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flying 〜The sky story〜 21 「やられましたね」 ホウキの柄を握りしめ、光子郎が溜め息をつく。 「やられたって?」 ヤマトもホウキを動かしながら、光子郎の方を向く。 「ですから、スリとここの女将はグルだったって事ですよ。スリがお金を盗んで、別の人がここに泊まらせる。 さらに後払いや食事付き等のサービスに見せかけて、実はスリに遭った事をわかりにくくする。 で、カモにかかった人達をここで働かせる。・・・二重の徳をするって事ですよ」 「・・・やられた・・・」 光子郎と同じ言葉をはき、やはり同じ様に溜め息をつく。 「ほらっ!手を休めてんじゃないよ!」 そこに女将が鬼の形相で迫ってくる。 ビクッと肩をすくませて、ヤマトと光子郎は話を止めて手を動かす。 ミミとヒカリは1階の食堂で働いている。 「しかし・・・暑い・・・」 ヤマトが額に浮かんだ汗を拭う。 まったく、太一たちに逢えるのはいつになる事やら。 ・・・ソレは3日目に起こった。 コトっと物音がした。 泊まる場所も無いので、ヤマトたちは従業員と一緒の狭い部屋で雑魚寝をしている。 ふと周りを見れば、数人の従業員が居なかった。 少し離れたところには光子郎がグッスリと寝ているというのに、二人の他にはいないのだ。 「・・・?」 どうしたっておかしい。 トイレに行くのなら判るが、何故こうもいきなり、しかも全員が居なくなるのか。 それに先程の物音。 「・・・・・・?」 首だけを後ろに回してみると、なにやら紅いものがチラチラと見える。 そっと立ち、窓のカーテンを開ける。 「・・・っ!?」 すると、外に人が松明を持って出歩いていた。 一人や二人ではない。かなりの大人数・・・それこそ、街の人達がどこかへ向かっているという感じだ。 ・・・嫌な予感がする。 ヤマトは音を消すのをやめ、未だ眠っている光子郎を起こす。 「・・・光子郎・・・おいっ光子郎・・・っ!」 声をひそめ、光子郎を揺さぶる。 「ん・・・なんですか・・・?」 眠たげに眉を潜め、起こした原因を見る。 「街の奴等の行動がおかしいんだ」 ヤマトの言葉に、更に眉を潜めて、やはり音を消して窓に近づく。 そしてその異常さに気付き、光子郎は眼を見開いた。 「・・・何をしているのでしょう・・・この暑いのに全員が松明を持って・・・」 「おかしい・・・とりあえずミミちゃんたちを起こしてこよう・・・」 最小限の荷物を持ち、そっと二人は部屋を抜け出す。 女性従業員の部屋はここから2部屋離れたところだ。 気配を消し、そこに近づく。 「・・・ミミちゃん・・・ミミちゃん・・・っ」 ヤマトが小さな声で囁くが、部屋の向こうに届くとは到底思えない。 「どうします・・・?声を届ける法術でも、扉の向こうでは、ミミさんもヒカリさんも捜せませんし・・・」 ヤマトは少し悩んだ後、仕方ない。と手をあわせる。 「どうするんですか?」 「千里眼で中を見てみるんだ。・・・あまり気は進まないけど・・・」 なるほど。と思ったところで、ふと疑問が沸く。 「ヤマトさん、風見師でしたっけ?千里眼って、風見師限定法術ですよね・・・?」 うーん・・・とヤマトは唸る。 「正式には風見師じゃないんだが・・・何か、風精霊たちに頼むと、見せてくれたりするんだよ」 「・・・本当に精霊に好かれているんですね・・・」 光子郎は関心してしまう。 ヤマトは照れたように笑うと、今度こそ力を集め始める。 正式な風見師ではないヤマトは、呪文など知らない。 だから風精霊たちに『語りかける』のだ。 「空翔ける風精霊たちよ。俺にその力を貸してくれ」 と、ふわりとヤマトの頬を優しい風が撫でる。 光子郎でも見えるくらいの、濃密な風精霊がヤマトを中心に集っている。 僅かな言霊で、これほどの精霊が集まってくるとは。 もしこれでヤマトが正式な風見師になったら、おそらくその頂点に近づけるかもしれない。 ヤマトは眼を細め、じっと扉を見つめる。 しばらくそうしていると、いきなり立ち上がった。 ヤマトが集中を逸らしたため、ほとんどの精霊たちは霧散してしまったが、それでもヤマトには風精霊が集っている。 ヤマトは扉のノブに手をかけると、それを開けようとした。 「や、ヤマトさん・・・?」 いきなりのヤマトの行動がわからず、光子郎は唖然としてしまう。 「ちょっと退いてろ」 ヤマトは光子郎の問いに答えず、数歩下がらせる。 そうして、小さな火球を生み出すと、扉に向かってはなった。 小さくても威力のある火球は扉の木を焦がし、鍵を外させる。 バァンっと戸を蹴ると、ズカズカと中に入る。 「ちょ・・・っ女性の寝室にそんな・・・っ」 などという光子郎の照れのある言葉をさらに無視し、ヤマトは寝室に入る。 光子郎も迷った後、中に入り込む。 「・・・なっ・・・」 光子郎はその中の光景に眼を見張る。 そこにはヒカリだけが居た。しかも、縛られ、猿轡をはめられた。 それをヤマトに外してもらっているところだった。 「一体何が・・・!?」 光子郎も近づく。 猿轡を外してもらったヒカリは、泣き顔で、ミミさんが・・・っという。 「ミミさんが・・・どうかしたんですかっ!?」 光子郎がヒカリを覗き込む。 ヒカリは嗚咽を堪え、懸命に言葉をつむぐ。 「ね、寝てたらいきなり他の人達が起きて、ミミさんを捕まえたの・・・私、何とか助けようとしたんだけど、ヘンなもの嗅がされた後、意識失っちゃって・・・っ」 さぁっと、光子郎の中で血が引いていくのがわかる。 「・・・くそ・・・油断した・・・っ」 あまりに疲れていて、気配さえも読めなかった。 つい前に、同じ様な事を起こした後なのに。 「・・・多分・・・あの人達と何か関係があるのでしょう・・・」 冷静を保とうとしているのだろうが、声が震えてしまう。 「・・・そうだな・・・まずは外に出よう・・・ミミちゃんも心配だ」 荷物を持ってきます。といい、光子郎は自分達の部屋に戻る。 そうして、部屋に戻った後、静かに拳を握り締める。 ダンッと強く壁を叩きつける。 ミミを、今度も助けられなかった自分が、どうしようも無く歯痒かった。 コメント またしてもこのパターンかい!と言う突っ込みはしないでください〜!!(苦笑) まったく唐突な展開かもしれませんが、けっこうこれ以降の話は(頭の中で)考えているので(おそらくは)大丈夫かと!(おいおい) 何篇かは、次らへんでわかると思います・・・(ニヤリ☆) |