flying 〜The sky story〜 20

そういえば。と、空は宙を見上げる。
「ヤマトって最低階級でしょ?それに、なんで魔術しか使えない堕天使のヤマトが法術使えるの?」
それを聞き、太一たちは苦笑を漏らす。
「・・・な、なによぅ・・・わからない事聞いて何が悪いのっ!?」
「い、いや・・・別に悪いって訳じゃないけど・・・なぁ?」
太一が丈にふる。
タケルが、訳がわからないと言う風にハテナを浮かべていてる。
「うん・・・だって空くん、ここもう宿屋だよ?気付くならもっと早くしなきゃ」
と、言われた途端空の顔が真っ赤に染まる。
タケルもようやくわかったと言うように頷く。
「・・・だ、だって・・・」
ム〜ッと、空はむくれてしまう。
「まぁまぁ、空くん」
丈がたしなめる。
「風見師だけはね、別ものなんだよ」
「・・・べつ?」
空が小首を傾げる。
空とタケルが丈の講習に聞き入っている内に、太一はご飯をかきこむ。
「うん。もともと風見師の限定魔法は、魔術や法術といった力を必要としないんだ。
風見師限定魔法はそのものの『力』を媒体としないんだ。
限定魔法の『力』の源は、風精霊の力そのものなんだ。
だって、限定法術のプロビジョナルライフだって、その気になれば人を殺したり出来るだろう?」
「あ。そういえば・・・」
「もともとさ。法術と魔術だって正反対に見えて結構近いもんなんだぜ?」
「そうなんですか?」
ようやく食の手を一時止め、太一が会話に参入する。
「ああ。法術の中に『カウンタマジック』っていうのがあるんだけど、それの効果ってのいうのが、相手の『力』を跳ね返す技なんだ。
例えば相手の技がエクスプロードだとするだろ?それ跳ね返されちまったら相手なんてイチコロだ。な?法術で相手を傷つけるって事も可能なんだよ」
「そういえば魔術の中にも『ファイアカクテル』って言うのがあるんだけど、それの追加効果で相手の攻撃力を下げるって言うのがあるなぁ」
「な?結構しっかり分かれているようで曖昧なトコもあるだろ?」
「はぁ〜・・・なるほどねぇ・・・」
空がそういいつつ、またしてもおかずに手を伸ばそうとしている太一の手を叩き、自分の方へ向ける。
「そういえば太一って四翼の天使になってからすっごく頭もえらくなったわよねぇ・・・」
空に手を叩かれ、太一は渋々手を引く。
「ああ・・・これ?・・・うーん・・・何ていうか頭にポロポロ入ってくるんだよなぁ」
「一番最初の四翼の天使の事が頭の入ってきたのと同じに?」
「ん。まぁな」
パンをシチューに浸し、それを食む。
「忘れちゃう事って無いんですか?」
タケルに言われ、ふと太一も思う。
「・・・そういや、そうだな・・・ポロっと口から出ちまうけれど、忘れるとかってないなぁ・・・」
「不思議だねぇ・・・本当に・・・歴史の証人者もそうだけど、モリーゼさま達はどういう風な仕組みでやってるんだろうね」
ねぇ。と4人で夕食に手を伸ばした。

