flying 〜The sky story〜 2

「いっちばーん♪」
「にーばん、とっ」
最初に否神殿に着いたのはミミ。次に太一。それから空。その後ろから光子郎がやや息を切らせながら走ってきた。
「な、なんで競争する必要があるんですか・・・っ」
肩で息をしていると、ミミが光子郎の傍にやってきた。
「え〜?だって何かした方が楽しいじゃない〜♪」
もともと外に出るよりも、本を読んでいる方が好きな光子郎は、走ったりするのが大の苦手だ。
ちなみに今ので全速力だったり。
「・・・光子郎くん大丈夫?」
短距離だった割に疲れている光子郎を覗き込む。
「光子郎くんはスポーツは苦手なのよね?」
横からまったく息の切らせていない空が苦笑しながらフォローを入れる。
ちなみに、丈、タケル、ヒカリは参加しておらず、ゆっくり後ろから歩いて来た。
空の言葉にミミはフーンと頷き、
「ミミ、本読んでる光子郎くんも好きだけど、スポーツ出来る人も好きだな」
と、一言。
それから光子郎の日程に、体力作りの項目が加わったのは言うまでもない。

「おお。来たな」
否神殿の中央部に行くと、ロウが待ちかねたように立ち上がって、太一たちを歓迎した。
「さ、こっちに」
空がそこからは案内していく。
ついたのは、ロウの部屋だった。
広い部屋はパステル調で統一されていて、『老人の部屋』と言うよりは『子供部屋』と言うような感じだった。
可愛らしい人形もあれば、ちゃんばらで使うような布製の剣もある。
「あ、ロウ様!お茶なら私が・・・っ」
太一たちが呆けている間、空がお茶を出そうとすると、ロウがいいから、といそいそを準備を始めてしまった。
瞬く間にテーブルに並んだのは、クッキーにキャンディーにチョコレートに砂糖漬け。
飲み物は紅茶にオレンジジュース、リンゴジュースと色々なものが並ぶ。
「他に何か食べたいものや欲しいモノはあるか?」
私、ビスケットが食べたいー。とミミが手を上げると、ロウはニッコリ笑って、また部屋を出て行った。
「・・・ほら、ロウ様、子供たちにいつも囲まれてるもんで・・・どうも構うのが趣味になっちゃったみたい・・・」
「ああ・・・だから・・・」
そう言って太一はファンシーな部屋を見渡す。
いつもロウの元に子供たちが来るので、最初はシンプルだった部屋を子供たち好みに改装し、お菓子もいつも絶えないようにした。
「いつもそんなんだったから・・・なんかいつのまにか私たちまで子供たちのように扱われるようになっちゃって・・・」
さながら孫が来たことを喜ぶおじいちゃんのようだ。
「ま、楽しそうだからいいんだけどね」
そう笑う丈も空も、今のこの暮らしをかなり楽しんでいるようだ。
「ほら、ビスケット持って来たぞ」
和んでいると、皿にいろんな形をしたビスケットを盛ったロウが部屋に入ってきた。
「さて、話を始めるか。役者も揃ったしな」
そう言ったロウの後ろから、もう一人現れた。
最初に発見した太一は、眼を大きく見開く。
金茶の髪。夜の空を思わせる、濃紺の翼。・・・蒼い、瞳・・・。
「ヤマト・・・」
太一は、自分の頬に血が集まるのを感じた。
自然に笑みが広がっていく。
ヤマトも自分を見つけて、微笑んでくれる。
「太一・・・」
低音で囁くように言われた自分の名前に、太一はみんなの前にもかかわらず抱きあいそうになった。
気がついたら足が走り出してしまっていたので、抱きあいたい気持ちを抑えて、ヤマトと手を取り合った。
空たちも、優しく微笑んでいる。
思わず2人の世界に入ってしまい、ハッと後ろを振り返った太一は、ニヤニヤと笑う空たちを見つける。
「さ、さー!ロウ様の話し聞かなきゃなー!!」
手を離し、太一は首まで真っ赤にしながら席についた。
ヤマトも苦笑して、さり気なく太一の横に腰を降ろした。

