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flying 〜The sky story〜 40 光が瞼越しに目に入り、その眩しさで太一は眼を覚ました。 「・・・ここは・・・オレ・・・」 眼が覚めるにつれ、太一は現状を徐々に把握してきた。 キングサイズの豪奢なベッドから身を起こすと、ぐらりと視界が歪んだ。 「・・・汲剛石(きゅうごうせき)・・・!」 腕に、漆黒の石が入った腕輪がかけられている。 力とは、使ったらその分は徐々にだが回復していくものである。 太一の力の許容量は膨大だが、その分回復力も他の天使たちに比べて高い。 なのに未だ力が回復していないのは、『汲剛石』と言う魔法晶石の力のせいである。 汲剛石は無に属性しており、持っているものの力を吸い取ってしまう力・・・昏潰陣と似た効果をもっている。 昏潰陣は法の力しか吸い取る事は出来ないが、汲剛石は魔法力両方の力を吸い取ってしまう。 力を吸い取られてしまった太一は、瀕死とまではいかないがいつものような行動は出来ない。 「・・・シリア・・・!」 ハッと周りを見渡せば、自分のように大きなベッドに横たわっているシリアの姿が見える。 よろける足で歩み寄れば、シリアはただ寝ているだけのようだった。 とりあえず安堵した時、扉のノブが回された。 「やぁやぁ四翼の天使殿。お目覚めかな?」 それは、バキラだった。 太一はギッとバキラを睨むが、別段気にする様子も無くバキラはコツコツと歩み寄ってきた。 そしていきなり太一の顎を掴み、引き寄せた。 「・・・なるほど、確かにこれは良い・・・」 太一は離れようとするが、力が入らない。 ようやく手の力が緩んだので、思い切り身体を反らしたら、後ろに倒れてしまった。 「お前にも儀式の協力をしてもらおうか。・・・仲間の命が惜しかったらな」 言われて、太一の血はザッと下がる。 「お前・・・ヤマトたちをどこにやった・・・!!」 聞くと、バキラはフンッと鼻で笑った。 「あやつらには他の部屋で休んでもらっておるよ。用があるのはお前とシリアだからな」 それから、と バキラは続ける。 「これは貰っておく」 言ってバキラが上げたのは、アレクタリスだった。 腰を触ってみれば、いつも感じる金属の重みは無い。 しまったと太一は心底後悔する。 魔法を封じられ、ヤマトたちと離れてしまい、アレクタリスまで捕られてしまった。 ギリ・・・と奥歯を噛んでいると、バキラは嫌味で鼻をならし、部屋を出て行った。 カチリと小さな音がしたので、はやり鍵をかけられてしまったのだろう。 「・・・クソ・・・!!」 悪態をついていると、シリアがウ・・・と小さくうめき、薄く目を開けた。 「シリア!」 目を擦る腕には、やはり太一と同じく汲剛石がはめられている。 「・・・太一・・・?僕・・・」 シリアもやはり状況を把握しきれておらぬらしく、太一の姿を見つけて小さく混乱している。 「お前がバキラに掴まったから、オレたち助けに来たんだけど・・・オレらも掴まっちまって・・・」 説明すると、シリアの目も段々覚めてきたらしく、愕然とした表情になってきた。 「・・・そうだ僕・・・あいつらに掴まって儀式に付き合えって言われて・・・この部屋に連れてこられたら、意識が遠のいたんだ・・・」 「儀式?」 そういえば、バキラもさっきそんな事を言っていた。 「儀式って、何なんだ?」 「さぁ・・・そこまでは教えられなかったから・・・」 シリアは特に魔法が使える訳ではなく、歌の力なので特に身体に汲剛石が効くと言うことは無い。 多少フラフラしているのは、薬を嗅がされたからだろう。 「・・・とにかくお前が無事で良かったよ・・・」 太一が微かに笑うと、シリアは苦しげに顔を歪ませた。 