flying 〜The sky story〜 46

(私は希望の象徴。象徴はソレを求める事は出来ない。何故なら私自身がソレすべてだから)

(私は絶望の象徴。象徴はソレから逃げる事はできない。何故なら、私自身がソレすべてだから)

白い空間の中、あるいは黒い空間の中で、ヒカリとタケルは正反対にして全く同じ質問を受けていた。
(え・・・と・・・)
ヒカリは答えに窮する。
ヒカリは神殿で育った為に、通常のものたちよりも強く光と闇の関係性について教えられている。
光は聖の象徴、闇は魔の象徴とされている。
自分の名前だって、そう言ったものからつけられいてるのだ。
レムが嫌がる事しか、自分の知識は持ち合わせてはいないのである。
答えられないでいると、レムが居ると思われるほうから、隠さない溜め息が聞こえてくる。
(私はあなたの中の光に住んでいる。・・・あなたが答えを持っていないからこそ、私はここに居てしまう)
(・・・?どういう・・・事ですか・・・?)
『居てしまう』と言う事は、『抜け出せない』という事だ。
自分でココに居るはずなのに、何故抜け出せないと言うのか。
(私は光。闇とは永劫触れ合えない存在。私は、真っ白な中でしかその力が生まれられない。
・・・私が強い光だからこそ答えを持ってはいない。
それは同時に、強い光を持つあなたも答えを持ってはいないということ。
・・・・・・それでも私は、その答えを知りたかった)
(レム・・・)
彼女はずっと独りだったのだ。
光を好む彼女たちは、強い光の中に居る為に、こう言った白い空間に居るのだろう。
彼女たちは、『色』を持たないのだ。
(・・・でも、それはあんまりだわ・・・)
ヒカリに共感が生まれる。
それを見て、レムはさらに心を重くした。
共感するという事は、さらに自分に近付き、逆に答えから遠ざかるという事だ。
(だけど・・・)

(あなたにだって、非はあると思う)
同じく共感を持たれ、漆黒の中タケルから目を逸らしていたシャドウは、その言葉を聞いてハッとタケルの方を向いた。
タケルからはこちらは見えない。
だが、タケルはしかとこちらを『見て』いるのだ。
(たしかに精霊は属性があって、どうしても越えられないものがあると思う。
だけど、それだって近づくことは出来るはずだよ。
それをしないでココに居るのは、あなたがソレから逃げてるからでしょ?)
(・・・私は・・・逃げてなど・・・)
動揺を隠し切れないシャドウに、タケルは静かに首を振る。
(あなたは光を欲している。なのに、僕の中の闇に住んでいる。
ここが一番安全だと知ってるからでしょ?)
確かに、その通りだ。
精霊は自分の属性の中で一番力を発揮できる。
そしてそれは、最大の防御にもなるのだ。
光は闇に取っては反対属性にあたる。
つまり、光は闇、闇は光の中に居る時が一番力が劣ってしまうのだ。
(誰もあなたをココに拘束していない。なのにあなたがココから抜け出せないのは、あなたの心の弱さだ)
(―――――わ、たし・・・は・・・ッ)
シャドウに動揺が生まれる。
一瞬、漆黒の空間に紺の紫が混じり、揺らめいた。

