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スキスキダイスキ! 2 ずっとずっと、待ってた。 この時を。 あなたに焦がれて。 あなたを独占したくて。 それだけただ考えた。 ずっとずっと。 この三年が過ぎ去るのを。 軍部を歩く赤いコートを着た少年は、青い軍服の中で一段と目立ち、それでもなお堂々と闊歩している。 数ヶ月に一度のペースで戻ってくる、実は上官にあたる彼に親しげに声をかけるものはいても咎めるものはいない。 もしいたらそれはこの東方司令部に来たばかりの新人だろう。 「よう大将」 「あ、ハボック少尉」 特によく見知った顔を発見し、彼はそちらに寄って行った。 「今回は随分長かったな」 「うん、まぁちょっとね」 にっと笑うと、どうやら向かう方向が一緒らしく共に歩き出す。 「大佐って司令室にいんの?」 「おう。相変わらず熱烈だなー」 「へへ〜」 いつも以上に上機嫌な様子を見せる少年に、ハボックはおや?と思う。 上司に恋するこの少年は、会いに来る時はいつも機嫌がいいが今日はなおそれが良い。 「なんだよ、何か良いことでもあったのか?」 「へへ〜ッ」 聞くと少年は、更に機嫌よく自分の数歩前を行く。 「だって、明日は三年目の日なんだもん!」 それだけ言うと、待ちきれないと言った様子て走り出した。 その後ろ姿を見送り、ハボックは嘆息する。 「そっか〜もうそんなに立つのか」 三年。 それはエドワードが国家錬金術師の資格を取ってからの年月。 そして…上司…ロイとの約束の歳月なのだ。 エドワードは、部屋に入ってくる時ノックはしない。 代わりにバンッと壊れるくらいに扉を大きく乱暴に開き、その後は一直線にロイに向かって来る。 「大佐ー!!」 急ブレーキをかけるように机を回ると、後は思いっきり飛躍してロイに飛びつく。 最初はエドワードのその行動に驚きふためいていたロイも、何度もやられればさすがに耐性がつく。 特に驚いた様子も見せず、ロイは椅子を回転させるとエドワードを思い切り抱きしめた。 「大佐〜ただいま〜!」 「おかえり、鋼の」 ぎゅうと抱き返し、ぐりぐりと軍服に頭を押し付け、久々のロイを存分に堪能する。 ようやく見慣れるようになったハボックは、苦笑しながら書類を机に置く。 「じゃ、書類終わった頃にまた来ますんで」 「あ、少尉!」 出て行こうとしたハボックを引き止めて、エドワードは持っていた箱をハボックに渡す。 「お土産。司令部の皆で分けてよ」 「おっサンキュ」 エドワードはいつも何かしら土産を持参してくる。 実はそれを皆楽しみにしていたりするのだ。 軍部で働いていると、休みもまとめて取れはしないので、視察でもない限り遠出などできない。 そのため、エドワードの地方のお土産は重宝されているのだ。 ハボックはそれを持って部屋を出て行く。 「おい、私と鋼のの分も残して置けよ」 わかってますよ、とハボックは苦笑して、扉を閉める。 「大佐、大佐」 ロイの膝に乗っているエドワードは、ロイの上着を引っ張って意識を向かせる。 こちらを見ているエドワードはキラキラと輝く表情をしており、頬を高揚させている。 「なんだい?」 「明日・・・何の日か覚えてる?」 少し恥らいつつ言うその顔は可愛らしく、ロイはクスリと笑いを漏らしてしまう。 「ああ、もちろん覚えているとも」 そう言って乱れてしまっている髪を梳いてやれば、エドワードはぱぁっと顔を輝かせた。 「オレ、ちゃんと大佐のこと好きだよ?・・・三年前よりもずっと!」 再び抱きついてくるエドワードをやんわりと抱き返してやる。 「ああ。…ありがとう」 まさかエドワードがこんなにも自分を想ってくれているとは正直思っていなかったので、エドワードの好意は本当に嬉しい。 子供の心は移り変わりやすく、しかし自分はもう彼以外には考えられないから。 