flying 〜The sky story〜 48

「ひ、ヒカリ・・・?」
「タ・・・ケル・・・なのか・・・?」
「うん」
「そうだよ?どうしちゃったの?」
頷きながらも笑ってくれるのは確かに自分の妹と弟だ。
気配も同じ。
なのに、違和感を感じるのは何故だろう。
「大丈夫。ちゃんと属性王と契約したから」
そういい、ヒカリは太一の手をそっと包んで力の放出を止めさせる。
「あとは、僕たちと属性王を信じて?」
タケルに言われ、半ば呆然としつつ太一とヤマトは力の放出をやめた。
そして太一たちは数歩後ろに下がり、その位置をそれぞれ妹と弟に譲った。
・・・途端に引き締まる、タケルとヒカリの表情を、兄たちは一番間近で見た。
「―――汝!!
六亡星の一角、闇を司るもの、汝の名、『SHADOW』 ―シャドウ― !!
黒曜石を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『SHADOW』 ―シャドウ― !!」
「―――汝!!
六亡星の一角、光を司るもの、汝の名、『REM』 ―レム― !!
蛋白石を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『REM』 ―レム― !!」
ドンッと言う音が、もしかしたら耳に届いたかもしれない。
が、ソレは静かにタケルとヒカリから『現れ』、四大元素の属性王たちと混じりあい、螺旋を描いてワイバーンに再びぶつかった。
先程までとは比べ物にならない位に強い力が、空気を振動させて太一たちにも伝わる。
・・・そうか。と太一はボンヤリヒカリの横顔を見て思った。
タケルもヒカリも、『変わった』のではない。『成長した』のだ。
小さいままで、自分より弱いもので居て欲しいと言うのは、年長としての自分のエゴだろう。
守りたい。
大好きな弟、妹だからこそ、自分の手で守ってやりたいと思ってしまう。
・・・けれど。
「・・・おっきく、なったんだな・・・」
改めて思い知らされる、『成長』
嬉しい中に寂しさを隠しきれないのは、許して欲しい。
空のあの痛い言葉を、改めて太一とヤマトはその身に刻んだ。
「はい、そこまで」
その意識を浮上させたのは、いつも通りのマクスウェルの声。
ハッと上空を見れば、マクスウェルがワイバーンに当たっていた攻撃をサッといなしてしまっていた。
「これ以上やるとホントにワイバーン死んじゃうからね。ここで試験終了」
そうニコっと笑い、マクスウェルはワイバーンの額に右人差し指を当てた。
「其の傷付きし御身。我のナカにて癒したまえ」
呟くと、ワイバーンの身体がまるで分解させるように小さくなっていく。
その様子を、属性王と召喚したままの形で固まっている八人は呆然と見ている。
そして残されたのは、先程のでかい図体はどこに行ってしまったというくらいに小さく、愛らしくなってしまったワイバーンの姿がマクスウェルの肩に居る。
「ち、チィドラゴン・・・?」
太一が思わず呟いてしまった声に、元ワイバーンは『チッ』と可愛らしく鳴く。
「竜なんて種類がたくさん居るけど、その大元は実はこんなに小さな竜なんだよ。
例えば同じヒトでも、王族貴族平民軍人乞食が居るように、ヒトに階級があるように、竜も元はオナジ。
そこでどう分かれていくかはそのヒト次第竜次第」
不思議な事なんて無いかのようなその笑顔に、太一たちも思わず『はぁ・・・』と頷きそうになってしまう。
「まぁ、何はともあれ」
チィドラゴンの頭を撫でて、マクスウェルは笑みを更に深くする。
「試験終了。合格おめでとう」

そっと地に足を降ろし、翼をしまうと、衝撃が太一を襲った。
「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん!私やったよ!」
「ひ、ヒカリ?」
頬を高揚させ、ヒカリは太一に抱きついてはしゃぐ。
どちらかと言えば大人しい性格をしている妹は、こんなふうに甘える事はあまりしない。
特に、『成長したんだ』と思っていたのでそれは更にだ。
そして、それはヤマトも同じだった。
「試練って言われたからもしかしたら戦わなきゃいけないのかなって思ったんだけど、全然違ったから驚いちゃった」
褒めてっと言うような気配すら感じられて、ヤマトは戸惑いつつもその頭を撫でた。
そして、その二人の戸惑いを感じたマクスウェルはクスリと笑い、そちらに近寄っていった。
「ヒトは成長するもの。そして離れるもの。けれど、依存は残る。血の繋がりがあればそれな尚。
キミたちはキミたち。
成長はしても、築かれた絆は変わらない。偉大なものを大切にね?」
「・・・ああ・・・」
「なるほどな」
『お兄ちゃん?』
キョトンと自分たちを見上げてくる瞳に、今度こそ兄たちは心からの笑顔を見せた。
「さっすがヒカリー!オレの妹ー!おめでとうー!!」
「タケルならやってくれるって思ってた。・・・とにかく、無事で返ってきてくてた事が一番嬉しいよ」
そう言って溺愛ぶりを見せる太一とヤマトに、空たちは頬を引きつらせて『よく言う・・・』と思った事はここだけの話し・・・。
「えーっと、じゃあいいかな?」
ワイワイ騒ぎにとりあえずの止めを入れたのもマクスウェルだ。
「あ・・・ワリィ・・・」
「いえいえ」
そういえば・・・と、大元の約束を忘れていた事に太一は気付き、恥ずかしげに頬を掻く。
「さて・・・じゃあ契約なんだけど・・・」
マクスウェルはチラリとヤマトを見た後、すぐに太一に向き直った。
「僕は、太一。キミを選ばせてもらうよ」
ニコッと笑ったあと、マクスウェルはすっと太一に手を差し出した。
なに、と頭が思うよりも身体が行動していた。
これは契約だ。
これが契約なのだ。
言葉にせずとも、分かり合うこと。
そっとその手を握ると、マクスウェルは笑みを深くし、その身を融けさせた。
そして太一の手には。
契約の証。
アメジストがその手に握りしめられていた。



☆NEXT☆


コメント

よ、ようやく終わったー!
一気に三人の属性王と契約したので、あと一人・・・!
うおー!がんばるぞー!!