flying 〜The sky story〜 8

ヴェーネから麻汝羅大陸の織斐(しきい)と言う街まで行くの船を見つけた太一たちは、支度を終えて、今は船場で女将に送ってもらっている。
「数日間だったけど・・・あんたたちが居なくなると寂しくなるねぇ・・・」
そういって苦笑する女将の表情が切なそうで、太一たちの胸が締め付けられる。
「おばさん、大丈夫だよっ!ミミたち、また絶対この街に来て、おばさんに会いに来るから!」
ミミは瞳を潤ませて、女将に抱きついた。
女将は堪らなくなり、涙を零しながらミミを抱き返した。

街が見えなくなるまで8人は手を振り続け、少し感傷に浸る。
しかしそれ以上に、初めての船の上は8人にとって驚きだ。
「何でこんなに荷物とか人とか乗ってるのに沈まないの?」
ミミは恐る恐る船の上を歩く。
「食べ物とかはどうするんでしょうか・・・まさか毎日乾物のはずは無いと思いますが・・・」
キョロキョロとする8人に、他の乗車客やクルーたちはクスクスと微笑ましそうに笑いをもらしている。
太一は帆を見て歩くうちに、ハシゴを見つけた。
「・・・?」
木製のハシゴを登りきると、視界が開いた。
「・・・すっげぇ・・・」
一面、蒼、青、碧。
空と海の青がそこにあり、目の前に世界中の青を散りばめた世界が広がっている。
そして、頬を撫でていく風。
鳴きながら上空を飛ぶカモメたち。
空の彼方に広がっている入道雲の白。
呼吸をするたびに肺に入ってくる、少ししょっぱい空気。
神界に居た時には見れなかった光景が、目の前にある。
それはとても新鮮で、なぜか懐かしい風景。
「ここは眺めがいいな」
太一が眼を閉じて浸っていると、後ろ・・・先程太一が登ってきたところから、ヤマトが顔を見せていた。
「ヤマトも来たのか」
少し長めの金髪を手で抑え、太一の方へやってくる。
「太一の姿見えなかったから、捜してたんだ」
そういって、太一と同じ風景を見る。
しばし無言で見つめているヤマトの横顔を太一はこっそりと見る。
『やっぱかっこいいよなぁ・・・』
神界に居た時もゆっくりと会う暇はないし、『アース』に来てからも属性王捜しでゆっくりしている暇もない。
なので、こうして2人きりになれるのも久しぶりなら、こうして横顔を見るのは本当に何ヶ月ぶりなのだ。
鋭くは無い、滑らかなラインの輪郭。
海の碧にも空の蒼にも負けない、綺麗な綺麗な青灰色の瞳。
そして、表面・・・顔の端整さだけでない、内面の暖かさ。
・・・・・・とても、愛おしいと思う・・・。
ぼーっとそんな事を考えていると、ヤマトがこちらを向いた。
逸らす事ないのに、なぜか太一は不自然なくらいヤマトから顔を逸らしてしまう。
気まずくて、そちらの方を向いていると、ヤマトに声をかけられた。
「な、なに?」
声が裏返ったのが、自分でもわかる。
ヤマトの方を再び見ると、ヤマトの口が笑っていた。
訳がわからなくて眉をしかめると、ヤマトはチョンチョンと自分の服を指差した。
「・・・・・・」
ヤマトの指を追って見ると、何故かヤマトの服を掴んでいる自分の手が目に入ってきた。
「・・・っ!!」
パッと手を離す。
顔に血が集まってきて、熱くなる。
ヤマトが横で笑いを堪えているので、肘で横っ腹を突いてやる。
「っはは・・・っ・・・悪い悪い・・・」
「笑いながら謝られても説得力ねぇよ」
ブスーッと太一はソッポを向いてしまう。
笑いを引っ込め、さてどうしたもんかとヤマトは苦笑する。
こうなった太一の機嫌を直すのは容易くは無い。
それにしても、太一を怒らせたのも久しぶりだなぁとヤマトは思う。
逢いたいといくら思っても、どうしてもお互い立場的に仕事を優先しなくてはならなかったし、堕天使と天使のエレメントスクウェアの均衡を守るという役目もあった。
太一もアレクタリスの力を回復させなくてはならなかったし、何せ天使と堕天使の力を両方持った四翼の天使。
人目と言うものもある。
それでも太一はときどき深夜にも関わらず、ヤマトの仕事が終わるまで外で待っている時がある。
けれど、夜更かしが苦手な上、疲れが溜まっているので、そのまま眠ってしまっていることがほとんどだ。
そんな太一を抱えて、家まで連れて行く。
自分に逢いに来てくれると言う事が嬉しかったし、『想ってくれている』と実感できる。
太一が好きなんだと、改めて思う。
・・・結局は、両方が両方同じようなことを思っているのだ。
背を向けている太一を、ヤマトが抱きしめる。
驚いたようにビクッと身体を一瞬震わした後、太一は力を抜いた。
幾分かヤマトの方が太一よりも背が高いので、こうして抱きあうと太一の肩辺りにヤマトの顔が乗るような形になる。
耳元で『ゴメン』と囁くように言ってやると、顔どころか耳や首まで真っ赤に染まっていく。
耳は太一の弱い箇所のひとつだ。
「・・・お前はズルイ・・・」
そんなふうに言われて、突っ返すことが出来ないのを承知でヤマトはやるのだ。
クスリとヤマトが耳元で笑うので、空気が耳に触れてくすぐったい。
でも、それ以上にヤマトの体温が気持ちよくて、離れたくない。
太一は、腹辺りに組まれているヤマトの手に自分の手を重ねた。
気付いたヤマトは、太一の手を一緒に絡め取った。
「・・・久々に2人きりだな・・・」
「そだな・・・」
話したいことはたくさんあるけれど、今はこの空間に2人で浸っていたかった。



☆NEXT☆


コメント

船での移動と、ヤマ太を含めてみようと意気込んで書いたモノです(大笑)
たーまにはやっぱり入れないとね!(笑)
さてさて、次回からは地精霊に入っていきます〜☆