「じゃあ明日は何か食べに行こうか」 「マジで?!」 胸に埋めていた顔をあげ、本当に嬉しそうな顔でエドワードはロイを見上げる。 「何か食べたいものはあるかい?」 「大佐と食べれるなら何でもいい!!」 嬉しさを隠し切れない表情のエドワードが本当に愛おしくて、思わずロイはその頬に唇を落とす。 途端にエドワードの顔は真っ赤になってしまい、熱烈なわりにウブでそのギャップに笑ってしまう。 「なっなんだよぅ!!」 「いや…すまない…ッ」 それでもくつくつと笑いが漏れてしまう。 ベッタリなエドワードだが、口付けをもらえたのは初めてのことなのだ。 くっついても何も言わないロイだが、自分からエドワードに触れようとはしないからだ。 もちろん、それ以上したら理性が持つかどうかの保証が出来ないためなのだが。 それからその体勢で旅のことをいろいろ聞いていたのだが、エドワードのお土産と飲み物をホークアイが持ってきたため離れることになった。 「久しぶり、中尉」 「ええ。おかえりエドワード君」 そう言って優しく迎えてくれるホークアイに、エドワードはロイとはまた違う優しさに触れる。 エドワードが退いたので自分も立ち上がろうとすると、ホークアイから鋭い声が響く。 「大佐」 するとそれが魔法の言葉でもあるかのようにビシリとロイが固まった。 「まだお約束したはずの書類が随分残っている様ですが」 「――――――」 ホークアイの指摘にロイは内心だらだらと汗を流す。 「そちらの書類がお済みになりましたら、どうぞお召し上がりください」 グウの音も出ないロイは泣く泣く再び椅子へと腰を降ろす。 その姿を見てから視線を移すと、まだエドワードが菓子に手をつけていないのに気付く。 「エドワード君は食べてもいいのよ?」 言うが、エドワードは曖昧に微笑むだけで手をつけようとはしない。 「鋼の?」 ロイもおやと思って声をかけると、ポソリと小さな声でエドワードが呟くように言う。 「だって・・・大佐と一緒に食べたいもん」 可愛らしいことを言うエドワードに、ロイもホークアイも顔を見合わせて笑みを漏らす。 そしてロイの方に向かうと出来上がっている書類をまとめた。 「本日は、エドワード君に免じてここまででよろしいです」 え?と間抜けな声を漏らすと、ホークアイは笑いながら 「・・・私の負けです」 ともらした。 次の日。 あれからロイに車で宿まで送ってもらったエドワードは、連絡待ちをアルフォンスに任せて街を出歩いていた。 ロイに奢ってもらうだけでは悪いと思い、自分も何か渡せるものをと考えたためだ。 何がいいかと周りを見渡しながら歩いていると、前方に青い軍服を発見した。 それは紛れもなく自分の想い人で、思わぬ偶然にエドワードは近付こうと足を速めると、ロイに続いて女性が出てくるのが見えた。 女性はロイの腕に自分の華奢な腕を絡め、肩口に頭をゆったりと乗せている。 そして極めつけは、ロイの頬へのキス。 「――――――――」 愕然とした。 ロイの女性癖は様々なところで耳にしたが、実際に目撃するのはこれが初めてだからだ。 満更でも無さそうに、ロイも女性の頬にキスを返す。 今日のロイに視察の予定が入っていないことは昨日の会話で知っている。 と言うことは、これはお忍びなのだろう。 呆然とする頭で、エドワードは自分の姿を近くのウィンドウで見やる。 洗濯はしているが、長い間着ているためややくたびれてしまっている上着。 痩せているつもりはないが、どちらかと言えば筋肉質の自分の身体は女性のような柔らかさはもちろん持ち合わせてはいない。 ペタンコな胸に、右手左足の義手。 「オレって・・・相応しくない・・・」 ポツリとそんな言葉が漏れて、その言葉は誰でもない自分を傷つけた。 思えば三年前。 勢いで告白して、大佐を困らせた。 優しい大佐のことだから、自分を傷つけまいとあんなことを言ってくれたのではないかと思う。 