flying 〜The sky story〜 4

空の(強制的な)お願いにより、太一は1人で8人を運んぶことになった。
さすがに大人数を乗せて長時間飛んだので疲れてしまい、浜辺に着いた時は思わず座り込んでしまった。
「だ、大丈夫か・・・?」
ゼーゼー荒く息をついている太一に、心配そうにヤマトが駆け寄る。
「だ、大丈夫じゃない・・・」
慣れない『次元の裂け目』を通ってきて、慣れない土地で長時間力を使えば、疲れるのは当然。
「あら。周りから私たちを見えなくする法術は私たちが使ってあげたのよ?それだけでも感謝してほしいわ?」
ニッコリとまた空に言われて、太一も眉を引き攣らせながらも笑顔で答えてやる。
もちろん、こんなとこが出来るのは幼馴染の特権だ。
ヤマトは太一が可哀相であると同時に、とても羨ましかった。
「はい、太一」
ヤマトにタリスマンを渡してもらい、太一は再びそれを身に付けた。
途端、太一から翼が消えた。・・・否、見えなくなった。
「うーん・・・やっぱなれないなぁ・・・」
いつも振り返ったりすれば、自分の翼が見えたり、フワフワとした羽毛が肌に触れたりしているので、翼がないというのは何か寂しい気がする。
太一たちが戯れていると、ミミとタケルとヒカリが海の浅瀬で足をつけながら遊んでいるのが眼に入った。
「きゃ〜っ。砂が足の裏をこすってくすぐった〜いっ」
ミミが、スカートをまくって、波に寄って持っていかれる砂と戯れている。
「何で海って水がこっちに来ては戻ってくんだろ・・・?」
タケルも、裸足になりながら、少し前かがみになって波を見つめる。
その横でヒカリが、そっと人差し指だけ海の中に入れて、ペロッと舐めてみる。
「タケルくん。この水、しょっぱいよっ!」
予想もしていなかった塩辛さに驚いて、ヒカリはタケルにも舐めてみるように言う。
ヒカリにならってタケルも海の水を舐めて、あまりのショッパサに顔をしかめた。
「『アース』の水って全部こんなにしょっぱいのかなぁ・・・?」
「だったら人間はよくこんな水を飲めるね・・・」
「海の水だけがしょっぱいといいね」
もし、こっちに居る間ずっとこんなにショッパイ水を飲まなきゃいけなくなるかもしれないと思い、ヒカリとタケルは真剣に覚悟を決めた。

みんなが遊んでいる間、光子郎と丈は2人で地図を確認していた。
「太一に運んでもらってきた時に少し地形を見てみた。多分今はこの辺りだね」
そう言って丈は、少し出っ張っている辺りを指差す。
「そうですね。『神の領域』のこの辺りから大体飛んできて、まっすぐ行っていればこの辺りに着いている筈ですし」
光子郎も、丈に賛同する。
空に眼をやれば、太陽はもうすぐ沈んでしまいそうだ。
「とにかくここから一番近い街に移動しましょう。初日から野宿は、僕たちはともかく女性の方々にはツライものがあるでしょうし」
それに、太一もかなり法力を消耗しているはずだ。
何せ、自分だけを運ぶならともかく、いつもの8倍の法力を5時間も持続させたのだから。
2人の視線は、地図の一箇所に集中した。
「この街が」
一番近いですね。と続けようとした光子郎の言葉を、ミミの悲鳴が遮った。
光子郎と丈はミミたちの居る方を振り返る。
ミミとタケルとヒカリは、何かにおびえるように海から上がった。
もしかしたら魔物が出たのかもしれない。
『アース』はいい言い方をすればどこの世界とも繋がりやすいのだが、悪い言い方をすると、それが災いして魔物やら被害を与えるものも来てしまう。
そういう類には、8人は戦闘経験を持ち合わせていない。
神界は、神の力に守られているからだ。
ミミは光子郎のところまで走ってきて、光子郎の後ろに隠れた。
別に変わったところは見えないが、もしかしたら隠れているだけかもしれない。
「どうしよう光子郎くん・・・っ」
ミミがギュッと光子郎の服を掴みながら、震える声で話す。
見れば太一たちも、驚いたような顔をしている。
どこに魔物が出たんですか?と言おうとした光子郎より一瞬早くミミが、
「太陽が海に落っこちちゃう!!」
と抱きついてきた。
「・・・・・・はっ?」
ポカンとその様子を見ていた丈も、その言葉を聞いて、ようやく状況を把握する。
それまで浜辺にやっていた視線を太陽に送り、太陽が海に接しそうなのがわかる。
ミミたちは、このままでは太陽が海に落ちてしまい、海が熱湯みたいに熱くなって、太陽も消えてしまうと思っているのだろ。
多分、光子郎と丈とヤマト以外は全員。
ヤマトも太一にミミと同じ説明を聞いたのか、ポカンとした後で、堪えられないように腹を抱えて笑っている。
光子郎と丈も顔を見合わせた後、皆には悪いと思ったが、耐えられないように声を上げて笑ってしまった。
もちろん、太陽が海に落ちるわけは無い。
海は『アース』(球)上にあるので、宇宙にある太陽が海に突っ込むはずが無い。
ミミたちは視界いっぱいに広がる海に、ちょうど太陽が落ちるような感覚に捕らわれたのだろう。
可愛い勘違いに、3人はしばらく笑った。
もちろん、本当の事を教えた後で手痛いお返しを食らったが。

