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flying 〜The sky story〜 24 同刻、地上のヤマトたちも戦闘を開始していた。 ミミが火山の中に落ちているのを悲痛に思っている暇も無く、先程の男たちが魔術を放ってきたのだ。 「な、何なんだこの魔術の威力は・・・!」 ヒカリが結界を張ってくれているが、押されているのは目に見えてわかる。 普通、人間よりも天使の方が力をもつ容量は大きい。 しかもヒカリは高位階級だ。 なのに、人間の方が力が強い・・・。 ヤマトは歯軋りをして、未だその場に落ち込んでいる光子郎の肩を揺らす。 「おい光子郎!頼むから正気に戻ってくれ!!」 正面から顔を覗き込むが、光子郎の眼は虚ろだ。 ・・・先程の―――――先程の、ミミの事がショックで立ち直れないのだろう。 光子郎さえ正気に戻ってくれれば、防戦一方のこちらにも勝機がある。 光子郎も高位階級に匹敵する力の持ち主だ。 彼が今のこの状況に加われば、かなりの好況になるだろう。 が・・・。 「くそっ!」 ヤマトは舌打ちをし、ヒカリになおる。 「右手に宿りしは水を司るもの、『UNDINE』 ―ウンディーネ― 左手に宿りしは水を司るもの、『UNDINE』 ―ウンディーネ― を我はおく。 汝らの力を持ちて我に新しき力を与えよ・・・。 合成精霊(フリンジ・エレメンタル)『CELSIUS』 ―セルシウス― !!」 魔力増幅の円陣を描き、ヤマトはセルシウスを喚びだす。 「汝、清澄なる蒼を身にまとうもの。 我、指差し方へと、汝の輝氷たる力を現したまえ! 四世界の『冷』を司るもの、『CELSIUS』 ―セルシウス― よ! フリーズランサー!!」 ヤマトのかざした手の周りに、青い魔方陣のようなものが表れ、そこから鋭く、巨大な氷矢が、男たちの放った火球へと当たっていく。 炎と氷が激突し、甲高い音がしたかと思うと、砂煙が上がった。 もうもうと煙は上がったが、ヒカリが張ってくれている結界のお陰で、ヤマトたちに煙はかからなかった。 それでも視界は奪われてしまい、ヤマトは周囲に気を張る。 そしてようやく風で煙が晴れてきて、前方・・・男たちの居る方を見た。 「・・・マジかよ・・・っ!」 なんと、男たちには傷一つついてはおらず、平然とそこに立っていた。 よく見れば、男たちの周りに緋色の薄い幕がある。 「・・・あれ・・・火系の結界だわ・・・」 「嘘だろ・・・増幅版のフリーズランサーだぞ・・・!?」 フリーズランサーは、氷系中位魔術ほどの威力に当たる。 さすがに、ヤマトもショックを隠しきれない。 そして、疑問に思う暇も無く、また男たちが攻撃を始めた。 地鳴りするような慟音が響き、ヒカリの顔がまた苦痛に歪む。 ヤマトも魔術で応戦するが、押されてばかりだ。 このままでは、こちらの方が先に力尽きてしまう。 「おい光子郎!いい加減にしろ!!ミミちゃんなら・・・きっと大丈夫だ!」 「それは無理だね」 ヤマトが叫んだ言葉を、無情にも否定したのは、例の男たちだった。 「何だと・・・!」 ヤマトが二人の男を睨むが、男たちはその視線をサラリと流す。 「まぁ知らないだろうから教えてやるさ。・・・どうせキミ達だってこうなるんだしね〜」 イカツイ男とは対照的に、小柄な男がクスクス笑う。 「別にオレたち、人身御供なんてやってる訳じゃないのさ。ちゃ〜んと、理由が有るんだよ」 「何だって言うんだ・・・!」 ふっと男は笑い、ヤマトに挑戦的な笑みを向けた。 「緋真石を作っているのさ」 男のその言葉に、ピクリと反応したのは、光子郎だった。 ヒカリとヤマトは、唖然と男たちを凝視している。 「ひ・・・しんせき・・・?」 ヒカリの眼が大きく見開かれる。 「天使のアナタタチならご存知でしょう?緋真石くらい。 火精霊の命から創り出される緋真石。そして、その威力は、火系魔法晶石の中で群を抜いているという・・・」 「バカな・・・!