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flying 〜The sky story〜 41 精霊たちや獣を操るものたちには、それらを捕獲、操る為の術がある。 例えば、『気』 力とはまた違う、空中などを漂っているものだ。 午前は生気が漂い、午後は死気に転じる。 また、生気は鼻から吸い口から死気を吐くと術の発動が素早く行えるのだ。 要するに午前に行動し、午後には身体を休める方が賢いといえる。 しかしこれは精霊の力を持っていたり、『聖』の力が強かったりするもので、逆に『魔』や『闇』場合に応じるが、『無』の力を持つものは死気を吸って力を得るので、午後に行動を起こす。 なので霊の類は夜に出没する事が多いのである。 『無』と『闇』に属するニーズホッグも、また死気を吸って力を得る。 なので儀式は、夜執り行われる事になるのだ。 「それまでにカウィンで儀式に必要な生贄を狩って来い」 「・・・は・・・ッ!」 深々と頭を下げてから立ち上がったのは、30代半ばくらいの中肉中背の男。 「獣使いのリダール・サテ。お前にこれを授けよう」 手を叩き、メイドに持ってこさせたのは小さな石のついたタリスマン。 「・・・これは・・・墨杢石(ぼくもくせき)・・・!」 墨杢石は、魔法晶石で、『闇』の力を持っている。 緋真石の属性が『火』から『闇』に変わったものと考えればおおよそ間違ってはいない。 獣、魔物は『闇』系の精霊加護を持っているものが多い。 そして、今は生気が死気に転じた午後。 『闇』の力が増す時なのだ。 今はまだ明るいので『光』の力も強いが、午前に比べれば『光』の力は落ちている。 そして、この墨杢石があれば、従えるリダールの力も上がり、従える獣達のレベルも上がっていくのだ。 「必ず、連れて来い」 「はっ!バキラ様のお望みに敵う働きをしてまいります・・・!」 闇色のマントを翻し、リダールはバキラの前から去っていった。 「・・・太一さんたち、大丈夫かなぁ・・・」 高台に登って敵の様子を見ているミミは、ポツリと漏らす。 未明にカウィンを出、バキラのところへ向かってから6時間以上経過している。 いくら太一が四翼の天使で、他の仲間たちの力が強いと言っても、目に見えて様子が見えるわけではないこの状況。 心配するなと言う方が無理である。 「ねぇイフリート。みんな大丈夫だよね?」 紅玉を掌に置き、ミミが話し掛けると、紅玉は頷くように煌き、光る。 イフリートの優しさにミミは少しだけ安堵する。 何にせ、問いかけに答えてくれる相手が居ると言うのはありがたいものだ。 しばらくそうしていると、ミミの耳に地響きが低く届いた。 「・・・?なに、この音・・・?」 目を凝らすが、何も見えない。 高台と言えど、カウィンの街全部が見える訳ではない。 ミミは下を見回し、人が居ない事を確認してからタリスマンを取り外し、翼を露わにした。 そして、更に高く飛び上がる。 「・・・ん〜〜〜?」 よく見ると、遠くの方に小さく砂煙が見える。 「なに・・・あれ・・・」 『ミミさん』 フワリとミミの周りに暖かい空気が渦巻いたかと思うと、それは紅い女のカタチになった。 「イフリート!」 いきなり現れた属性王に、ミミもさすがにビックリする。 「どうしたの?」 イフリートは綺麗な眉を寄せ、ミミに小さく言う。 「あれは獣や魔物の大群です」 「――――えっ?!」 一瞬にしてミミの心に冷たいものが走る。 イフリートがこんな時に冗談を言うような精霊には見えない。 かと言って、ここまで強く肯定した言い方をしているのに、間違いとも考えられない。 それはわかってはいるが、そうかと簡単に飲み込めるものでもない。 「・・・だって・・・この距離であの砂煙の大きさだよ・・・?」 「私も出来るなら肯定などしたくはありません。・・・しかし、そうなのです・・・」 言われて、迷っている暇など無かった。 急いで建物に降り立ち、階段を駆け下りる。 