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flying 〜The sky story〜 5 「そうなのかい・・・あるものを探す旅をねぇ・・・」 おいしそうな匂いのする皿を太一たちの前に置き、宿屋兼レストランの女将は空になった盆を胸に抱く。 さすがにひとつの机に8人は座れないので、女子と男子で別れて隣接のテーブルをとって、夕食を取ろうとしている。 香ばしい香りの牛肉や、野菜の炒め物、スープやサラダなどが並び、もう太一たちは手をつけ始めている。 神や、天使だからと言っても、太一たちは肉を食する。 神は生み出したものに役割と運を与えている。 天使だけを特別扱いしたりと言う事も、特例を抜かせば無いに等しいのだ。 だから生きるためには狩りもするし、血も見る。 『穢れ』とは『血』の事ではなく、『自分の心の中の悪気』だとロウが言う。 もちろん、命は大切なので、その日必要以上の動物は狩らないし、野生動物の保護などもしている。 そうやって均衡も守っているのだ。 「で、その『あるもの』って何なんだい?」 幾人の冒険者からもそういう話は聞いているだろうに女将は何度聞いても飽きないらしく、ウキウキと太一たちに聞いてくる。 しかしまさか本当の事を話せるはずも無いので、太一はヤマトと一瞬顔を見合わせた後、少し引き攣った笑顔を浮かべた。 「う、うん・・・実はオレたちも何なのかはよくわかんねぇんだ」 「おや、何なのかわからないものをどうやって探しているんだい?」 最もな質問である。 太一は困ったようにヤマトに視線で助けを求める。 「え・・・えーっと・・・そう!実は魔法の道具を持っていて、それに近付くと反応するらしいんだ!」 やや曖昧な答えだが、どうやら『魔法』とか『不思議』関係の好きらしい女将は、ぱあっと頬を高揚させる。 「そうなのかいそうなのかい!それは大変だねぇ!凶暴な魔物や摩訶不思議なトラップとかにかかったりもするんだろう?」 「・・・はぁ・・・まぁ・・・」 「それを助け合う仲間・・・いいねぇ・・・」 ぽ〜っと女将は目を閉じ、うんうんと頷く。 ヤマトと太一が女将に捕まっている中、空たちは最初の一口こそ恐る恐るという感じだったが、神界にいた時の味とはまた違う料理に舌鼓を打っている。 タケルとヒカリは、飲み水が真水で安心したらしく、もう2杯目をおかわりしている。 「このお肉の中に入っている葉っぱみたいの、ハーブよね・・・いい匂い・・・」 「わー!このスープ、中に鳥のつくねが入っててちょーおいしい〜vvv」 「野菜も柔らかいですしね・・・これ、なんて言う野菜なんだろ・・・?」 初めて口にするものに、興味と関心が次々に湧いてくる。 ・・・太一とヤマトが女将からようやく解放されたのは、その料理の大半が6人のお腹の中に消えた後だった。 路銀の都合もあるので、部屋は2部屋とり、例の如く男子と女子に別れた。 部屋に2つ備え付けのベットがあるのだが、空たちは1人と2人で寝ればいいので問題は無いが、太一たちは5人ずつ寝ると、どうしても1つ足りない。 「ひとつのベットに2人ならまだしも、3人はきついですしねぇ・・・」 誰かがベットで寝るかと考えていた時、女将が少し小さめの予備ベットを持ってきてくれた。 「さっきたくさん話を聞かせてもらったからね、そのお礼さ」 太一たちはその好意に甘え、ベットを借りることにした。 ようやくベットを確保すると、空たちが太一たちの部屋にやってきた。 明日、そしてこれからの予定を決めるためだ。 「明日はまず情報を集めよう。これだけ大きな街だ、何か有力な手がかりの一つくらいは掴めるだろう」 「飲み水や食料などはちゃんと情報を掴んだ後でいいですけど・・・一応必要と思うものをリストアップしてみますね」 空が備え付けられている紙にさらさらと必要なものを書き出していく。 その間に丈たちは、女将に借りたこの街の地図を広げ、明日の情報を聞いてくる区域を分けていた。 「うーん・・・地図で見ても入り組んでいるなぁ・・・」 ヴェーネは水路もあり、そこからではないと入店出来ない店もある。 「とりあえず街を四つに分けて、2人ずつで行動しましょう」 光子郎がそういうと、それまでつまらなそうに寝転がって聞いていたミミは、パッと破顔させる。 「じゃあミミ、光子郎くんと行くーv」 いつもの一言にいつもの抱きつき。 光子郎は慌てふためき、6人は苦笑してそれを見る。 何故光子郎がいつまでも慣れないのかがとても不思議な気がした。 ヴェーネにはゴンドラと言う船が水路を走っている。 水路は小さいもので、ようやく2つのゴンドラが擦れ違えるくらいのものや、街の大通りくらいに大きなものもある。 ゴンドラは細長いスリムな形で、4、5人まで一気に乗れる。 