(私の中にも闇がある。光の中でしか生きられない人はいない。
少なくとも、それが幸福だと私は思えない。
だって、あなたでさえ・・・レムでさえ、それが幸せじゃないって言ってるんだから)
『光』は幸せをもたらせてくれる。
陽の光は夜の闇を消し、希望の朝をもたらせてくれる。
夜の紫紺が消え、金色に染まる朝焼けも好きだし、夕焼けを見ているともの哀しい気持ちになる。
けれどそれは、自分の尺度でしかないのだ。
(・・・マクスウェルが言っていました。人とは、知性とは真に不思議なもので、何事も自分の育ってきた環境・境遇で尺度を決めてしまうって。)
ヒカリは自分の掌を胸に抱くようにし、レムの居るであろう場所を見る。
(あなたはあなたの尺度・・・光の属性王としての尺度しか持っていない。だから、ココから抜け出せない)
空間の揺らめきは、ヒカリが言葉を紡ぐたびに大きくなっていく。
(・・・でも・・・私は抜け出せない・・・光は光の中でしか生きられないわ)
(そんな事、ない!)
今にも泣き出しそうなレムを、それでもヒカリは否定する。
(私は朝焼けも夕焼けも大好き。けど朝焼けも夕焼けも、光と闇が混じるから生まれるものでしょ?)
(・・・・・・)
(あなたは色の無い存在なんかじゃない。あなたさえ望むなら、あなたは光のまま、どんな色にだってなれる)
ヒカリはそう言って、手を伸ばした。
(私は変われる。変わりたいって思ったのなら、誰だってソコから抜け出していける)
ねぇ。と、ヒカリは問い掛ける。
先程と状況は変わっていないはずなのに、ここに入った時のような緊張はもう無い。
不思議と思いつつも、ソレが当然のようにも感じつつ、ヒカリは笑んだ。
(だって、光があって、闇があるからこそ、私たちは世界を視る(みる)事が出来るんだもの。
あなたは光だけれど、求める事は出来るわ。
だってあなたは)

『光(闇)そのものなんだから』

それぞれはグン、と収束していき、やがて姿を形作る。
そして、それらはヒカリとタケルの元へと下りていった。
レムとシャドウは、12歳ほどの少女だった。
声が大人びて聞こえたのは、気質からだろう。
レムはフワフワとしたプラチナブロンドの髪に、白くレースやフリルのたくさん使われている、いわゆるゴスロリ系の服を着ている。
シャドウも同様だが、髪は濡れ羽色のようにしっとりとしたストレートで、服は黒い。
彼女たちはそのまま、ヒカリとタケルへと抱きついていく。
そのまま泣き崩れる彼女たちをしっかりと抱いてやる。
光と闇。
自分の中にすまわっているソレは、自分が見たくないと思っていたものだ。
強すぎる光。
見えなさ過ぎる闇。
知らずヒカリは幼い頃から強い法力を持つ事を重圧と感じていたし、タケルはその環境を疎んでいた。
それは見たくは無いもの。
彼らを見つけるということは、自分の弱いところを見るということ。
こんなにも近くに居た彼女たちを見つけられなかったのは、だからなのだ。
腕の中の暖かな存在を感じ、目を閉じる。
(私たちに違いなんて無い。
在るとするのなら、それはあなたが光というものに固執してしまっているからだわ)
・・・けれど・・・
もう大丈夫。
それをわかっているのなら、強すぎるそれに押しつぶされる事は、もう無い。