一方、ヤマト、光子郎、ミミ、ヒカリたちは途方にくれていた。
「・・・あっついよぅ・・・」
ミミが愚痴を漏らす。
しかしそれもしょうがないかもしれない。
ここら辺は火山が近くにあり、湧き水が染み出る。
お陰で酷い湿気に見舞われ、汗が先程から止まらない。
それぞれマントや上着を脱ぎ、ラフな格好になる。
辺りの人々もノースリーブを着ている。
「しかし・・・本当に火山に近いところに街があるんだな」
額に浮かぶ汗を拭い、ヤマトは辺りを見る。
正面より右側に大きな茶色の火山がある。
「・・・けれど、街の人たちはいい感じですね」
眼が合うと、ニコリと微笑んでくれる。
「・・・でもミミ、そろそろ限界だよ〜う・・・」
「うん・・・私も・・・。さすがに暑いわ・・・」
いつもは限界までへこたれないヒカリさえも弱音を吐く。
「そうか。二人とも神殿の中で暮らしていましたものね」
神殿は法術で気候が管理されているので、夏も冬もあまり気温に大差は無い。
否神殿はそうもいかないが、専用の部屋に巨氷を出したり炎を出したりして、否神殿全体の空調を管理している。
しかもミミは天位階級。いくらよく否神殿を抜け出していたと言っても、こう長い事さらされている事は無い。
身体がさすがに異変を感知しているのだろう。
「そうですね。ウンディーネも参ってしまっているようですし・・・近くの宿屋にでも泊まりますか」
ノームのように、光子郎たちもウンディーネから説明を受けたが、気候のせいか、使える事だけ伝えるとすぐに宝珠に戻ってしまった。
「あとで水法術でもかけましょうね」
ヒカリが宝珠に話し掛けると、ウンディーネのアクアマリンが微かに光る。
『ありがとう』と言う事なのだろう。
とりあえずヤマトたちは、街人たちに聞いて宿屋を探す。
言われたのが、『セイティ』というものが経営する宿屋らしい。
「値段も手頃で夕朝2食付きがいいなぁ・・・」
ヤマトたちの意見も一致した。
少し遠いが、歩く事にする。 「はーいっ!いらっしゃーいませーっ!」
入ってから声をかけてきたのは、かなり見かけが若い女性だった。
「あら、お客さんたちはお泊まりですか?」
小首を傾げて聞いてくる。
「ああ・・・はい。4人なんですけど、部屋は空いてますか?」
「はい、空いてますよ。男性の方と女性の方と別けた方がよろしいでしょうか?」
「出来るなら」
「はい、わかりました。・・・すみません、今ちょっとベットのメイキングを確認してきますので、少々こちらでお待ちください」
そう言われ、テーブルを指される。
「・・・いい感じの人ね」
「今まで結構女将気質の人たちが多かったからなぁ」
そういい座ろうとすると、酔っ払いにぶつかってしまう。
「ああ、ごめんよ兄ちゃん」
それでもしっかり詫びをいれるので、今までの街よりも街の人たちに余裕があるのかもしれない。
それから5分くらい後に、女将がやってきた。
「はい。お待たせいたしました〜。では、こちらにどうぞ」

一日グッスリ眠り、翌朝は10時にチェックアウトする。
「じゃ、すみませんが4名で5000ティルになります」
「ああ、はい・・・」
が、ヤマトがいくら財布を捜しても出て来ない。
「や、ヤマトさん??」
「お・・・おかしいなぁ・・・ちゃんとここに・・・」
ヤマトがそう言うところにしっかりしている事は3人も承知済みだ。
・・・・・・と、言う事は・・・。
「・・・やられた・・・」
昨日の酔っ払いだろう。・・・スリに会ってしまったのだ。
「・・・お客さん?」
「あ、あのすみませんっ!ちょっと・・・お金が・・・」
「・・・おきゃくさ〜ん?」
途端、女将の目付きが豹変する。
「ちょっと困るねぇ、無銭かい!こりゃおえらいさんに来てもらうしかないねぇ!」
話し口調も変わる。
「え・・・えと・・・あの、スリに会いまして」
「あーやだやだ!金持ってない奴はみぃんなそう言うんだよ!」
そう言われても、スリに遭ってしまったのだからしょうがない。
宿屋の代金はそれぞれが交代交代に一人で払っている。
もともと自分のお金ではなく、それぞれ別けて持っている為だ。
その方が金を取られにくいと考えたのだ。
もしそれぞれワリカンで、その現場を見られてしまったらドロボウたちにすられてしまう確率が高くなる。
・・・しかし、今回はそれがアダになってしまった。
光子郎もミミもヒカリも、もう支払済み組なのだ。
「で、ですけど・・・」
「・・・なんだい?あんた達に逆らう権利があるのかい?」
そう言われてしまうと何にも言えなくなる。
立場上、理由はどうあれ自分たちの状況は確かにやばい。
「おえらい人達に連れて行かれたくなかったら働いてもらうよ!」
ええっ!?と女将が4人を睨み付ける。
・・・・・・もちろん、ヤマトたちに選択権は一切与えられないが・・・。



☆NEXT☆


コメント

こっちは災難組(苦笑)
どうしても月見さんはカップルで別けたかったらしく、どうしても太一組に『光子郎』と書きたくなってしまいます(苦笑)
これからはしばらくヤマト組視点で。かな?