女性の漕ぎ師は主に客乗せのゴンドラを操り、男性の漕ぎ師はバゲージゴンドラと言う、荷物を乗せ運ぶ大型のゴンドラを操る。 基本的にのんびり進むゴンドラは、区域に寄って料金が決まる。 例えば、A、B、C、D、Eという区域をAからBまでならこの料金、AからEまでならこの料金となるのだ。 ゴンドラを所有するのは会社以外にも個人経営しているものもあり、サービスや料金はそのところによって様々に変わる。 太一たちは女将の進めで『ウォーティヌ』と言う会社の一日乗車券と言うものをそれぞれ購入した。 これを見せれば今日一日、『ウォーティヌ』のゴンドラになら乗り放題なのだ。 4つのゴンドラを手配し、それぞれ昨日分けた2人組で乗り込む。 「じゃあ、夕方の鐘がなったら即時にあの宿に戻ってくる、それでいいよね?」 丈の言葉に、7人が頷く。 「じゃ、また後でね〜お兄ちゃん〜」 「おー。ヒカリも無理すんなよ〜」 ゴンドラに腰掛け、ヒカリとタケルが手を振る。 角を曲がり、見えなくなってしまうと、太一とヤマトの乗っているゴンドラも動き始めた。 覚悟していた揺れなどはほとんどない。 『滑るように』進んでいる。 「すっげぇな〜っ」 太一が素直な感想を漏らすと、後ろで漕いでいる女性がありがとうございます。とソプラノの声で返す。 漕ぎ手が後ろで漕いでいるのは、乗り手(客)に景色などがその姿により遮られないようにするためだ。 太一がちょっと身を乗り出して水面を見ると、小さな魚が数匹で泳いでいる。 とても澄んでいる水の底は、石が引かれている。 そこに差し込んできた光が反射し、キラキラと水面と一緒に光っている。 ずっと水面を見ていたら、上からハラハラと小さな白い花が降って来た。 「太一」 ヤマトに呼ばれて上を見ると、橋の上から小さな女の子と男の子が一生懸命手を振りながら、ときどき籠の中から白い花を散らしてくる。 さらさらと揺れる水に小さな白たちが映える。 太一も大きく手を振る。 「すみません、お客様」 ふと後ろを見ると、漕ぎ手が苦笑を漏らしている。 「この橋を通ると、先程の・・・双子なんですが、その子たちがああやって歓迎の意味も込めて花を振らせるのです。 この辺りでは有名でして、可愛いのと、なかなか好評なので止めさせる事が出来なくて・・・」 そういう漕ぎ手のお姉さんの顔も、先程微笑ましそうに眺めていたのを見ると、ああやってもらえるのが嬉しいのだろう。 「いい子たちですね」 橋を通りすぎると、また太一たちが見える位置に二人が移動する。 漕ぎ手も少し櫂を動かす手を休めて小さく手を振る。 ほのぼのしたところで、太一たちはお姉さんに質問することにした。 「ええと・・・この辺りで最近不思議な事が起こっていること・・・ですか・・・?」 「はい。ちょっと風の噂で聞きまして・・・」 まさかこのあたりの水の属性王がいるかもしれないのです。とは言えず、ヤマトは嘘でごまかす。 漕ぎ手は櫂を動かす手を止めずに少し考える。 「・・・いえ、特にはありませんね・・・漁猟も例年通りですし、海や水路に異常が起こった、などという事例も私は聞いてはおりませんので・・・」 「そうですか・・・」 さすがに不安にはさせれないので、ヤマトは少し話題を変えてみる。 「じゃあ、ヴェーネ以外に、水と関連の深いところは知りませんか?」 漕ぎ手はまた考える。 「そうですね・・・滝とか湖ならこの大陸だけでも多数ありますが、ヴェーネ以上に水と関連深いところは無いと思います。 港はもっているかもしれませんが、こんな大規模な水路があるのはヴェーネだけだと教わりましたし・・・」 ヤマトは太一と目を合わせる。 「じゃあ、大きな滝とか湖とかあるところや名前、教えてもらえませんか?」 「ええ、いいですよ」 『何故?』などの、乗り手に不快な思いをさせるかもしれない言葉は使わないようにと訓練されたのか、漕ぎ手は笑顔でそれだけ答えた。 大通りの手前の通り着き(乗り、降り口の階段が近くにあるところ)につくと、漕ぎ手はポケットからあまり質の良くない羊皮紙とペンを取り出し、さらさらといろいろ書き出してくれる。 「汚い紙ですみません。私が思いつく限りのですが、書き出してみました」 それをヤマトに渡す。 「じゃ、本当にありがとうございました!」 太一が元気よく挨拶し、ヤマトがペコリと軽く頭を下げる。 「いいえ。どうぞよい旅を」 漕ぎ手は太一たちの姿が見えなくなるまで見送った後、くるっと方向転換をして、またゴンドラを動かしていった。 コメント ようやく書けました・・・!!(汗) 長い間更新とめていてすみません〜!(泣) これからは『flying』2章中心に更新していく予定です☆ ゴンドラに乗るシーンは結構書いてみたかったので、ちょっと満足だったりします(笑) |