flying 〜The sky story〜 47

爆音が響き渡り、ハッと空は後ろを向いた。
と、ワイバーンと召喚されたノームが創り出した龍と戦っている所を見て、大層驚いた。
「え・・・?!な、何なのこれ・・・?!」
『えっ?!』
空の本気で驚いた声に、太一たちの方が驚いてしまう。
「な、何って・・・空くんがノームを召喚したんじゃないか!」
「えっ?!」
6人が黙り込み、辺りはノームとワイバーンの争っている音だけが木霊している。
「や〜空さんすごいねぇ。無意識にノーム召喚しちゃうなんて」
そこに響いてきたマクスウェルの楽しそうな声に、太一たちが注目する。
「力は怒りに集中する事が多いからね。感情の高まりは即ち力のカタマリ。
そして負の感情が溜まりやすい怒りは、乱れを生じさせる。
まぁ、今回はソレが良い方に伸ばされたみたいだけどね」
でも、とマクスウェルは続ける。
「地の属性王だけではアレを倒す事は出来ない。倒すのなら、四大元素と光と闇の属性王を出さなきゃね」
属性王の力は強いが、精霊とは自分の属性のみで攻撃する。
なので、一つの属性では無に属しているワイバーンには効果が薄いのである。
「・・・とにかく・・・そうだよな・・・」
太一はそう言い、大きく深呼吸をする。
「そうだよな・・・オレたちこんなトコで躓いてなんてらんないもんな」
「太一・・・!」
ようやく元に戻った太一に、丈たちはホッとする。
同じく空の一喝で己を取り戻したヤマトと視線を合わせ、改めて武器を取った。
「ノーム!もう少し抑えられるか?!」
大きな声で聴けば、地龍に化したノームはかすかに頷いた。
太一はみんなを回りに寄せ、作戦を練り直す。
「今のオレたちの力ではワイバーンを正攻法で勝たす事は出来ない。属性の力に偏りがあるからな」
「じゃ、どうするの?」
ミミが問い返す。
太一は少し間を開けた後、しっかりと正面・・・皆を見据えた。
「・・・属性王を召喚する」
『えっ?!』
太一の思わぬ提案に、ヤマト以外の仲間は驚愕の声をあげる。
「え・・・ちょ、ちょっと待ってよ太一!空くんたちは最低一回は召喚出来てるからいいけど・・・僕はまだシルフを召喚した事一回もないんだよ?」
「わかってる。でも、丈たちにはやってもらうしかないんだ」
「・・・無を創る、と言う事ですか・・・?」
考えていた光子郎が、思いついた案を太一に問うてみる。
「・・・ああ・・・」
それに、太一は固く頷いた。
「・・・闇と光はオレとヤマトが何とかする・・・だから、みんなには四大元素をフォローしてもらいたいんだ・・・ッ」
「太一・・・」
太一の表情は本当に真剣で、空は思わず頷いてしまう。
「わかった。やってみましょ」
「空くん?!」
「空さん・・・?」
太一に同意した空に、丈、光子郎、ミミは驚いた表情でそちらを見る。
「だって、それしか方法無いじゃない!」
「そ、そうだけど・・・僕は・・・」
「大丈夫よ丈先輩!私もミミちゃんも光子郎くんも、ほとんどまぐれで出たようなもんよ?!」
「空、フォローになってない」
太一に突っ込みを入れられると、空は改めるように咳払いをする。
「きっと、属性王たちを信じてれば何とかなるわ!丈先輩もシルフを信じて?だって、丈先輩はシルフと契約してるんだから!」
「空くん・・・」
言われ、丈もぎゅっと拳を握った。
「・・・うん、そうだよね!ミミたちもちゃんとイフリートたちの事信用しないとダメだよね!」
ミミも空に励まされたのか、ややまだ不安を残しているがやる気を出してくれる。
「・・・光子郎・・・」
まだ目を閉じて考えている様子の光子郎に、太一は視線を送る。
やがて光子郎はふぅっと息を吐き、苦笑を浮かべて太一を見た。
「・・・やるしかないですよね。・・・属性王と、自分を信じて」
「・・・ああ!」
太一たちは頷きあうと、それぞれの位置に飛び出した。
それぞれの位置とは、即ち六亡星の関係置。
頂点を太一が補う光とし、そこから時計回りに水、地、闇、火、風と描く。
六人は呼吸を整え詠唱を始める。
「―――汝!!
六亡星の一角、水を司るもの、汝の名、『UNDINE』 ―ウンディーネ― !!
藍玉を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『UNDINE』 ―ウンディーネ― !!」
「―――汝!!
六亡星の一角、火を司るもの、汝の名、『GNOME』 ―ノーム― !!