イフリートはその間に紅玉に戻った。 「・・・光子郎く・・・!」 早く、この事実を教えなければ。 出来るだけ一箇所に街人たちを集めた。 一定方向から魔物たちは来ていたが、あの数と大きさでは街の人達を飲み込み、囲うくらいは充分にある。 「もう、街全体を守る事は出来ません。・・・それは重々承知していただきたい」 重く、光子郎が伝える。 ザワっと街人たちは小さく話し始めた。 それでも抜け出したり混乱したりしたものがいないのは、ほぼの街人たちが諦めて絶望しかけているからである。 励ましたい気持ちもあるが、今ここで不用意に動かれるよりはマシだった。 今からの戦いで、スベテの命を守れる自信を4人は持ち合わせてはいなかった。 「女性は子供を、男性は女性を守ってください。今最も守らなければいけないのは・・・若い、命です・・・」 自分の吐く言葉がイタイ。 本当はこんな事、言いたくはない。 ―――――けれど・・・。 「・・・光子郎くん・・・」 ミミの握ってくれる手から、ジンワリと暖かな体温が伝わってくる。 それは、光子郎に勇気も与えてくれた。 光子郎はミミに小さく笑むと、タケルとヒカリにも目配せをする。 「もう、僕たちの正体を隠している場合ではありません。全力で、かかってください」 3人は小さく、それでもしっかりと頷く。 「・・・行きましょう・・・」 「あんたたち・・・!」 それを引き止めたのは、街人だった。 思わず、4人は振り返る。 「・・・我々の街だ・・・我々の、領主だ・・・」 か細い声に、耳を欹てる(そばだてる) 「・・・・・・なのに・・・すまない・・・っ」 悔しげに呟かれた言葉に、光子郎たちは淡く微笑んだ。 街人たちは、心までを枯らしてはいなかった。 「力は、これから獲得してください」 それが、また励みになる。 ・・・光子郎たちは、今度こそ歩み始めた。 「汝、清澄なる白を身にまとうもの。 鮮やかに輝きし汝等と我等の力源を我が手中に集めたまえ。 我を心中とし、悪黒なりしものたちを振り払いたまえ! 六亡星の一角を司るもの、汝の名・『REM』 ―レム― よ!」 セイントクレッシェンド!!」 呪文が発動し、ミミを中心に円状に光が広がっていく。 太一が放ったものよりもその範囲も攻撃力も低いが、光系高位魔術を放てるのはさすがは天位階級と言うものだ。 魔物や獣一匹一匹の力はそう強いものではないので、ミミほどの力が有るのならば充分倒せる。 四大元素より光、闇。光、闇よりも無、時と言うように力は使いも強くなっていく。 高位階級ほどの力を持っていると言っても、タケルはいまだ最低階級。 ミミの様にバンバン光系魔術を使っていれば、魔術はすぐにそこをついてしまう。 なので、タケルは光の聖三角形に入っている火系魔術で応戦している。 「ファイアカクテル!」 4人とも前もって魔術・法術増幅魔方陣を描いているので、円陣によって増された力が魔物たちに当たっていく。 ヒカリは一人戦闘には参加せず、光属性の結界を張っている。 光の結界は3つあり、触れたものの属性を光に変換し、カウンターで攻撃する『シャイニングフレア』、外からの攻撃が癒しの光に変わり、内部に居るものを回復させる『ホーリーブレス』、そして普通の光結界の『ティンクルバリア』と分けられている。 結界には多種あるが、一つの属性でこれだけの結界があるものはそうそう無い。 それほどに光の護りの力は強いのである。 ヒカリはこのうち、攻撃力のあるシャイニングフレアを張っている。 結界を張り続けて身動きは取れないが、これならば多少なりとも攻撃にも転じれる。 光子郎は武具を光系属性に変える法術『ホーリーセイバー』をかけ、攻撃を仕掛けている。 『魔』を持つもの達は、耐え切れない光を浴びたり攻撃されると、消滅してしまう。 先程から随分な数を倒したはずなのに、魔物たちは後から後から押し寄せてくる。 まるで、攻撃する順番を待っているかのようだ。 「レイ!」 「フィアフルフレア!」 