flying 〜The sky story〜 49

レム、シャドウ、更にはマクスウェルの契約を果たした太一たちは、バキラの研究室を跡形も無く崩壊させてから街へと戻った。
街人たちは、太一たちが天使とわかってなお英雄として扱ってくれた。
種族なんて関係は無い。
あなたたちが私たちを救ってくれたことには、何らかわりは無いと言ってくれたみんなに、少なからず太一たちは感動した。
種族間での差別や蔑視はどうしようもない。
人間や天使たちの間の同士間でさえあるソレを、根本から絶つことなど出来はしないからだ。
身を持って知っているからこそ、それは太一たちに微笑を贈った。
しばらくは街の復興を手伝い、目処が立ったところで太一たちは再び旅立つことにした。
太一たちとの別れを惜しむように、街人たちは総でたって見送りに来てくれた。
「バキラの横暴政治は終わった。街と共に、俺たちも生まれ変わる。
・・・あんたたちが教えてくれた俺たちなりの強さと絆を大切にしていくよ」
硬く握手を交わした後、太一たちは街を後にした。
「みんな良い人達だったねェ♪」
「うん。だからこそ、救えて嬉しいよ」
とりあえず八人は歩みを進めながら、今後のことについても話し始めた。
「後はゼクンドゥスだけ、か・・・」
時間渡しを止める為の切り札であるマクスウェルとの契約は済ませた。
残りの六亡星を司る属性王も、土壇場で契約することが出来た。
「でも・・・どこに居るのかしら・・・」
前にあったときは、いきなりどこかに飛ばされて、逸れさせられてしまったのだ。
ポツリと漏らした空の言葉に、みんなも気になっていたそれに思考を逸らされる。
「いや、ゼクンドゥスがどこかにいるかは、何となく予想がついてる」
太一がサラリと言うと、そういえばと空が呟き返す。
「なんか前にもそんなこと言ってたわよね?」
どういうこと?と空がみんなを代表して聞けば、太一は考える時の癖を見せて説明を始める。
「ほら、ゼクンドゥスにオレたち飛ばされただろ?あの時の景色と独特の気配を、覚えてるんだ」
「・・・それは・・・?」
「―――――『神の領域』」
言われて、なるほどヤマトたちは納得する。
あそこは『アース』で唯一他世界とを結ぶ場所で、不思議な力が働いている。
太一はあの時、その微妙な気配まで読んでいたのだ。
「・・・でも、ゼクンドゥスずっとあそこで留まってくれてるかな?
もう別のとこ言っちゃってるかもしれないよ?」
ミミが漏らすと、それなんだと太一は溜め息を漏らす。
「アレクタリスで気配を探すことは出来ないし、精霊を・・・特に時精霊を限定して探すのも不可能に近いしな」
「困ったわね・・・」
『それについては問題ないよ』
そこで聞こえてきた声の次に、太一のポーチから強烈な光が放たれた。
そうして浮き出てきたのは、太一と契約を結んだマクスウェルだ。
「マクスウェル」
「ゼクンドゥスの場所ならわかるから大丈夫だよ。それより問題は、どこでゼクンドゥスと戦うかだよ」
確かに。
前に会った時の様子では、はいそれでは。と宝珠に戻ってくれる様子は無かった。
とすれば、向こうも本気でかかってくるだろうし、そうすれば地上に多大な被害が出てしまう。
「ここはやっぱり『神の領域』に行った方が良いと僕は思うな」
マクスウェルが提案すると、はーいとミミが手を上げて『なんでぇ?』と聞いてくる。
「あそこは元々人間が住むところではないし、何より僕たちの力の干渉力が少ない。
精霊の力が強力だと、周囲にも被害を及ぼしちゃうからね」
場所は広い方がいいと言う提案に、みんな賛成する。
「・・・じゃあ、早速行ってみるか」
ヤマトの提案に、もう一度みんなは頷き返す。
時間は少なくは無い。
しかし、多くも無いのだ。
こうしている間も、精霊王の力は消費されてしまっている。
丈は宝珠を取り出すと、シルフを喚び出した。
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン☆
みんなのアイドル♪風の属性王のシルフちゃんだよぅ☆」
相変わらずのハイテンションに、太一たちは苦笑する。
これで太一たちよりかずっとずっと年上と言うようには全然見えない。
「僕たちを『神の領域』まで連れて行って欲しいんだけど・・・いいかな?」
シルフはチラッとマクスウェルを見やる。
マクスウェルが頷くと、もっちろん☆と力を放出し始めた。
「わーっ!ちょっと待ったちょっと待った!」 相変わらずいきなりの行動に太一たちは慌てるが、もう遅かった。
次の瞬間には、八人は『神の領域』へと飛ばされてしまっていた・・・。