「・・・さいてー・・・」 それだけ呟くと、エドワードは踵を返した。 そして、ロイに背中を向けて歩き出す。 もうどうやって顔を合わせていいのかが、わからなくなってしまった。 悩み悩んで決めたところは、いつも自分が利用している、味、サービスなど信用の出来る店に決めた。 受話器を取り、先日教えてもらった宿屋に電話をかける。 ややすると、元気な女性の声が聞こえた。 女将なのだろう、用件を聞いてきたので、エドワードを呼んでもらうように頼む。 ・・・しかし。 『エドワード・エルリックさんですよね? ・・・あの方々ならもうチェックアウトされていますが・・・?』 「え・・・?」 そんなはずはないと思うが、あれだけ目立つ二人のことだ、見間違うと言う可能性は低い。 黙ってしまったロイに女将は訝しげに『もしもし?』ともう一度聞いてくる。 慌ててロイは身分を明かし、彼から電話が掛かってきたら自分に回してくれるように頼んだ。 「・・・鋼の?」 今日は記念すべき日だ。 昨日あったエドワードもあんなに喜んで楽しみにしてくれていたのに・・・。 どこに言ってしまったのかと思いつつも、今は連絡を待つしかない。 ロイが嘆息して書類に目を戻そうとしたところで、扉をノックする音が聞こえた。 「どうぞ」 「失礼します」 案の定入ってきたのはホークアイで、見せ掛けだけでもペンを持っていて良かったとロイは内心焦った。 「先程エドワード君から電話があり、伝言を頼まれました」 「・・・鋼のから?」 思わぬ名前を聞き、ロイはホークアイから伝言を聞く。 「急用が出来て、今日は行けなくなった、と」 「・・・・・・」 それだけ言うと、固まってしまったロイに一礼し、ホークアイは部屋を出て行ってしまった。 何があったのかは知らないが、これは彼らの問題で自分が介入していっていい問題ではない。 せめて話してくれるまでと思い、ホークアイは静かに扉を閉めた。 「ねぇ」 「・・・」 「にいさん」 「・・・・・・」 「兄さん、ってば」 「・・・・・・・・・」 「兄さん!!」 いくら呼んでもこちらを向かず流れ行く景色を眺めている兄に、アルフォンスは癇癪を起こしたように怒鳴った。 それでも兄はぼーっとこちらを見ようともしない。 いきなり宿屋に戻ってきたと思ったら、エドワードは何も言わず部屋を整理し始めた。 アルフォンスが呆然としていると、すっかりまとめてしまったトランクを片付けて『行くぞ』と一言だけ言って足早に去って行ってしまった。 慌ててその後を追えば、駅に行き勝手に切符を取ってしまった。 今日はロイと食事なのだとあんなに喜んでいたのに、どうしてしまったのか。 宥めようとするが、エドワードはこちらを見ようともしない。 もう一度呼ぼうと兄を睨むように見ながら鎧をかしゃりと鳴らす。 「にい」 「アル」 しかし何度か呼んだところで、エドワードはアルフォンスの方は向かずに声だけで呼ぶ。 なに、と聞き返してやると、また少しの間沈黙が流れる。 「・・・オレってさ・・・強引?」 「・・・?・・・まぁ・・・どちらかと言うとねぇ」 「じゃあ、オレって我が侭?」 「違う、とは言えないね」 「――――――」 それだけ遣り取りすると、またエドワードはだんまりになってしまう。 「・・・今日、大佐と食事するんじゃなかったの?」 ポツリと聞くと、エドワードの手に力が篭った。 目を閉じ、何かを耐えるように浅く呼吸を繰り返す。 「わかったよ、もう聞かない」 多分何かあったのだろう。 大佐のことになると暴走してしまうエドワードが、何か苦しそうに耐えているのだ。 けれど、これは自分の関わっていい問題ではないとホークアイと同じ様にアルフォンスは考える。 兄が言ってくれるまでは。 ロイにすべてを委ねるしか方法がないのだ。 コメント お約束な展開で申し訳ない・・・(土下座) 後一話くらいで終わると思うので、も少しお付き合いくださいv |