flying 〜The sky story〜 22

さすがに堂々列に並ぶのは危険なので、最列尾を遠くから離れて着いて行った。
ただでさえ蒸し暑い中を、松明を燃しているので、さらに暑い。
街人たちは、一際大きな火山へと歩を進めている。
「・・・このクソ暑いのに何で火山の方に・・・?」
『厭な予感がします』
突然した声は、ウンディーネのものだった。
姿を現しては居ないものの、宝珠が淡く光を放っている。
「厭な、予感・・・?」
光子郎が聞き返す。
『まだ私がヴェーネに居なかった、居場所を捜している時に、人間から『不意に人が居なくなる、神隠しの街がある』と耳にした事があるんです』
元々精霊は『姿が見えない』ものだ。
高位精霊・・・ウンディーネのように属性王など、その力が強くなると、自分の姿を具現する事が出来るようになる。
ほとんどの精霊は群れて生活しており、互いに協力して魔術法術の力を貸してくれたりなどするのだ。
と、光子郎がいきなり走り出した。
「光子郎!?」
数秒遅れて、ヤマトとヒカリも走り出す。
ヤマト一人なら光子郎にすぐ追いつけたかも知れないが、ヒカリをまさか置いてはいけない。
距離は開く事は無いが縮む事も無い。
参列者に追いつき、ぶつかる事も構わずに追い抜いていく。
ヤマトたちが通り抜けたところで、ようやく放心から解けた彼らは、ヤマトたちを追い出す。
「っ!ヒカリちゃん!先に行ってくれ!」
「え?・・・で、でも・・・っ」
「俺は大丈夫!足止めしてからすぐ追いつくから!」
ヒカリの背を押してやり、ヤマトは180度向きを返る。
「ストーム!」
詠唱無しで魔術をぶつける。
突風を出すだけの初歩風系魔術なので、至近距離で吹っ飛んだもの以外は怪我も負ってはいないだろう。
松明の火はあっても、微々たるもの。
さらに夜空色のヤマトの翼なら、見えたものはそうはいないだろう。
もし居たとしても、今はそんなことを気にしている場合ではない。
とりあえずそこら辺の人をブッ飛ばしたヤマトは、また走り出す。
すぐにヒカリには追いついた。
「光子郎は!?」
ヒカリは上がった息で、前方を指差す。
何とか目を凝らすと、光子郎の朱めの茶色の髪が確認できた。
「ヒカリちゃん、ごめんよ!」
「え?・・・っきゃっ」
ちょっとした浮遊感の後、ヒカリはヤマトの肩に担がれていた。
確かに、疲れも増したヒカリの足では、光子郎に追いつくことは出来ないだろう。
「乗り心地悪いと思うけど、我慢しててくれ」
ヒカリが自分にしがみついたのを確認すると、ヤマトはスピードを上げた。
聞きつけた前方の街人が、捕まえようと阻止してくるが、それらは全部、ヤマトに触れる前に左右に別れていった。
まるで、何か壁があるように。
ふとヒカリの詠唱が耳に入ってきた。
何かの結界を、持続してかけてくれているのだろう。
そのお陰で、光子郎に何とか追いついた。
「おい光子郎!一体どうしたんだ!!」
怒鳴りつけると、それでも光子郎はそんな事に構ってる暇はないとばかりにまだ走る速度を緩めない。
「光子郎!!」
もう一度ヤマトが怒鳴ると、光子郎がようやく口を開いた。
「さっき」
上がった息で、光子郎は何とか言葉を紡ぐ。
「さっきの、ウンディーネの話・・・も、もしここの事だとしたら・・・っ」
聞いて、ヤマトもヒカリも顔色を変える。
ありえない事ではない。
この異様な雰囲気に、突然いなくなった・・・いや、攫われたミミ。
そして、今向かっている先には・・・。
「くそっ・・・キリが無い・・・っ!」
珍しく光子郎が敬語を崩す。
街人が、幾らも幾らもこちらに向かっている。
「光子郎、ヒカリちゃん!タリスマンを!」
「えっ?」
「ポケットか何かにしまうんだ!もう天使がどうとか言ってる場合じゃない!空から行こう!」
ヒカリも光子郎も頷く。
「行くぞ!」
ヤマトは、やや荒々しくヒカリを思い切り空に投げる。
光子郎も、下げていたタリスモンを外して、白い翼を広げる。
突然現れた2対の翼に、街人は唖然とする。
その間に、ヤマトは印を結ぶ。
「テンペスト!!」
威力を抑えたものの、先程のストームの何十倍も大きな突風が吹く。
街人を吹っ飛ばしたところで、ヤマトもタリスマンを外して空へと舞い上がる。
風で視界はすぐには戻らなかったが、紺に良く映える白の翼は、すぐにヤマトの視界に飛び込んだ。
光子郎とヒカリも、ヤマトを認めると、スピードを上げる。
ビュウビュウと蒸し暑い風が耳を掠めてくる。
落ちる汗を拭い、例の火山へと向かう。
地を駆けていた時とは違い、ソレはすぐに近付いてきた。
「・・・ミミさん・・・!」
「ひど・・・」
光子郎はミミの名を呼び、ヒカリは口元を覆った。
ヤマトは無言でスピードを上げた。
・・・ミミは、火山の穴の開いているところで、宙吊りにされていた。

「ちょっとちょっと〜!何すんのよ〜!!」
ミミは蓑虫状態のまま、ジタバタと暴れる。
「静かにしろッつてんだろうがっ!!」
イカツイ男がミミに怒鳴る。
「何よ〜!あたしが何したって言うのよ〜!!」
が、ミミの怒りは更にヒートアップしていく。
が、熱さは拭えず、ポタポタと顔から汗が流れ落ちていく。
魔術を使って脱出するのは簡単だ。
だが、人間の前で魔術を使ってはいけないと光子郎に再三言われているので、耐えているのだ。
「別にお前さんが何したッツーんじゃねェがな・・・まぁなにさ、マジナイっつーかな」
ガラ悪く、ニヤニヤ笑いながら男が言う。
「はぁ?」
意味が判らず、ミミは首をひねる。
「ミミさん!」
その時、聞きなれた声がミミに小さく届く。
上空を見て、ミミはパッと表情を明るくする。
対して焦ったのは街人たちだ。
一緒に居た旅人が、こちらに向かっていると聞いたが、空を飛んで・・・否、天使だとは聞いては居ない。
「おい!縄を!!」
男は焦り、もう一人の男にミミを縛り付けている縄を切るよう命じる。
「ミミさ・・・!」
それを見て光子郎はスピードを更に上げる。
ヤマトは魔術を唱えるが、何かの壁のようなものに弾かれてしまう。
プツリ。
容赦無く男がミミを支える縄を切った。
・・・光子郎の手は、届かなかった・・・。



☆NEXT☆


コメント

急☆展☆開☆
次あたりに精霊出てきます〜v
何精霊かはもうお見通しでしょうね(苦笑)
・・・この篇は何か光ミミだなぁ(笑)