flying 〜The sky story〜 27

ソーヴィル大陸には、シエルという国がある。
山岳の合間にあり、またの名を風の国と言い、年中強い風が吹いている。
ゴウゴウという風の流れを聞き、それでも風も砂も身体に当たらないので、丈とタケルは不思議そうに自分の周りを覆っている薄い翠色の結界を見た。
「はぁ・・・法術って便利だねぇ・・・」
しみじみと言われ、太一と空は笑いを漏らす。
「太一は魔術も使えるからそうも思わなくなったかもしれないけど、私からしてみたら魔術も便利だと思うわ。
だって敵が襲い掛かってきた時なんて、私ほとんど役に立たないじゃない」
「その分、空は体術でカバーしてるじゃねェか」
「それにしたって、魔術に比べたら天と地の差だわ」
「いやいや結構・・・ごめんなさい・・・」
空に思いっきり睨まれたので、太一はそれ以上言葉を続けるのを止めた。
「・・・にしても・・・噂に聞いてたけど、予想以上に凄いね」
結界越しに、ピチピチと砂が当たる。
これでこのシエルでは普通だと言うので、タケルも驚く。
「ここなら、もしかしたら風の属性王が居るかもしれないわねv」
空がウキウキと言う。
そして腰の袋に手をかけ、ノームの宝珠・・・トパーズを取り出す。
「ねぇねぇノーム。どう?何か感じる?」
空に問われ、ノームは宝珠の姿から幼児の姿へと具現する。
「・・・わかんない・・・元々風は気紛れだし、足が速いんだ。
辿ろうとしても、もう居なくなってる場合が多いから・・・」
「そうなんだ・・・残念」
せっかくなのでノームも一緒に歩く事にした。
身体が軽いので、片手を空、片手を丈が持ってやる。
真ん中にノームを挟み、右が空に左が丈。
「・・・ねぇ太一さん・・・」
楽しげに話している空たちの後方をついていくタケルが、隣りに位置している太一にこっそりと口を寄せる。
太一も気付き、耳を近づけてやる。
「ああしてるとさ、なんか親子って感じしない?」
言われ、太一はもう一度空たちのほうに視線を戻す。
そして、どんどんと顔が笑ってきた。
「あー!あー!そんな感じそんな感じ!」
からかってやろ〜♪と太一が意気揚揚としているところを、タケルのいたずら心が芽生える。
「太一さんもお兄ちゃんとあんな風になりたい?」
「ああっ!」
振り返りながら満面の笑みで頷いてから、しまったと思う。
「たたたっタケル!はめたな!」
「え?何の事ですか?」
「今のっ!!」
「はめただなんて人聞きの悪い〜・・・ほ・ん・し・ん、なんでしょ?」
からかわれ、太一は真っ赤になって否定をする。
それを、真正面からタケルが真剣な顔で見つめる。
「・・・でも、言われたら嬉しいでしょ・・・?」
言われ、表情も真面目だったので、思わず太一は『違う』と言えなくなってしまった。
「・・・・・・そー・・・そりゃ、まぁ・・・」
そう言った途端、またタケルの顔がニヤリと笑む。
「たっタケル!!」
「太一さんってば、すっなお〜♪」
「そういうお前はどうなんだよ!ヒカリとああなりたいって思うか!?」
「うん。なれたらとっても素敵だねv」
照れも無く笑顔で言われれば、太一もそれ以上なんとも言えなくなり、地団駄を踏む。
・・・3歳年下にあしらわれるなんて・・・。
「・・・?後ろの二人ってば何を話しているのかしら?」
風の音が強いため、少し離れていてもうまく聞き取りにくい。
丈もノームも、さぁ?と首をかしげる。
不思議に思っていると、急に強い風が吹いた。
なんと、太一が築いた風の結界を破ってしまったのだ。
「うっわっ」
いきなりの風力に、太一たちはバランスを崩し、その場に倒れこむ。
「の、ノームっ。あなたも身体を伏せて・・・ノーム・・・?」
見上げたノームの顔が引きつっているのを不思議に思い、空は小首をかしげる。
「お、オレ、トパーズにもど・・・」
ノームのセリフはそこで中断された。
『何か』がノームに飛びついたため、ノームがソレと一緒に後方に吹っ飛んだのだ。
「ノーム!?」
思いっきり後頭部を打ったのが見えたので、空は思わず立ち上がってしまう。
「・・・きゃっ」
背中から風に押され、空は前のめりになってしまう。
それでも地面と仲良しにならなかったのは、丈が支えてくれたからだ。
「あ・・・すみません、先輩」
「いえいえ」
ニッコリと笑い、ずれてしまったメガネを直す。
空は火照りかけた頬を軽く叩き、ノームの方に走りよる。
その時にはもう、太一が結界を張り直してくれていた。
「・・・でもオレの結界を破るなんて・・・」
どういう風だよ、と太一は半ば呆れ気味だ。
「ノーム!だいじょう・・・ぶ・・・?」
駆け寄った空がまず見たのは、ノームではなく、その上に覆い被さっているものだった。
「お、女の子・・・?」
ノームよりももう少し小さな背、碧色のウェーブのかかった艶のある長い髪、長袖の少しブカブカの服。
「か・・・わいい・・・っ」
「おいおい空」
思わず呟いた言葉に、太一は突っ込みを入れる。
太一の突っ込みに自分を取り戻した空は、ノームとその女の子を立ち上がらせてあげようとしゃがんだ。
すると、ノームは必死にその女の子を自分から引き離そうとしていた。
涙目なのは、先程ぶつけたところが痛むからだろう。
「はーなーせーよーっ!!」
「いーやぁ〜!せっかく久々に会えたのに〜!」
女の子は、幼児特有の高い声でソレを拒むようにノームにしがみつく。
「えぇっと・・・これはどういう状況・・・?」
駆けつけてきたタケルが、その現場を空たちに問う。
「さ、さぁ・・・?」
言われても、いきなり現れた女の子とこの状況を説明できない。
「離せよ!シルフ!!」
『シルフ!?』
ノームの言葉に、四人の声が見事にハモった。
「やーん!だって久々にノームちゃんに逢えたんだもーん」
「だから!『ちゃん』付けはやめろって言ってるだろ!?」
ギャーギャー口論を繰り広げる二人を、四人は呆然と見下ろしていた。



☆NEXT☆


コメント

新章です〜。今回は風の属性王編☆
後の設定考えていたくせに、最初の設定全然考えてなかった・・・!
今回は早めに終わるかもー。