
まぁ誰でも背中から勢いよく突撃されれば驚くだろうが。
「っ!危ないだろう!」
カイが振り返ると、がカイの首に手を回し、ぎゅっと抱きついた。
「私も、カイたちの事、たくさん知りたいよ・・・っ」
しっかりとカイに張り付いているため、その表情は読めないが、声色が震えていたので、泣いているのかと思った。
「あーっ!カイ!何と抱きついてんだよー!!」
ようやく交差しているところまでたどり着けたのは良いが、今度は降りられないタカオが腰を抜かしたような格好で座っているので、思わずは笑ってしまった。
「何やってんのー?」
そう言いながら離れていってしまった体温を残念に思いながら、カイはを見つめる。
「『たち』ね・・・」
いつかは自分だけを見てもらえるのだろうか?
カイは周りを見渡す。
まるで刻(とき)の止まったような空間。
古ぼけた、樹や噴水や、柱。
がカイを呼ぶ。
「今度はマックスとキョウジュも呼んでお花見しよっか?」
さぁっと風が吹く。
そういえば、ここらへんは桜の樹が多い。
あと2週間もすれば薄桃色がこの空間に広がるだろう。
大きく手を振るたちの方に向かって歩き出す。
「おい。幼稚園の方を案内しろ」
言われ、キョンとしたが、うん!と満面の笑みで頷いたので、カイは少しその笑顔にドキリとした。
いつも歳よりも大人っぽい印象をもたせるは、ときどきこんな幼い表情をする。
「こっち!レイたちも行こう〜!」
おー!とノリのいいタカオが手をあげる。
と、手に暖かなものが触れた。
それは、に微笑まれ、カイも微笑み返した。
「・・・たまには散歩もいいものでしょ?」
「・・・・・・」
ふふっと笑われ、カイは答える代わりにぎゅっと手を握り返す。
「あー!カイずっりぃ!!オレも手ェ繋ぐー!!」
タカオがぎゅーっとの左手を握り、カイに何か文句を言っている。
その様子を少し後ろから見ていたレイがクスクス笑ったので、カイは少し眉をしかめた。
「まぁたまには、な・・・?」
レイにポンっと肩を叩かれ、繋いでいない方の手で叩こうとすると、レイはひょいっとその攻撃を避け、カイから少し離れたところでニコニコと歩く。
「ほらっ!ここだよ!」
に笑顔で言われ、その建物を見る。
「あー!遊具があんじゃーん!」
遊ぼーぜっ!とはタカオに手を引かれ、そちらの方に行ってしまった。

笑顔を見ながら、惹かれる自分に気付く。
ああ、こんなにも誰かを見つめたくなるなんて。
風が吹く。
暖かな風が吹く。
「カイ!レイ!2人も早くー!」
「ああ!今行く」
手を振り、レイもそちらに走っていった。
「カイ!」
自分の名を呼ばれることが、こんなにも胸を弾ませるなんて。
「・・・ああ・・・」
歩みだす。
それは、キミに近付く第一歩―――――。

暖かな日差しの中。
仲間が居て、あなたが居て・・・・・・。
手を取り合ったヌクモリを握り締めながら。
今はただ、キミを想う。



☆END☆


コメント

初のドリーム小説〜(笑)
ってかドリームだけどこれ、『夢』です。
私が見た夢なんですけど、妙にリアリティのあったので、丁度ドリーム小説書いて見たいなーっと想っていたところなので書いてみましたv
ちなみに舞台は私の地元で(夢の中で)本当に起こったことなので、わかりずらいと思いますがご勘弁を(汗)
ちなみにマックスとキョウジュは出てきませんでした・・・。
私の脳は主要キャラ4人が限界らしいです(大笑)
文中で出てきた私の地元はここを参照にしてみてくださいー☆