「ごめんなさい・・・僕が勝手に動き回っちゃったから・・・」 「お前のせいじゃないよ」 とりあえず、と太一は溜め息をつく。 「・・・何とかしなくちゃな・・・」 太一たちのような豪華な部屋とは違い、ヤマトたちは柵のはまった質素な部屋に掴まっていた。 3人には同じく汲剛石がつけられており、グッタリとしていた。 「・・・クソ・・・これさえなければ・・・!」 特に空は、先程丸ごと法力を吸い取られてしまったので、グッタリとしてしまっている。 一つしかないベッドに空を寝かせ、ヤマトと丈はその傍に座って作戦を練る。 「・・・太一だけ隔離されてるって事は、やっぱりその力を何かに利用しようとしているんだね」 「だろうな。・・・シリアも居ないって事は・・・」 「天聖歌の事もばれちゃってるだろうね・・・」 二人からは、先程から溜め息ばかりが漏れる。 「・・・魔術も法術も使えないばかりか、動く事もままならない。・・・これはツラいな・・・」 幸いなのは、力と武器を奪っている為に見張りを立てず鍵を閉めているだけと言う状況だ。 「・・・シルフ・・・」 ダメ元で、丈は服の奥に隠していた為に取られなかった宝珠に話し掛ける。 「・・・シルフ、頼む・・・応えてくれ・・・」 必死に問うと、宝珠は徐々に光り始めた。 「っジャーン。シルフちゃんとうじょ〜☆」 おちゃらけた感じで出てきたのは、風の属性王・シルフ。 呼び出せた事に、とりあえず二人は安堵する。 「・・・ノーム・・・」 何とか意識を取り戻した空が、掠れた声でノームを呼ぶ。 ノームはそれで応じ、姿を現した。 「ねぇちゃん・・・」 ノームはすぐにその腕にはめられている腕輪を壊した。 「・・・地の、癒しを・・・」 空の額とをコツリと合わせ、小さく言葉を唱える。 すると、フワリと空の身体が淡く光った。 「ノームちゃん、あんまり干渉しちゃったらダメだってば」 シルフの言葉を無視し、ノームはそっと空から離れた。 と、空はしっかりと目を開けて起き上がった。 「・・・ごめん・・・ありがと・・・」 癒しの象徴は水や光とされているが、それに続くのが大地である。 水・・・ウンディーネほどではないが、空くらいの力ならば属性王のノームなら簡単に癒す事が出来る。 「ノームちゃんたら!」 無視されたシルフが癇癪を起こしたように高い声で怒鳴る。 「うるさいな!契約者がこんなに苦しんでるのに見て見ぬふりなんて出来ないだろ!」 「・・・嘘。そんなの建前。ノームちゃんはそのお姉ちゃんが好きだから甘いんだ〜!」 「ちっちが・・・っ」 言ってる間に、シルフはヤマトと丈の汲剛石を壊した。 空に比べて消費の少ないヤマトと丈はややフラついた後立ち上がった。 「・・・我は――――」 「ねぇちゃんは力使わないほうが良いよ。結界張られてるから」 ノームは空を遮り、二人も回復させた。 「・・・結界・・・?」 「厭漏陣(えんろうじん)ね。さっきの昏潰陣張ったヤツらが張ってるのね〜。力使ったら、汲剛石壊しちゃったのバレちゃうよ?私たちは別ものだけどね☆」 シルフたち・・・特に属性王は自分の属性を思うままに操る事が出来る。 なので結界が張られていても、それに気付かせる事無く力を使うことが可能なのだ。 「ま、どうも干渉ウンタラって言ってる場合じゃないみたいだけど〜」 契約者である空たちが危険に晒されている事は、契約している方に取っても良い状況とは言えない。 特に自分たちは、一刻も早く宝珠を集めてアレクタリスに戻らなくてはいけないのだから。 「アレクタリスも、太一から離されちゃったみたいだしな」 「嘘・・・」 空が呟く。 精王剣であるアレクタリスに宝珠がはまっておらずとも、ノームたちはその気配を読める事が出来る。 