黄玉を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『GNOME』 ―ノーム― !!」
「―――汝!!
六亡星の一角、火を司るもの、汝の名、『EFREET』 ―イフリート― !!
紅玉を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『EFREET』 ―イフリート― !!」
「―――汝!!
六亡星の一角、火を司るもの、汝の名、『SYLPH』 ―シルフ― !!
緑柱石を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『SYLPH』 ―シルフ― !!」
太一はヤマトと目配せをし、自分たちも詠唱を始めた。
「我は汝を使役するものなり。
汝我が願いを聴きてその御身の力をここに集結せよ!
我が名は太一。
この名において、その力を我に!
リゼンブルレム!!」
「我は汝を使役するものなり。
汝我が願いを聴きてその御身の力をここに集結せよ!
我が名はヤマト。
この名において、その力を我に!
リゼンブルシャドウ!!」
リゼンブルと言うのは、もっともその属性の力に近い性質を持つ術である。
純粋な力ほどその属性に近いので、光と闇・・・レムとシャドウの力を補うのには、魔術よりも法術よりも、この『力』が一番効果的なのである。
が、属性精霊の力に『似ている』ので、そのものにはなれない。
すなわち力は精霊本来の力に比べれば落ちてしまう為、空たちに合わせるには自分たちは全開の力をしなければいけないのである。
六つの力は螺旋を描き、ワイバーンに衝突していく。
「・・・ク・・・っ」
「ぅう〜ッ」
もちろん空たちも力の消費は激しい。
なにせ契約を交わしているとは言え属性王もの力を使役しなければいけないのだ。
特に丈は属性王を召喚するのはこれが初めてなので、力の制御にも神経を使わなくてはいけないのである。
しかし、ワイバーンへの効果は今までよりもずっと高い。
同じ属性で攻撃するのは効果が薄いのだが、太一たちは『無』にする以前の力をワイバーンに当てているのである。
『無』であり『無』で無いその攻撃は、フリンジエレメンタルのものに近いかもしれない。
が、自分の容量を越える力を使役するのは、かなり難しいものがある。
使役できないと言う事は、身体がそれに耐えられないと言う事だ。
・・・要するに・・・。
チッとヤマトの頬に紅い筋が出来る。
そしてそこからプクッと紅い玉が出来たかと思うと、重力に従って頬を流れ落ちていった。
「ヤマト!」
遅れて太一にも傷が出来ていく。
そう。
強い力を使役できないと言う事は、その分身体に返って来てしまうのだ。
「太一!」
「バカ!気を散らすな!」
こちらを見かけた空を叱咤し、力をコントロールしようと太一は更に力を込める。
が、どんどんと太一とヤマトは傷が出来ていってしまう。
属性王と契約をしている四人は、その力が返って来ると言う事は無いので、太一とヤマトに比べれば危険度は薄い。
力が尽きれば、精霊は消えてしまうからだ。
ワイバーンもただやられているわけではない。
抵抗をするので、更に太一たちにかかる負担は大きい。
「太一さん!ヤマトさん!!」
と、ワイバーンが咆哮したかと思うと、ラビッシュブレスが吐き出された。
空たちには薄い膜が張られ―属性王たちの力だ―回避できたが、太一たちはそうもいかない。
今力が弱いところを打たれれば、いくら四翼の天使の太一と言えどただではすまない。
四翼の天使でないヤマトはさらにだ。
「―――――くッ」
それでも力の放出を止めるわけには行かない。
今止めてしまえば、今までの苦労が水泡に帰してしまう。
・・・耐えるしかない。
そう思い、二人はギュッと目を閉じた。
耳の甲高い叫び声が、遠く聞こえる。
―――――が―――――。
熱さも痛みも、いくら待っても来ない。
不思議に思って目を開けて見れば、そこには輝くような結界が張られていた。
そして、それはヤマトも一緒で・・・。
「大丈夫?」
「兄さん」
聞こえた声に、太一とヤマトはハッとする。
待ち望んだ声。
大切な大切な、愛しいものの声。
「・・・ヒカリ・・・!」
「タケル!」
マクルウェルの試練を受けていた彼らが、笑みを浮かべてそこに居たのだ。



☆NEXT☆


コメント

また・・・空いてしまった・・・(泣)
マクスウェル編ももう少しです・・・!
皆さんがんばってついてきてやってください・・・!