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flying 〜The sky story〜 44 少し離れたところから、太一たちの呪文を唱える声が聞こえる。 そしてそれを打ち消すように、ワイバーンの空気をも震わせるような声が響く。 ヒカリは不安を打ち消すように、正面に浮かんでいるマクスウェルを見据えた。 「・・・ひとつ、聞いてもよろしいですか?」 マクスウェルは眉を上げて、先を促した。 「シリアには確かに街があり、家があり、家族がありました。 私たちはそれらに確かにあっています。・・・なのに、何故あなたは人間の親を持っているのですか・・・?」 「良い質問だね」 マクスウェルは、ニコリと優しい笑みを浮かべる。 まるで、そうしてヒカリたちの緊張を解すかのように。 「そう。確かにシリアは人だ。そして僕は属性王・・・精霊だね。 なのに何故、人間の親が居るのか。答えは単純にしてもっとも難解だ。 それは僕がシリアであってシリアで無いから」 「・・・?」 タケルは眉を寄せる。 それを見たマクスウェルは、更に笑みを深めた。 「僕は『シリア』を演じていただけ。でも、確かに『シリア』は存在する・・・いや、した、と言うべきかな」 マクスウェルの言葉の変化に気付き、ヒカリは小さく、まさか・・・と呟く。 「そう。関係性はそのままに、僕はもう居ない・・・亡くなってしまったシリアを引き継いで演じていたんだ」 どこにでも居場所を見つけられるマクスウェルは、前居たところを出て、また別の場所を探していた。 そしてその時、森で息耐えようとしているシリアを見つけたのだ。 「僕は彼から彼の記憶を読み取った。・・・彼には本当に悪いけれど、僕は『これだ』と思ったよ」 「え?」 どうも曲折した話し方をするマクスウェルに、タケルもヒカリもその意味を理解しようと必死だ。 「何故か。・・・それは、キミたちに近づくのに最も良い人物だと思ったからだ」 「・・・じゃあ・・・!」 「そう。この状況、この出会いは決して偶然の産物ではない。 シルフたちを集めてココを見つけるのも、僕に出会うのも・・・これは僕がすべて仕組んだ必然の事柄なんだ」 そんな・・・と、ヒカリはショックを受けて口元を抑える。 タケルは眉を潜めつつも、更に問いを続ける。 「でもそんな・・・そんな良い具合にシリアって名前の人物が・・・」 「そう。人とは、知性とは真に不思議なもので、何事も自分の育ってきた環境・境遇で尺度を決めてしまう。 今回ソレを当てはめるとするのなら、それは術を駆使するものと、只の民と言う事になる」 「・・・って・・・・?」 そして先程のように、その曲折したセリフの答えを要求する。 「シリウスとは僕の属星だ。けれどそう考えるのは、学者や術者など、精霊たちの力を借りているものがまず考えてしまう事だ。 けれどあまり精霊と関わりの無い民は、それを名前にしてしまう」 「・・・そっか・・・ここはシリウスの良く見えるところだから・・・」 「そう。人は目に見える最も大きなものを良くつける傾向がある。例えばシリウス。例えばスピカ。 この土地でシリウスやシリアと言う名前は、そう珍しいものじゃないんだよ」 なるほど・・・とヒカリとタケルは思わず頷いてしまう。 マクスウェルはその遣り取りを楽しむかのように、続けている。 「じゃあ・・・なんで僕たちをここに・・・?」 そしてタケルは核心に触れた。 ・・・するとマクスウェルは、そっと瞳を閉じた。 「・・・キミたちの中には強大な力がある。ソレは、ミミや光子郎たちにも負けない、精霊の力だ」 「・・・精・・・霊・・・?」 マクスウェルはコクッと頷く。 「精霊・・・属性王の力。それは僕たちよりも世界に溢れており、彼らよりは貴い(たっとい)もの」 「・・・僕たち・・・彼ら・・・?」 ヒカリとタケルはまた顔を見合わせる。 そして、視線を太一たちの方へと再び向けた。 太一はアレクタリスの属性を変じて戦っている。 ミミと光子郎は確かに属性王を召喚する事に成功しているが、それを習得していると言うわけでもない。 それは空と丈に関しても言えること。 「・・・精霊・・・属性・・・――――もしかして・・・!」 マクスウェルの問いの何かに気付いたタケルは、すっと彼を見据えた。 「・・・僕ら、とは元素と時を統べるもの。・・・彼ら、とは六亡星の四大元素を指しているのですね・・・?」 言われ、ヒカリも遅れてソレに気づく。 マクスウェルは、眼を閉じ、楽しんで居る事を隠しきれないような笑みを口元に浮かべている。 「・・・それは、光と闇・・・・・・」 「元素の下で、四大元素を更に統治する存在・・・」 ヒカリが付け足すと、マクスウェルが手を叩き出した。 「そう。その通り!力とは即ち、僕たちの力」 マクスウェルは手を叩くのを止めると、胸の辺りで両手を合わせた。 そして徐々にそれを広げると、ふたつ、輝く球体が浮かんでいる。 それを訝しげに、ヒカリとタケルは眺める。 「でも・・・僕たちの中に精霊って・・・」 「精霊は、自らが一番安らげるところを住処とする。それは、自分の力が一番出せるところで蓄積できるからだ。 しかし、光と闇・・・言うなれば昼と夜は絶えず巡ってしまう。 だから彼らは、更にそこよりも住みやすいトコを捜す。・・・そう、それは人の心」 二つの球体は、ゆっくりとタケルとヒカリの元へと寄ってきた。 「キミたちは、キミたちの心に住む精霊と契約をする事。それが僕がキミたちをワイバーンと戦わせなかった理由」 そうか。とタケルは内心で納得する。 前にシルフが契約者を捜す時に、自分には試練を与えなかった。 「それは、僕の中に他の精霊が居たのに気付いていたからなんですね?」 マクスウェルはコクリと頷く。 「キミたちの中の精霊は、キミたちの中で眠ってしまっている。 精霊の力がキミたちの力に包まれてしまっているから、アレクタリスも反応できなかったんだ」 「・・・では、私たちは彼らを目覚めさせればいいのですね?」 「短絡に言うならその通り。・・・でも、彼らを操るのは、ある意味僕を使役するよりか難しい。 もしかしたら、見なくても良いものをその記憶に焼き付けられてしまうかもしれない。 ・・・・・・それでも、自らの心の中に精霊を目覚めさせに行くか?」 『行きます』 二人は迷わずに頷いた。 「兄さんたちは傷ついて、それでも諦めない」 「私たちは、ただ守られている存在なんじゃないんです」 いつも眼の前には兄が居て、守られていた。 けれどこの力は、その為にあるのではない。 守る為にも使いたいんだ。 二人の迷わぬ答えに、マクスウェルは頷いた。 酷く、愛おしそうな笑顔で・・・。 「では、その球体をその身に治めて見つけにいきなさい。 もう一人の、自分を」 すでに球体は二人の眼の前に浮かんでいた。 タケルとヒカリは握っていた手を離し、もう一度眼を合わせた。 そして、ゆっくりとその視線を解くと、その身に球体を治めていった。 ―――――タケルとヒカリの意識は、そこで一旦途絶えてしまった・・・・・・。 コメント 久々の更新で申し訳ないです(泣) 次からは戦闘と精霊集めと同時進行です(またか) マクスウェルは実は未だ性格が安定していなかったりします(・・・) 次は早く更新だ・・・!! |