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flying 〜The sky story〜 9 織斐は世界全土で一位の鉱物宝石類の出産を誇る街だ。 港があるので、海では珊瑚や真珠などがとれ、少し街を出たところには鉱物宝石類の成分がたくさん含まれている山がある。 ヴェーネの女将の話しでは、時々小石くらいの巨大なダイアモンドも出てくるらしい。 それだけ土地に恵まれ、自然も多いにあるのだから、さぞ豊かな街だろうと、太一たちはウキウキしながら港を降りた。 ・・・しかし・・・。 「・・・くら〜い・・・」 ついついミミが自然な感想をもらしてしまう。 街の人にも聞こえるかもしれない声なのだが、空たちはそのミミの独り言を注意できなかった。 街は、鉱山を掘るために使う爆弾の火薬の匂いなどで満ちており、人々は大切そうに袋を抱えてギョロギョロあたりを見渡しながら歩いていく。 至る所でケンカの声が聞こえ、酒におぼれた人たちが道端で、吐いたり寝ていたり意味不明なことを言っていたりした。 『暗い』と言う表現よりはどこか恐ろしさを含んでいる。 「ミミ、恐い〜・・・」 旅人が珍しいのか、はたまた大人数が珍しいのか、キョロキョロと道行く人たちが太一たちの方を振り返る。 見られることや注目されることの大好きなミミでさえ、この視線には耐えられないようだ。 しかし、もっとこの状況が耐えられないのはヒカリだ。 もともと、人の意識などに敏感なタチなので、この昏い(くらい)視線に、神経がものすごい勢いで磨り減っている。 タケルがかばう様に支えてやりながら、少しふらつく足取りでついていく。 「太一さん・・・お兄ちゃん・・・」 青ざめたヒカリに、太一たちも足を止め、まずは休む場所を探すことにする。 もう少し歩いたところに、宿屋の看板が見える。 「ヒカリ、もう少し、がんばれるか?」 太一が眉を寄せて、ヒカリを覗き込む。 ヒカリは、太一を心配させないようにと儚く微笑むと、大丈夫。と呟いた。 人間の眼に触れないところに行きさえすれば、法術が使える。 太一が『リフレッシュ』をヒカリに施してやれば、今のこの苦しみよりも格段に楽になるだろう。 「・・・よぉ、ニィちゃん達・・・」 8人が宿屋を目指して歩いている時、不意に横から、薄ら笑いを浮かべた小汚い痩せた男が出てきた。 「何でしょう・・・?」 緊張した声で空が男を睨むようにすると、男は喉の奥で笑い、懐から両手に収まるくらいの袋を出した。 「まぁそんな警戒すんな。俺ぁ宝石商人さ。ホラ」 男はそう言って、袋に手を突っ込み、無造作に宝石を取り出した。 かなり大きめの宝石たちが、男の手の中で燦然と輝いている。 「な?どれも大粒ばっかのこの織斐で取れたもんばっかだ。 他の国行って売ってみろ。倍以上になって手持ちが返って来るぜ?」 いきなり目の前に現れた高価な宝石に、ミミたちは目を輝かせる。 「すっごーい!ダイヤにルビーにサファイヤエメラルド!光子郎くん、光子郎くん!すっごく綺麗だよ〜vvv」 光るものが特に好きなミミは、男の手の中の宝石たちをじっと眺めている。 男はニヤリと笑うと、 「な?お嬢ちゃんにはこのダイヤとかいいんじゃねぇか?可愛いお顔によく似合ってるぜ?」 そう言って男は、また袋の中に手を突っ込むと、小指の爪ほどのダイヤを取り出した。 丸く加工されたそれは、陽の光を反射して、キラリと光った。 「すごいすごい!これいくらなの?」 「100000ティル・・・と言いたいところだけど、お嬢ちゃんの可愛さに免じて10000ティルでどうだ?」 1ティルは日本貨幣の約10円にあたる。 「すごいすごい!」 『負けてもらった』と言う事に、ミミの思考は麻痺をする。 と、そこに立ったのは丈だった。 丈は人の良さそうな笑みを浮かべると、男にその宝石たちを見せてもらってもいいかと頼んだ。 「あぁいいぜ。でも一流の職人がカッティングしているから、別に傷なんてねぇって」 男はカラカラと笑うと、数種の宝石たちを丈に手渡した。 丈は陽に透かせてみたり、どこから取り出したのか、ルーペで調べていく。 「な?傷なんてねぇだろ?」 勝ち誇ったように男は笑い、丈から宝石を返してもらった。 丈は、そうですね。と微笑んだ後・・・ 「でも、人造物を天然石と言って売るのはどうかと思いますよ?」 と言った。 男からは笑みが消え、目を見開いて静かに驚いた。 それには、太一たちも驚いた。 「え・・・ちょっと丈先輩・・・ニセモノって・・・っ」 「うん。ダイアモンドはモアッサナイトって言う人造のものだ。 本物のダイアには無いダブリングが微かに見えたよ」 「ダブリング・・・?」 「ファセットカット・・・あ、ファセットカットっていうのは、こういう石みたいに、角度の異なる小さな多面をつけたもののことだよ。 