「・・・・・・」
木の葉まみれになった身体からそれらを払い落としながら、八人は言うべき言葉をどこにぶつけてよいか迷う。
それを言ってくれているのが実体化したノームで、ギャンギャンとさっきから言い争いをしている。
「あはは。相変わらずあの二人は仲がいいね」
それを微笑ましく見つめているのがマクスウェル。
さすが六人の属性王たちを統治している存在。
何があっても寛容だ。
「で・・・とりあえずどうする?」
太一はすっと目を細め、気配を探る。
「・・・ダメだ。やっぱもう別の場所に言っちまってる」
どうしようとマクスウェルを見ると、彼はやはり笑って大丈夫と言っている。
「別にこっちが捜さなくても、向こうから来てもらえばいいんだから」
『・・・え・・・?』
サラリと言われたその言葉に、太一たちは硬直する。
確かに言われればその通りだが、そんなことがありえるのであろうか。
「・・・だが・・・」
続けようとしたヤマトの言葉を遮ったのは、くいっと服を引っ張ったシルフであった。
「所詮モクスウェルもね、私たちやあなたたちと同じっていうことなの」
「・・・え?」
どういうことかと聞く前に、マクスウェルがまた口を開いた。
「じゃあみんな準備は良いかな?」
唐突過ぎるそれに、さすがの太一たちも目配せをしてしまう。
まさかこんなにとんとんとことが進んでいくなんて思っていなかったからだ。
それでも、遅かれ早かれ出会わなければならない。
「・・・いいか、みんな」
太一の言葉に、ヤマトたちは頷く。
体力も力も満ちている今なら、最大限に実力を発揮できる。
やらなければ、ならないのだ。
「・・・頼むよ、マクスウェル」
太一が神妙に言うと、マクスウェルはその緊張を解すように柔らかく笑った。
「じゃ、やるね」
言うと、さすがにマクスウェルは笑みを消し、すうっと意識を集中させていった。
力が収束していき、彼を取り巻いている薄い膜・・・結界が現れた。
「―――我を隠せし元素の結晶よ。その身をこの世界に散らせたまえ」
マクスウェルが自分の周りの楕円の結界にそっと触れると、それはサラリと砂のように音も無く空中に融けていった。
しかし、何か変化が起こったようには思えない。
「・・・何が、あったの?」
ヒカリも変化を捉えることが出来なくて、キョロキョロと辺りを見回している。
「あれはね、マクスウェルの気配を消していた結界よ」
シルフが説明してやる。
「え・・・でもなんでそんなことしてるの?」
続いてタケルが聞いてくる。
シルフはタケルの方を見てニコリと笑うと
「すぐに、わかるよ」
と告げた。
と。
「――――――――ッ」
濃密な気配が満ちてきた。
独特であるこの気配には感じ覚えがある。
そしてぐにゃりと空中が歪んだかと思うと、そこからやはり見覚えのある顔が姿を現した。
「・・・ゼクンドゥス・・・!」
緊張したように太一が名を呼ぶ。
しかし、ゼクンドゥスはちらりとそちらを見て、それ以上の興味は無いとばかりに視線を外した。
ひたりとその視線を受けるのは、正面の人物。
じっと見られていたマクスウェルは、伏せていた顔を上げた。
「・・・久しぶり、ゼク」
いつもとは違う儚い笑みに、太一は困惑したようにヤマトと顔を見合わせる。
そして、ゼクンドゥスの顔に浮かぶ、初めて見せるはっきりとした表情。
「・・・ウェル・・・!」
苦しげに呟かれた声に、マクスウェルはもう一度ニコリと笑む。
その笑顔にまた苦しそうな顔を見せて、ゼクンドゥスはマクスウェルの方に歩み寄っていく。
「ウェル・・・何故今まで姿を・・・気配を消していた!」
「僕がキミの前に姿を現したら、キミは僕に執着する。・・・時が来るまで、キミに遭うのは避けたかったから」
「なぜだ・・・ッ!」
吐き出すように投げつけられた言葉に、マクスウェルは悲しげに瞳を細める。
「・・・キミが、僕を、求めすぎるから」
それを聞いて、カッとゼクンドゥスの表情に怒りが混じる。
「当たり前だ!私はお前を愛している!」
「ぇえっ?!」
それを聞いて驚いたのは、すっかり傍観者になってしまっている太一たちだ。
「え・・・なに、どういうことだ・・・」
呆然と聞くと、シルフがフワリと浮き上がった。
「例えば、あなたとヤマトさんのように。私とノームちゃんのように」
「おい!オレはお前と付き合ってる覚えは無いぞ!」
ノームの意見をあっさり無視し、シルフは続ける。
「マクスウェルとゼクンドゥスはね、愛し合ってるの」



☆NEXT☆


コメント

何・・・ヶ月ぶりの更新だ・・・?(汗)
最近鋼のかかりっきりになっちゃったからなぁ!(滝汗)
つ、次の更新はもっと早くしますね・・・!