「均衡が崩れている?」
ロウの一言に、空が反応する。
「精霊の、ですか?」
コクリとロウは頷く。
「それは・・・『風の境目』を無くしたからですか?」
太一の質問に、ロウは唸りながら
「直接の原因としてはそれ・・・しかし均衡が崩れたのは他にある」
と言った。
「他って?」
ミミがビスケットやチョコレートやらを頬張りながら聞く。
頬に屑がついてるのを光子郎が教えてやると、ミミはプ〜っと頬を膨らませて、わかってるなら取ってよ〜と訴えている眼で光子郎を見た。
「属性王とアレクタリスじゃよ」
「アレクタリス?」
ヤマトたちの視線は、太一の腰にあるアレクタリスに注がれた。
「属性王ってあれだよね?その属性の一番強い精霊」
タケルの言葉に、ロウはコクリと頷く。
「精霊王に次いで強い力を持つ精霊。それが属性王じゃ」
「で、その属性王とアレクタリスがどう関係しているんですか?」
ヒカリが聞くと、ロウはフム。と頷き、
「おぬしたちはアレクタリスに宝石がはまっているのを知っているか?」
うん。と太一は頷く。
アレクタリスを腰から外し、テーブルの上に置いた。
そして柄の部分を指差し、
「ココにはまっていたのだろ?」
「あ、ホントだ。窪みがある。・・・でも宝石なんてないよ?」
「うん。『風の境目』壊した時に、ピカって光った後に、『風の境目』に向かって飛んでいったんだ」
でも。と空がロウに聞く。
「あの宝石は、光、闇、水、火、風、地、時、元素(無)を象徴している宝石を飾ってあるんじゃないんですか?」
その問いに、ロウは首を振る。
「民間ではそう伝わっているようじゃが、実際は違う。あの宝石は、属性王を閉じ込めているウツワなのじゃよ」
「・・・属性王を閉じ込めるための・・・」
「ウツワ・・・?」
「いや。『閉じ込める』と言う表現は適切ではないな。あれは属性王をアレクタリスに変えるための宝石なのじゃ」
ロウ曰く、こうだ。
精王剣アレクタリスは、その名の通り精霊の剣。
属性王である光、闇、水、火、風、地、時、元素(無)は、神の命により、その身を宝石に宿らせ、アレクタリスの一部になった。
「云わばその刀身は、宝石となった属性王が居ないと、ただの剣なのじゃよ。太一が所持しても回復せんのはそのためじゃ」
「・・・じゃあ・・・」
丈が真剣な眼でロウを見る。
「その属性王の宝石が無くなると・・・どうなるんですか・・・?」
「・・・精霊たちの均衡が崩れていく・・・」
神はまず最初に精霊たちを創った。
その精霊たちが協力しあい、今のこの世界が成り立っている。
神界だけではない。精霊界はもちろんのこと、人間界、魔界に至るまで、精霊は無くてはいけない存在なのだ。
そんな中、精霊たちが均衡を失ってしまえば・・・。
「でも、精霊王が・・・」
ロウは頭を振る。
「精霊王は、属性王の代わりに均衡を司っているんじゃ。そんな中、属性王がアレクタリスから外れてしまい、更に均衡が崩れてしまった。
・・・・・・精霊王は今のこの状況を保つのに精一杯なんじゃよ」
「・・・でも・・・なんで今更・・・?」
う。とロウは言葉に詰まる。
「知らなかったんだよ。風の精霊が教えてくれるまで」
黙ってしまったロウの代わりに、ヤマトが苦笑して答える。
「均衡が崩れてるって言っても、そう簡単には症状は起きないらしいんだ。
例えば降水雨量の少ないところに、毎日大量な雨が降ったりすることから始まるんだそうだ」
「でもさぁ・・・それって逆に良いことなんじゃねぇ?」
「モノによってはな」
太一に、ヤマトは苦笑しながら答える。
