flying 〜The sky story〜 26

二人・・・ピーヴィとヒタが消え去り、ミミは呆然とソコに立っていた。
「ミミさん!」
振り返ると、光子郎がこちらに駆け寄ってきていた。
「こ、こうしろうく・・・」
ミミがフラリと振り返ると、光子郎が勢いのまま抱きしめた。
そして、ミミの存在を改めて確かめるように、ぎゅっと強く腕に力を篭める。
「・・・無事で・・・ミミさんが・・・無事でよかった・・・!」
よく見れば、光子郎はところどころに火傷を負っていた。
髪はちりちり焼け焦げているし、服も焦げて穴が開いている。
そして、ミミからは見えないが、掌が一番酷い。
いくらカウンターマジックで跳ね返したとは言え、向こうの容量がよほど凄かったのだろう、完全には跳ね返しが出来ず、力を放出する掌に怪我を負ってしまったのだ。
対してミミは、光子郎ほどには怪我を負ってはいなかった。
「・・・光子郎くん・・・!」
何だか光子郎に久々に会えたような気がしたのか、怖いのが一気に溢れてきたのか、ミミも光子郎を抱き返した。
「ミミさん!光子郎さん!」
暫くそうしていると、ヒカリの声がした。
「ミ・・・あ・・・」
抱き合っているミミと光子郎を発見し、ヒカリは声を張り上げるのをやめる。
「?・・・ヒカリちゃん、どうしたんだい?」
その後ろから、治療を終えたヤマトが顔を出し、声を気にせず張り上げる。
何せ火山からの火の音で、ある程度声を張り上げないと聞こえないのだ。
「わーっ!ヤマトさん〜っ」
そのヤマトの声を、ヒカリが抑えたが、すでに発せられた声がまた戻ってきてくれるはずも無く。
「・・・うわっ」
声で、ヒカリとヤマトの存在に気付いた光子郎が、ミミを離す。
「や〜ん。もう終わり?」
ミミは不満そうだったが、光子郎の視線の先を辿り、クルリと振り返ると、また笑顔になった。
「ヤマトさ〜んっ!ヒカリちゃ〜んっ!」
ミミはヒカリに抱きつき、ヤマトも巻き込もうとしたが、ヤマトは一歩下がって、その輪に加わるのを避けた。
そこに光子郎もやってきた。・・・やや顔を赤らめて。
「・・・光子郎・・・さっき、すごい火の気を感じたんだが・・・」
ミミとヒカリがじゃれあっているので、ヤマトは光子郎に話し掛ける。
光子郎も真面目な顔になり、ヤマトに向かい直る。
「はい・・・それが、ミミさんが火の属性王を召喚したんです」
それはヒカリとミミの元にも届き、まずはヒカリが飛び跳ねるのをやめた。
「・・・火の・・・」
「属性王を!?」
一斉にミミに視線を注いだが、ミミはキョトンとしながら『うん』と頷いた。
「ど、どうやって!?」
「わかんない。頭にいきなり詠唱呪文が浮かんできたの」
「じ、じゃあ、属性王と契約をしたの!?」
「んん。してな〜い」
「それじゃ」
「あーん、もうっ!ミミ、わっかんないってば!それに一気に質問しないで!」
ミミは声を張り上げ、プリプリと怒ったので、ヤマトたちはとりあえず質問責めをやめた。
「で、でも一体それじゃ、どうやって・・・」
「それ以前に、召喚術なんて・・・」
天使、堕天使が召喚術を使えないわけではない。
『召喚』の術を知っているのなら、『法』、『魔』の力の属術を使える。
だが、ミミはこれまで一度も召喚術を行った事はないし、その術も知らないはずだ。
しかも、その源である火の属性王は、まだミミの下にはない。
属性王はアレクタリスに宿っているが、もしそれを使うには、その属性王と『契約』をしないといけないのだ。
光子郎ならば水の属性王・ウンディーネ、空なら地の属性王・ノームと契約をしていることになる。
もちろん、アレクタリスに宝珠が揃えば、現持ち主である太一が全属性王と『契約』している事になり、喚び出すことが出来るようになる。
訳がわからずいるところに、火の属性王・イフリートがミミたちのところにやってきた。
「あー!イフリートー!」
ミミがまず駆け寄った。
「イフリート!さっきはどうもありがとう!」
ミミがお礼を言うと、イフリートは女性の姿でニッコリと微笑み、こちらこそ。とミミたちに返した。
「これでここの火精霊たちもようやくゆっくり出来るでしょう」