そのカットをされた透明石のテーブル面からそこをみると、稜線が2重に見えるんだ。 それがこれにはある・・・。 でも、騙しとしてこれよりひどいのはそっち」 丈はそう言って男の抱えている袋を指差した。 「ルビー、サファイア、エメラルド。 そこらへんはほとんどキュービックジルコニアだね。 よく出来ているけどファセットエッジ(面と面の接線)が磨耗して白く曇ってる。 他の本物の宝石が無いからうまく区別できないけど、熱伝導率も低い。 素人と思ってると、痛い目見ちゃいますよ?」 丈はそう言って苦笑を浮かべる。 太一たち7人は、専門的な用語が次々に出てきたので唖然としている。 光子郎だけは、なるほど、と頷いていたが。 なるべく静かに言ったつもりだが、男にはそうとう頭にきた。 周りに居た人たちからは、クスクスと笑われ、ときどき『ザマーねぇな』と言う声も聞こえる。 「くそっ!てめぇっ!」 逆ギレした男は、丈に掴みかかってきた。 「うわっ・・・!」 すれすれで丈はかわしたが、ミミには相当その事が頭にきた。 「なにおじさん!自分が騙したくせになーんで暴力振るうのよ!」 「うるっせー!小娘がっ!!」 今度はミミに向かって突進してくる。 ミミは迎え撃とうと詠唱を唱え始める。 が、その前に空が間に入り、見事に相手の力を利用して地面に叩きつけた。 「逃げるのよ、ミミちゃん!!」 「ええーっ!なんでーっ!?」 それでも、みんなが走り出したので、ミミもそれに続く。 後ろを見れば、ヤジ半分の奴らも、先程の男と一緒に追いかけてきている。 「駄目よミミちゃん!こんなところで魔術使っちゃ!」 「だってぇ・・・」 空に叱られ、ミミはぶーたれる。 「そうですよ、ミミさん。あんなところで魔術使って天使だってばれたら・・・もしかしたら僕達、売り飛ばされてしまうかもしれないんですよ? それでもいいんですか?」 「・・・ミミがやっつけてやるもん・・・」 光子郎にも言われ、更にミミの機嫌は急降下だ。 「ミミさん・・・」 光子郎は少し恐い顔をして、ミミを睨む。 「・・・ごめんなさい・・・」 無駄に人や物を傷つけたりしたくないと言う光子郎の考えを知っているミミは、素直に謝る。 シュンとしてしまったミミに罪悪感を感じた光子郎は、ついミミの手を握ってやってしまった。 振り払われるかも、と思ったが、ミミは素直に光子郎の手を握り返した。 その間に太一と空はポソポソと前の方で話し合っていた。 それから、コクリと頷くと、空が急に180度方向をかえ、追って来ているものたちと対峙し始めた。 「空くんっ!?」 丈を始めとし、6人は驚く。 「足を止めないで!そのまま走って!」 空は男たちを倒しながら、丈たちに走るように命じる。 ヤマトが戸惑って太一の方を見ようとすると、隣に居たはずの太一が居ず、前方を走っていた。 「た・・・っ!?」 ヤマトは太一に声をかけようとしたが、太一は全速力でかけていく。 そうして、誰も居ない納屋につくと、少し乱れた息を整えながら、詠唱をし始めた。 「我、小さき汝等を求めるもの。 汝、水を司るもの『UNDINE』 ―ウンディーネ― よ・・・。 総てを白き薄絹で覆い隠したまえ! ディープミスト!!」 太一が唱えると、さぁっと街中を深い霧包み込んだ。 いきなり現れたソレに、街人やヤマトたちは驚く。 わずか1メートル先さえも見えなく、音だけが、みんなが近くに居ることを判別するものだ。 と、前方と後方に光が見える。 近づいてくるそれを眼で追っていると、不意に視界が晴れた。 どうやら光子郎が結界を築いてくれたようだ。 「どうやら太一さんがディープミストを唱えてくれたようですね」 6人を、丸い円が包んでいる。 「おい光子郎、『ディープミスト』ってなんだ?」 「それは」 「深い霧を出す、法術の事だよ」 光子郎の説明に続いたのは、太一の声だった。 太一は光子郎に結界の礼を言っていると、付け足しのように、今度は空の声が聞こえた。 「本当は相手の命中率を下げる技なんだけどね・・・これが一番いいかなって思って」 言った後で、空はにこりと笑う。 先ほど何やら話していたのはこういうことか、とヤマトと丈は顔を見合わせる。 その間に、光子郎に変わって太一が結界を築いた。 「さ、術が解けないうちに宿屋へ行こうぜ」 太一の声に促され、7人は前進する。 恋人の自分たちよりも見事なチームプレイを発揮されて、丈とヤマトは少し情けなかったとか。 コメント 久々の更新〜☆ 長編書くのはホントに久々なので、矛盾点があったらすみません(汗) 宝石の事も焼き付け刃なので、多分用法が変かと・・・(滝汗) ・・・へ、下手の横好きということで許してやってください・・・(土下座) 貨幣のこととかについては、また説明のところに載せておきますのでー。 |