あれは簡単に火精霊の命から出来るもんじゃないんだ! 『聖』のエレメンタルスクウェアと、高い力を持つものが揃わないと―――――」 そこまでヤマトは自分でいい、またしても言葉を失った。 「・・・まさか・・・」 「そ。ここのエレメンタルスクウェアは、『聖』・・・そして、さっきの子の魔力・・・強いと思ったけど、まさか天使だったとはね」 二人の笑い声が微かに響く。 「なんて・・・ことを・・・!」 ヒカリが悲痛に言うと、心外な。という顔で、いかつい男が口を開く。 「別の俺たちゃ自分勝手に行動していた訳じゃねェさ。街のやつらもしっかりと協力してくれたぜ? 魔法晶石はそんじょそこらのタリスマンや魔法力増幅具とは金の値が一桁も二桁も違うのよ」 なぁ。と、男は遠くに避難していた街人に視線を向ける。 街人たちはヤマトたちに睨まれると、ふいっと視線を逸らした。 それでも、否定をしたり謝罪をするものは居なかった。 「そんでもって、お前達もかなりの法力、魔術をもっている。 今回の緋真石はでっけぇぞ〜」 男の言葉に、ヤマトは違和感を覚える。 「・・・今回・・・の・・・!?」 「ああそうさ」 事も無げに、男はそう返してくる。 「ここに来る『力』あるものを連れ出してはここに投げ込んで緋真石を創っているのさ・・・ほれ」 そういい、男は自分の緋真石を見せつける。 「それで・・・魔力が・・・!」 「魔力だけじゃないぜ?法力だって、な・・・」 こう云う時、魔法が使える人間は厄介だ。 何せ、高位のものになれば、法術と魔術を同時に使うものも居る。 こちらが攻撃に回っても、相手は法術で守りながら攻撃も出来るのだ。 「ま、地形も俺たちに味方してるしなぁ・・・こんなところで水、氷系魔術使ったって、精霊が集まってこりゃしねェだろ?」 そう、ヤマトが増幅の魔方陣を描いたのには意味がある。 確かにここは水も湧き出てはいるが、あまりに火の精霊の力のほうが強く、また、水精霊がここに住むのはあまりに困難で、その分精霊が集まらないのだ。 「ま、そんな訳で、運が無かったと思ってあきらめ」 「ふざけるな」 男の言葉を遮ったのは、光子郎の静かな声だった。 膝をついていた身体を起こし、先程まで虚ろだった眼を男達に向ける。 その冷たい迫力に、思わず男達は押し黙ってしまった。 「そんな事のために・・・ミミさんを・・・っ」 ピリピリと、光子郎の周りの空気が張り詰めていく。 「ふざ・・・けるな・・・!」 光子郎が叫ぶと同時に、火口から勢いよく火が吹いた。 ヤマトたちも男達も、思わぬ方向からの爆音に、視線を向ける。 炎は徐々に薄れていき、そこから『何か』が見えてきた。 「―――――っ!み・・・!」 ヒカリは思わず叫びそうになる。 炎から現れたのは、なんと顔を俯かせたミミだったのだ。 光子郎の視線もそちらに向き、先程のピリピリした空気が薄れていく。 「くそ・・・っ!なんでこいつ無事なんだ!?」 それに焦ったのは男達だった。 誰でも炎の中から人が出てくれば驚くだろうが、それが死んだと思っていた人物なら、なお驚くだろう。 「・・・テー・・・」 ミミが、俯いた顔をあげ、男達を睨んだ。 「さい・・・てー―――!!」 瞬間、ミミを取り巻いていた炎が消え、その代わりに黒い翼が下から吹き上げてくる炎で、紅くきらめいていた。 「あたし・・・あなたたち、絶対に許さない・・・!!」 ミミの迫力に、それまで意気揚揚としていた男たちがたじろいだ。 「犠牲になった火精霊たちや、人間さんたちのカタキ・・・あたしが絶対に打ってやる!」 また、ミミから炎があがる。 が、それは火山からの炎ではなく、ミミが発している炎だ。 「絶対、火系の魔術で、あんたたちをぶっとばす!!」 そう言い、ミミはビッと男達を凄んだ形相で指差した。 コメント 次でいよいよ決戦です!! ミミはもちろん、今回あまり出番の無かった光子郎にも活躍していただきますv ・・・なんか火精霊、痛い話になっちゃったなぁ・・・(汗) |