「でも、逆に雨が降っていた地域に雨が降らなくなってしまったら?・・・その土地は砂漠化してしまうだろうな」
「なるほどね」
空が太一の代わりに答える。
「特に被害を受けるのは精霊界だ」
ヤマトは更に続ける。
「均衡の源は精霊界だ。そして、一番その加護を受けているのは」
「・・・人間界・・・」
コクリとヤマトは頷く。
精霊たちは、故意に消されたりしない限り、自分で生きる術を持っている。
属性王が居なくても、精霊王が居るので、精霊界に居る精霊たちは生きていける。
問題は他の世界の精霊たちだ。
「・・・崩壊を止めることは出来ないんですか?」
「出来る。そのためにキミたちを呼んだのじゃ」
ロウは8人をグルリと眺める。
「キミたちには属性王の宝石を集めに行ってもらいたいのじゃ」
・・・間。
「ぇええー―――っ!!」
最初に反応を見せたのはミミだった。
耳元に近い距離で大声を出された光子郎は、目を回してしまった(ちなみにもう片側に居た空はしっかり耳を塞いでいた)
「でも、探すって言ってもどうやって探すの?」
「場所じゃ」
「場所?」
ロウの言葉に、ミミはクリッと小首をかしげる。
「精霊たちはそれぞれ自分の属性にあった場所を好む。水ならば滝、火ならば火口のようにな」
「・・・でも・・・探すって言っても・・・ねぇ?」
4世界あるなかのどこを探せと言うのか?
確かに天使は、神の許しをもらっていれば、他の世界に降りることを許されている。
しかし、1世界は果てしなく広い。
一番小さいので人間界。魔界に至っては、どのくらいの広さなのかも見当がついていない。
「それはわかっている」
ヤマトの言葉に、7人は注目する。
「下の世界・・・人間界だ」
「ふぃ・・・。とりあえず魔界じゃなくてよかった・・・」
ミミがはぁっと一息つき、ジュースを飲む。
「・・・じゃあ行かないとな」
太一がアレクタリスを持ち、席を立つ。
「ちょ・・・!太一・・・!!」
続いて空も席を立ち、太一を止める。
「何で太一が行かなきゃいけないのよ!」
「なんでって・・・アレクタリスを制御できるの、オレだけだろ・・・?」
確かに、アレクタリス本体が無ければ、属性王の宝石を回収するのは無理だ。
「今回のは別に種族間の戦いじゃねぇし。空たちには直接的に関係しないし・・・無理に下に降りる必要、ないだろ?」
その時、ミミがハーイ!と元気良く手をあげた。
「ミミ、前から人間界って興味あったのvミミも行くーv」
どうやらミミはもはや行く気マンマンらしい。
「ね、光子郎くんも行こうよ〜」
「・・・そうですね・・・」
ミミに誘われ、光子郎はふむ、と考える。
「前から本を見ていて興味はありましたし・・・」
「じゃ、行きましょ〜♪」
ワァイvとミミはご満悦だ。
「・・・わかったわ。私も行くわ・・・」
このメンバーでは心配と踏んだ空も手を上げる。
「あ、じゃあ僕も。人間は法術も魔術も使えるんだって聞いて。一回見てみたいと思ってたんだよ」
「私も・・・行ってみたいなぁ・・・」
ヒカリがポソリと呟くと、ヒカリちゃんが行くなら僕も。とタケルも手を上げた。
残るは。
太一がじぃっとヤマトを見る。
ヤマトはそんな太一の表情に苦笑する。
「もちろん行くさ。精霊たちに一番詳しいのは俺だしな」
「・・・だな♪」
ヤマトがそういうと、太一は満面の笑みを浮かべた。



☆NEXT☆


コメント

・・・やや・・・矛盾箇所が・・・(ガクリ)
今まで固定されていなかった太一たちの服ですが、これからは夢の旅服☆を着せてみたいです〜(笑)
ロウが御茶目になっていく(大笑)