なので姿を隠す事なども出来るのだ。 「・・・おい、太一・・・太一とシリアはどうしたんだ・・・?!」 ヤマトはノームに詰め寄る。 「アレクタリスの気配がわかるなら、太一の気配もわかるだろっ?!」 肩を揺さぶられて戸惑ったノームだが、首を横に振る。 「お、オレはそこまでは・・・っ」 「それは私の役目☆」 キャハ☆とシルフは口元に指を寄せて愛らしく笑う。 ヤマトはノームから手を離すと、シルフに近づいた。 「・・・んー・・・二人は一緒の部屋に居るみたいね・・・汲剛石をはめられて元気は無いけどとりあえず外傷は無し! アレクタリスはあのおじさんが持ってるわね・・・めんどくさいなぁ〜」 ヤマトたちは顔を見合わせる。 「・・・ココを出よう・・・」 一刻も早く、太一たちを助けなくては。 その後、何度かバキラが部屋に訪れた。 「おい、儀式って何だよ!」 しっかりと二人の腕に汲剛石がはめられているのをわざわざ腕を取って確認し、離れ際に頬に触れる。 その感触に背筋をゾワゾワさせながら、気丈に太一はバキラに問う。 何度か無視されていたその質問だが、バキラは二人を見下すように見た後、口を開いた。 「・・・四翼の天使殿ならご存知ではないか?ニーズホッグと言う名を」 言われた途端、太一の眼は驚きに見開かれた。 「神界に住んでいた、悪竜・・・」 「そう。世界樹ユグドラシルの根を食う為に神界を追い出され、今は魔界でその姿を潜めていると伝われる、伝説のドラゴン」 「・・・まさかそいつが・・・!」 出来れば思い浮かべたくは無い結論が頭の中でグルグルと回る。 その名を把握できないシリアは、ただ太一とバキラの会話を聞いている。 バキラは押さえ切れないと言う風にクツクツと笑う。 「そう・・・そうなのだよ!なんとそのニーズホッグが魔界ではなくこの地に封印されていると言うのだよ!」 「それで竜が・・・じゃあお前が!」 太一は力なくバキラを睨む。 「それは見当違いと言うものだ。・・・まぁニーズホッグが居る地に竜が集まっておるのだろうな。 ・・・まぁ、街に魔物を向かわせたと言うのは考えてる通りだが」 その言葉に今度はシリアが驚く。 「じゃ、あの魔物たちはお前が・・・!?」 バキラはそれを鼻で笑う。 「お前らは思わぬか?人間とは美しきものだけ居れば良い。・・・あんな汗糞臭い街など無い方がこの世の為だ。 ・・・まぁ、シリア、お前みたいに取り残したものも時に居るのだがな」 「じゃあここで働いてるのって・・・」 「わしが街でスカウトしてきたものたちだよ。むざむざ殺すには惜しいものたちをな」 そして。 「ニーズホッグを手中に収めたのなら、わしはその考えを世界に教えるのだ。 老いたもの、泥臭いものはいらぬ。美しいものだけわしの足元に従っておればよいのだ。 ・・・お前らのように、美しいものだけ・・・」 再び伸ばされた手を、太一は睨みつけたままパシリと跳ね除けた。 バキラは特に機嫌を悪くしたでもなく、フンッと嫌味らしく笑った。 「お前の仲間も殺しはせぬよ。・・・だいたい今抗ったところでもうお前らにはどうしようも出来まい? ・・・まぁ他に儀式にはほんの100人ほどの生贄が必要らしいからな。 今から街で狩ってくるのだが」 太一は持てる筋力を総動員してバキラを睨む。 「・・・外道・・・!」 「何とでも」 高らかにバキラは笑い、部屋を出て行った。 無力な自分に無性に腹が立ち、力の篭らない手で思い切り腿を殴りつけた。 コメント 大台に入りました(笑) 前回『中途半端に止めるなよ!』と言う意見が結構着ました(大笑) ・・・ごめんなさい、中途半端大好きなんで・・・!(固羅) 次回は街の4人にも活躍してもらいます☆(予定・・・) |