―――――ヒカリとタケルは、静かにその空間から溶けていった。

一方、太一たちは相変わらず苦戦していた。
戦いの要である太一とヤマトの集中力が戻らない為だ。
「フリーズランサー!!」
太一の一撃も、尾をかざしただけで防がれてしまう。
やられた。と光子郎は思う。
マクスウェルは知っていたのだ。
普段の太一たちならば、例えワイバーンと言ってもここまでは苦戦しない。
あえて不安定な状態でタケルとヒカリを引き剥がす。
それにより、こちらの力を根本から殺いでしまったのだ。
「くそ・・・ッ!」
太一がまた舌打ちをする。
ヤマトも、今まで見た事が無いような焦った顔をしている。
「ちょっと太一・・・ヤマト・・・!落ち着きなさいよ・・・」
見かねた空が、二人を諌める。
「落ち着いてるよ!ワイバーンを早く倒してヒカリたちを助けに行かなきゃならないんだから!!」
「そうだ!・・・クソ・・・ッ早く行ってやらないとタケルが・・・!!」
全然落ち着いているようには思えない二人に、光子郎とミミと丈は顔を見合わせて溜め息をつく。
このままこの状態を保って、タケルとヒカリを待った方がいいのだろうか?と、ふと脳裏に浮かんでしまう。
・・・と。
バシッ!!バチーンッ!!と、二つ痛そうな音が当たりに響く。
ハッとそちらの方を向くと、空がヤマトを叩き、ヤマトはそのまま少し飛ばされているところであった。
いきなりの光景にマクスウェルも目をキョトンとさせ、ワイバーンも戸惑いを見せている。
「そ、空くん・・・?」
平手打ちをしたままの恰好でいる空に、上空を飛んでいる丈は多分聞こえないかもしれない声で呼ぶ。
叩かれた両名が一番驚いており、目を白黒させている。
「・・・あ・ん・た・た・ち・は〜〜〜〜ッ!!」
続いて、いつもからは考えられないような低い声を出しながら、肩を震わせている。
こちらからは判別は出来ないが、太一とヤマトが顔を引きつらせた事から、その表情が恐ろしいものと知れる。
「いいかげんにしなさいよッ!!」
空は一喝する。
「タケルヒカリタケルヒカリってねェ!確かにあんたたちが妹・弟を大切にするのは知っているけれど、そんな事言ってる状況じゃないでしょ?」
「だ、だって・・・」
「タケルくんとヒカリちゃんは今試練の途中なの!そして私たちも、試練を受けている立場なのよ?!」
わかってんの?!と空は二人の言葉を遮る。
「けど・・・試練って・・・あいつはまだ幼くって・・・!」
「バカ言ってんじゃないわよ!タケルくんとヒカリちゃんだって私たちの仲間なのよ?!8人一緒で旅してきたじゃない!
二手に分かれちゃった時だって、タケルくんは一生懸命やってくれたわ!ヒカリちゃんだってそうだったでしょ?!
一生懸命やってるあの子たちを幼いから、子供だからって危険から遠ざけるのはね、優しさじゃないの!バカにしてるって言うのよ!!」
「・・・けど・・・!」
「けどもかかしも無いわ!じゃあ何、あんたたちは自分がそういう扱いをされて嬉しい?
自分も仲間なのに、幼いからって言う理由でトクベツ扱いされて満足なの?幸せ?」
「・・・それは・・・」
「私たちにはやる事がある。タケルくんとヒカリちゃんも、今それを必死でこなしている。
二人が戻って来て、今この状態を見たのなら、さぞガッカリするでしょうね!」
『・・・・・・・・・・・・』
腕を組んで見下ろしてくる空に、太一もヤマトもグウの音も出ない。
「しっかりしなさいよ!『お兄ちゃん』でしょ?!」
と、そこでワイバーンがこちらに向かって尾を振り上げてきた。
「空くんッ!」
危険を察知した丈が叫ぶが、空はワイバーンをギッと睨んだ。
「煩いわね!!今説教中よ!!」
そう言うと、空はその一手をまず避ける。
そして・・・・・・。
「―――汝!!」
空は手短な岩に手をつける。
「六亡星の一角、火を司るもの、汝の名、『GNOME』 ―ノーム― !!
黄玉を持ちし属性王よ!
我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!
打てし、我が敵を!!
召喚!『GNOME』 ―ノーム― !!」
すると、空が着いていた手の岩が、段々とその姿を龍へと変えていった。
巨大なワイバーンよりも更に龍は大きくなっていく。
それはまさに、空に怒りそのものだ。
空の手を離れたソレは、ワイバーンを締め上げていく。
それを確認もせず、空は再び太一とヤマトへと顔を向けた。
「いいッ?!タケルくんとヒカリちゃんが帰ってきたら、ちゃんと謝るのよ!!」
迫力に圧され、太一とヤマトは呆然と空を見上げながら、
『・・・はい・・・』
と頷いた。
いい加減切れると恐い空に、光子郎とミミは黙って丈の両肩にポン・・・と手を乗せたのだった。



☆NEXT☆


コメント

空最強説(笑)
とにかく(私設定の)空は強くて仕方がありません(笑)
しかもそれがなかなか好評なのでつい図に乗ってしまう・・・。
シリアスに始まって半ギャグに終わってしまいました。
ああ〜早く進めないと〜〜〜!!(汗)