ありがとう。ともう一度繰り返した。
「あ、ねぇねぇイフリート。なんで私はさっき、イフリートを召喚できたの?」
ミミの質問に、これまたイフリートはニッコリと笑んだ。
「召喚とは即ち『同調』です」
四人は、それぞれの顔を見渡した。
「・・・同調・・・?」
「そうです。『契約』とは、それを認め合った『証』のようなもの。あなたたちは私たちを慈しんでくれた。私たちは、あなたたちを守りたかった。
そしてそのためには、私と、あなたの力をあわせる必要があった。
・・・それが『同調』であり、『証』なのです」
もちろん。とイフリートは続ける。
「ウンディーネだって、喚び出すことが出来ますよ」
と、ちょっとしたイタズラを仕掛けた時のような笑みで、光子郎に教えてくれた。
「それに、私たち属性王はエレメントスクウェアもの基(もと)。ミミさん、私を呼び出した時のみ、『法』の召喚術も使うことが出来ますわ」
ね?と、光子郎の腰にある袋に向かってイフリートは綺麗に笑った。
そこから蒼い光が同調するように淡い光を放った。
「・・・それでは・・・」
イフリートの姿が、ゆらりと揺らめいた。
「ミミさん、改めて契約いたしましょう。・・・火の属性王である、私と」
「うん!」
ミミは手を差し出した。
イフリートはその手を取り・・・ミミは熱くは無かった・・・その手の平の中に自らが変化した紅玉・・・ルビーへと。
・・・そこに、カツリと音がした。
不思議に思い振り返ると、遠く、岩に見を潜ませ、石をこちらに投げつけている街人たちが居た。
「ちょ・・・ちょっと!」
めちゃくちゃに投げているのだが、個数が多いので、何個もヤマトたちに当たってくる。
「な、なんてことしたんだお前らっ」
しゃがれた声が、響いてきた。
「ひ、ヒタさんとピーヴィさんを殺しやがって!!お、お前ら許さないからな!!」
そんな言葉に、多勢の声が同調する。
・・・そして、それに切れたのは光子郎だった。
ミミに向かってきた石を素手で受け止め、投げ返した。
「・・・なんだって・・・?」
いつもの丁寧な言葉使いも消えている。
「ミミさんたちをあんな目に合わせておいて、なんだって?」
どんどん自分達の方に迫ってきた光子郎に、街人たちは逃げ腰だ。
「何も知らない、罪もない旅人達を騙し、殺し、そしてそれを売っていた奴等の言動か?」
光子郎の右手に、水の力が集中する。
「じゃ、じゃあ俺たちはどうすりゃいいんだ!?」
「知りませんよ、そんなこと」
光子郎の目に冷たい光が宿る。
「少なくとも、自分達の行っている事が間違っているとは思ってない人達の考えと、生き方なんてね」
むしろ。と、光子郎は続ける。
「あなた達のような人間(ヒト)は、居なくなった方がいいんじゃないですか?」
そういい、光子郎は充分に集まった水の『力』を解き放った。
火の子を散らしたように街人たちは逃げ出したが、すぐに光子郎の力に追いつかれてしまった。
光子郎は、町中に満遍なく力が行き渡った事を確認すると、クルリとヤマトたちの方を振り返った。
そこには、いつもの光子郎の表情がある。
「こ、光子郎?何をしたんだ?街の連中、動かなくなっちまったぞ?」
「ああ、あれですか?あれは幻影・・・イリュージョンという法術です」
「・・・イリュージョン?」
ヤマトとミミは顔を見合わせる。
「言葉通り、幻影を見せる法術ですよ。罪のない人達や子供達には見せては居ません。でも、罪が大きいほど恐怖の度も増していくようにちょっと内容を変えましたけどね。
それに、最後に許すかどうかは火精霊自身の問題ですしね。僕達が手出しできるのは、多分ここらへんまでですよ」
オシオキと調教ですよ。と、光子郎は笑んだ。
ヤマトとヒカリは、背筋にゾクッと悪寒が走ったが、ミミだけは
「光子郎くんかっこい〜vvv」
と抱きついていた。



☆NEXT☆


コメント

はい〜これで火の属性王編は終了ですv
ちょっと最後が残酷・・・みたいになってしまいました(汗)
う、うーん・・・ちょっと反応が怖いですね(苦笑)
今度からは、また太一チーム(笑)に戻りますv