flying 〜The sky story〜 30

改めて辺りを見回してみる。
そこは先程の何も無く昏いところでは無く、暖かな風が吹き、あらゆる緑で創られた神殿のようなところだった。
「ここが本当の『風の間』の姿なんですね?」
聞くと、シルフは笑顔で首を横に振った。
「『風の間』に本当の姿はないわ。『風の間』は、立ち入ったものの心を具現化するの」
言われて、丈はキョトンとした。
「さっきのあなたは、いきなり私に『試練』とか言われてここに連れて来られて、しかもワケのわかない、選択の難しい問題を出されてあなたの心は混乱していた。
だから昏くて天地もないトコロに『風の間』は具現してしまったの」
シルフはクルクルと右手の人差し指を回す。
そこに碧色の・・・色が見えるということは、濃密な精霊が集まっていると言う事だろう・・・風が渦を巻き、静かに広がっていく。
それはフワリと丈の頬も撫でて、円状に広がっていく。
「う・・・わぁ・・・!」
広がった景色に、丈は目を丸くした。
先程とは比べ物にもならない、素晴らしいところに、また『風の間』が具現したのだ。
「今は私の心を具現しているの。と言っても、私はこれでも属性王だから。総ての風精霊と風を管理するための部屋なの」
幼く、まだ生まれたばかりであろう精霊や、美しい容姿の精霊もいる。
全員に共通しているのは、髪や服が碧を基調としている事だ。
部屋、と言うよりも一つの空間だ。
先程の丈の心の具現とは違い、見渡す限り『壁』がない。
「・・・すごいですね・・・」
しかし丈は、あれ?と思う。
「シルフはアレクタリスの中に居るんですよね?なのに『風の間』に来る事は出来るんですか?」
シルフはご機嫌でニコーvと笑う。
「うふふ〜vいいトコに気付いたわね〜v
元々この『風の間』は『私』の中にあるの。風を吹かせるのは精霊の役目だけど、私は総統しなくちゃいけないから。
これも能力の一つって感じ?」
「・・・なるほど・・・」
丈は感心したように頷き、また辺りを見る。
そんな様子を見て、シルフはまた笑む。
「あっ!そういえば!!」
丈は思い出したように焦った表情でシルフの方を振り向いた。
「たっ太一は!?確か太一もここに連れてきたよねっ!?」
途端アワアワした様子の丈に、シルフは今度は声を殺さず笑った。
「あはははは・・・おにーさんはおもしろいねぇっ」
自分の心配よりもまず、仲間の事を心配している。
多分、これが丈の性格なのだろう。
だからこそシルフは、それが気に入った。
「・・・ねぇ、おにーさん。風精霊の象徴って何だか知ってる?」
いきなり問われて丈はキョトンとしたが、すぐに答えた。
「ええと・・・知識と、気紛れ・・・ですよね?」
「いっえーす☆」
シルフはグッと親指を立てる。
「さてさて、問題です。反対と言っていい程の『知識』と『気紛れ』
何で私たちが司ってるものなんでしょーか?」
言われて、丈はキョトンとし、
「え?別に反対ではないでしょ?」
と言った。
ほとんど間を置かず言われて、シルフもさすがに面食らう。
「『気紛れ』と言う事は、いろいろな事にチャレンジしたり、見たり聞いたり、知ったりする事でしょ?
特にシルフは寿命が長いから、更にたくさんの知識を得られる。
だから、シルフの象徴は、『知識』と『気紛れ』でしょ?」
「・・・それは何かの資料で見たのかしら?」
「いいえ?あくまでこれは僕の意見です」
少し間をおいて、シルフが丈の方へと歩んできた。
「―――――ごーかく!!」
ビッとシルフは人差し指を丈の鼻すれすれに突きたてた。
「ご、合格?」
言われた言葉が訳がわからず、オウム返しで聞き直してしまう。
「そう合格!私はあなたについていくわv」
言った途端、シルフの輪郭がぼやけ、さらに『風の間』もサラサラと消えていく。
「えええっ!?うわわわわっ!!」
ポンッと丈の前に何かが現れ、反射的に掴み、突然吹いてきた突風に眼を閉じる。

「丈先輩っ!!」
聞こえてきた声に目を開けようとすると、身体に衝撃が走った。
「そ、空くん?」
空がぎゅうっと丈に抱きついていたのだ。
そっと覗き込めば、ポロポロと涙を零している。
「空、ずっとお前の事心配してたんだぜ?」
言われて前方を見ると、太一の姿。
「たっ太一!!キミ、無事だったのかい!?」
太一は、おうっと笑った後、『なーんてな』と続けた。
「オレ、何か吸い込まれた気がしたんだけど、すぐにこっちに戻ってきちゃったみたいなんだよ。
・・・もともと、シルフはオレを選ぶ気はなかったみたいだな」
な?と太一は丈の掌を見て、笑む。
そっと太一の視線を追い、両手を開けてみると、そこにはエメラルドの宝玉があった。
「・・・やった・・・!」
丈は思わず声を漏らす。
そして、まだ泣いている空の肩を叩く。
そっと顔を上げる空に、エメラルドの宝玉を見せる。
「・・・心配かけちゃってごめんね・・・?でも僕は大丈夫だから」
いつもの丈の笑顔を見て、ようやく空も笑んだ。
「ノームも、空くんを泣かせちゃってゴメンね?」
その後方で少しムッツリした表情をしているノームにも、笑顔を見せる。
「・・・別に・・・オレは・・・」
明らか様に表情を露わにしていた自分の子供っぽさに頬を染めながら、そう言いかけたところで、ポンッと音がした。
「ノ〜ムちゃんっ♪」
シルフが宝玉から戻り、ノームに抱きついたのだ。
「シルフ!抱きつくなって言ってるだろ!!」
「いーじゃん!シルフはノームちゃんの事がだーいすきなんだもん」
真剣な顔で言われれば、ノームも言葉を詰まらせてしまう。
そんなノームにニコーっと満面の笑みを見せ、またぎゅうっと抱きつく。
「これからはずっと一緒だねvvv」
そんな一言にノームは辟易・・・と言う表情を浮かべ、太一たちは苦笑を浮かべた。



☆NEXT☆


コメント

・・・4話で終わった(笑)
早い早い☆毎回このペースならいいのにね☆(・・・←自分で言ってダメージ)
間が開いてしまってすみませんでした(泣)