太一たちが降りたところから一番近い街、『ヴェーネ』
海がすぐ近くにあるので、漁や港が栄えている、別名『海の都』と呼ばれている。
海=水なので、太一たちはウンディーネの影響が出ているかもしれないとハラハラしたが、実際街の入り口である門をくぐってみると、夕方にもかかわらず、街は活気に満ちていた。
大声でセリをやっている人や、値切っている人。
荷台いっぱいに魚を積んで汗だくだくに運んでいる人。
子供も、海に飛び込んだりしてはモリで魚を釣って来て、大きさを競っている。
「いい街だねーっ」
にぎやかなのが大好きなミミは、堪えきれないようにその人波の中に入っていこうとする。
「ちょっ・・・ミミさん!ダメですってば一人で言ってはっ」
寸でのところで光子郎がミミの手を繋ぎ、はぐれるのを避けた。
こんな多く人が居るところ、しかも全然土地鑑が無いところではぐれたりなんかしたら、見つかる確率なんて0に等しい。
「いいですか?勝手に離れたりしてはダメですよ?」
子供のように諭されて、ミミは少し機嫌を損ねたが、それ以上に光子郎と手を繋げるのが嬉しいので、ミミは元気よく返事をした。
空はクスクスとその様子を見ながら、ちょうど傍を通った、少し太めのおばさんを呼び止める。
「おや、旅人さんかい?すいぶん大人数で楽しそうだねぇ」
太一たちも、そのおばさんに向かって一礼する。
「その様子だと、この街は初めてで宿はまだ決まって無さそうだね」
一気に見抜かれて、空はさすがに驚いてしまう。
おばさんは豪快に笑い、空たちについておいでと促す。
「ようこそ、海の都ヴェーネへ。あたしはこの街で宿をやってるもんだよ。ついておいで」
幸運な出会いに、空は太一たちを見、みんな頷いたのを確認して、よろしくお願いしますと頭を下げた。



☆NEXT☆


コメント

『ヴェーネ』という名前は『ヴェネツィア』からとりました〜v
『ポチたま』と言う動物番組で見たのですが、とっても素敵な街だったのでv
今回は神界との違いと言うのを書いてみました(笑)
・・・ってか今ココで話数を考えてみたのですが、8つの属性王出して終わりまで行くのって・・・もしかしてもしかすると1章の50話を越す・・・?(愕然)
いやいやいやいや!!それは避けなくては・・・!!(ガタガタ)
ところで『とちかん』の『かん』の字ってあってるんでしょうか・・・。すごく不安・・・(うわ)