光子郎はタケルの武具にも同様のホーリーセイバ―をかけている。 この4人の中で魔術の他に剣術も出来るタケルは、組み合わせて戦っている。 「・・・しつ・・・こい・・・!!」 いい加減ミミもイライラしてくる。 大振りな攻撃は避けてはいるが、そこここの服は裂け、小さな傷が出来て少量なりとも血を流している。 それはタケルも光子郎も同様だった。 時々ヒカリが法術を同時に使って回復をしてくれるが、法術が分断されてしまっているため、回復量はそれぞれ少量になってしまっている。 小さな傷でも痛みを生み、痛みは集中力を奪って行く。 途切れてしまえば、それは死に直結してしまう事もある。 「セイント――――」 「ミミさん!横ッ!!」 タケルの言葉に、ミミはハッと左を見る。 クマのような魔物が、自分に張り手を繰り出してきている。 「―――――ッ!」 少しでも衝撃を和らげるように、ミミは身体を引く。 そして唱えかけの魔術を、攻撃力を小さくして魔物に当てた。 ドンッ! 「ッキャァッ!」 それでも威力は完全には殺げず、ミミは後方へと吹き飛ばされた。 「ミミさんっ!!」 「ヒカリさん、集中を―――――」 光子郎がヒカリに注意を促すが、遅かった。 集中力が欠け、薄くなってしまった結界に魔物が体当たりをし、砕けてしまったのだ。 そしてその衝撃で、ヒカリも吹き飛ばされ、地面に叩きつけられてしまう。 「・・・ぅ・・・」 背中を強か(したたか)に打ち付けてしまい、呼吸が出来なくなってしまう。 壁が無くなり、魔物や獣達は嬉々として街人たちに飛びかかろうとする。 悲鳴が飛び交い、街人たちは互いを守るかのように更に硬く縮こまる。 そして、倒れてしまっているミミやヒカリにもその手は伸びていく。 「ヒカリちゃ――――っ!」 「タケルくんッ!」 ヒカリを庇い、タケルが肩を噛まれてしまう。 そこから、歯形に血が滲み出る。 何とか悲鳴は上げなかったものの、利き腕を噛まれてしまった。 回復をしないかぎり、剣も持てない。 ――――どうすればいい―――。 光子郎の心臓はトタン屋根のようにベコンベコンと鳴る。 街人に、ミミに、ヒカリに、タケルに。 魔物が、迫り行く。 ・・・殺す訳にはいかない。 「そんな訳には・・・いかないんだ・・・!」 光子郎を、フワリと蒼い風が取り巻く。 ・・・言葉が―――――詠唱呪文が、頭の中に浮かんでくる。 「―――汝!!」 光子郎はそれに従い、藍玉を両手に持ち、大きく天に上げた。 「六亡星の一角、水を司るもの、汝の名、『UNDINE』 ―ウンディーネ― !! 藍玉を持ちし属性王よ! 我は汝の力を求め、また、我の力を汝に貸すものなり!」 蒼い力が、光子郎の両手に収束していく。 清浄なその気に、魔物たちはたじろいている。 「守りよ!我が同胞を!!」 光子郎はソレを空へと放つ。 「召喚!『UNDINE』 ―ウンディーネ― !!」 藍玉はウンディーネへと変わり、ウンディーネは更にその姿を水に変えた。 ヒカリの張っていた結界よりも更に広い位置に、蒼い魔法文字(ルーン)が浮かび、それは円になる。 そして薄い壁となり、街人たちやヒカリ、ミミ、タケルをも覆った。 青白い光が降り注ぐと、一緒に入り込んでしまった魔物たちは、苦しみ消滅していく。 しかし街人たちにはそれに触れるたびに傷が癒えていくのだ。 タケルの肩にも光が集まっては癒していく。 身体を起こしたミミたちは、呆然とソレを見渡す。 「・・・これ・・・」 大きく、強大な守りと癒しの力を持つ結界。 それが、光子郎の望んだ力。 ウンディーネと『同調』し、生まれた『力』 ―――そう、光子郎はウンディーネを召喚したのである。 コメント 思わず長引いてしまいました(笑) 戦闘シーンは閲覧者さんにも人気があるのですが、私も書いてて大変楽しいです(笑) その分術の詠唱とかでめっちゃめちゃ時間割いちゃうのですが(苦) ・・・遂に・・・40話台・・・(笑) ファイト、自分☆(・・・) |