flying 〜The sky story〜 18

「・・・で、これからどうする?」
とりあえず織斐を出た太一たちだが、次の精霊の情報が途絶えてしまった。
織斐のものたちからも、地精霊以外の情報は得られなかった。
元々、宝石が取れなくなり、商人達の行き来も少なくなり、自分たちも日々の生活に忙しい。
そんな状況下では、確かに他の事には眼を向けられないだろう。
ヴォーギたちが引き止めてくれたが、ただでさえギリギリの状況で暮らしているのに、更に負担をかける訳にはいかない。
とりあえず織斐から近い街への行き方と、弁当を貰い、再び属性王探しの旅に出たのだ。
「・・・どうするったって・・・これから行く、厘佳(リンカ)の街の情報に期待するしかねぇだろ?」
「まぁねぇ・・・」
うーん。と八人は頭を悩ませる。
四世界で一番面積が狭いと言ったって、翼も使えない、地理には不透明、挙句に属性王の居場所さえも全然掴めていない。
さすがに泣きたくなる状況だ。
「とりあえず厘佳の街に行ってみよう」
「何も情報得られなかったら?」
タケルに問い返され、ヤマトは少し考えるように顎をしゃくった後、
「そうしたらまだ行った事の無い大陸に行ってみたらどうだろう?
情報は、その大陸に集中する事が多いからな。今よりかマシになるんじゃないか?」
頭脳班の光子郎と丈も、その意見に賛成だとばかりに頷く。
「そうですね。そうしましたらティオール大陸に行ってみましょう。あそこは一番国土の広い所ですし」
地図を見て、光子郎が案を出す。
「ま、厘佳の街に何も無かったらね」
すっかり他大陸に移動する気マンマンの仲間に、空は苦笑を浮かべた。

―――――――『ソレ』は急に起こった。
「な・・・っ!何なの・・・これっ!?」
「・・・ど、どういう事っ?!」
太一たちはうろたえる。
そのはず、いきなり周りの景色が歪み始めたのだ。
マーブル模様を作るかのように、周りがグニャグニャとし始め、次第に渦を巻き始めた。
「き・・・気持ち悪い・・・」
三半規管がやられたらしく、女性陣が先に膝を折り、太一たちも耐え切れないと言う風に膝をつく。
「な、何なんですか・・・いきなり・・・っ」
景色は更に歪んでいく。
「結界を・・・!」
「ダメだ!さっきから詠唱してるけど、何か知らないけど精霊が集まんないんだ!」
焦ったように太一はもう一度、精霊結界の詠唱を唱え始める。が、すぐに風船が弾けるようにパンッと四散してしまう。
「き・・・もちわるい・・・」
「ミミさん・・・っ」
駆け寄ろうとするが、光子郎も途中で転んでしまう。
平衡感覚が保てないのだ。
「・・・や・・・まと・・・」
太一も、法術を唱えられる余裕も無くなり、手をついてしまう。
ふらり、と身体が揺らぐと、すぐ横に居たヤマトが支えてくれた。
―――――・・・意識はそこで途絶えた。

葉の擦れる音がした。
サワサワと言う耳に心地良い音に、太一はふと眼を開けた。
と、すぐ傍にヤマトの顔があり、少し照れる。
淡く微笑んで、自分の置かれている状況を考える。
・・・何故自分達は今、こんなところで寝転がっているのだろうか?
太一がバッと起き上がると、光子郎や空、タケルなどが起き上がり、呆然としていた。
「光子郎・・・っ」
「あ・・・太一さんっ」
駆け寄ろうと立ち上がろうとすると、フラリとまた地に沈んでしまった。
まだ先程のダメージが回復していないのだ。
太一はまた何とか体制を立て直すと、すぐ傍に居るヤマトを揺り起こす。
幸いヤマトはすぐに眼を覚まし、太一の方を見た。
少し呻き声を上げながら起き上がると、ここは?と聞いてきた。
「わかんねぇ・・・何であんな事起こったのかも・・・」
ミミ、丈、ヒカリも何とか起き上がった。
ダメージの大きい皆に、法術をかけようとして、詠唱を唱えた途端。
太一に向かって『何か』が飛んできた。
「プ、プロテクションっ!」
間一髪結界を張ったが、一瞬のち、それが壊された。
ヤマトは太一を突き飛ばすと、掌から小さな火球を出し、ソレに向かって投げつけた。
太一の結界で力が弱まっていたソレは、ヤマトの火球に当たり、誘爆した。
「ヤマトっ!」
さぁっと太一は顔を蒼くする。
煙を掻き分け、急いで近寄る。
・・・そして、金の髪を認め、抱き寄せた。
「ヤマト・・・」
少し傷付いたその顔に、回復法術を、また邪魔されない内にかける。
「太一・・・大丈夫だ・・・」
「バカ・・・また・・・また失うって思ったじゃねぇか・・・っ」
ポロポロと、涙が零れ、ヤマトの頬に落ちる。
そっとヤマトは太一の頬を拭ってやり、謝罪する。
「お前等」
ふと響く声があり、太一たちはそちらの方に顔を向ける。
そこには、一人の『ヒト』が立っていた・・・いや、浮かんでいた。
青年・・・二十歳くらいの、細身とは言えないが、がっちりと言う風も無い男。
殆ど黒に近い紫色のマントを羽織り、太一たちをねめつけている。
「お前は・・・!?」
青年は答えない。
「おい・・・お前は一体何なんだ!?」
「ここに飛ばしたのも・・・貴方の仕業なんですか!?」
しかし青年は、答える様子も無く、すっと太一を指差した。
「・・・え・・・?」
「お前等だな。属性王を再び集めんとしてる者等は」
ヤマトも起き上がり、不思議そうに青年を睨む。
「・・・なんでその事を知ってるんだ・・・」
今現在アースに居る者でその事を知っているのは、天使堕天使の八人に、織斐のヴォーギとキアノ。それに神界のロウにサーナにカインにトーラだけだ。
神界の者達が教える筈が無いし、ヴォーギやキアノも言う筈が無い。
仮に言ったとしても、この短期間で、太一をも凌ぐ力の持ち主を捜せるはずも無い。
「諦めよ」
青年は太一たちの問いに答えずに、言葉をつむぐ。
「お前等にその資格も力も無い。即諦め、神界に帰るが良い」
「な・・・にそれ・・・っ!」
カチンと来たのか、ミミが金切り声を上げる。
次の瞬間にはミミの背に翼が浮かび、詠唱を唱えた。
「アブソリュート!!」
ミミの必殺の一撃は、何故か発動しなかった。
「え・・・なんで!?」
特に『アブソリュート』は、ミミがもっとも得意とする魔術。失敗する事はまずありえない。
「もう一度言う」
青年は溜め息をつくように、言葉を吐き出した。
「帰せ。邪魔だ」
「帰らない!」
太一は大声で反論した。
初めて青年の表情に変化がある。
眉をヒクリと動かし、太一を睨んだ。
「オレたちはロウ様達と、属性王を取り戻すって約束したんだ!それに・・・早くしないとバランスが崩れちまう!」
「・・・どうしても捕まえると・・・?」
「取り戻すっ!」
「・・・我をも倒せない奴等がか?」
莫迦にした様な笑みを口元に浮かばせ、太一は口篭った。
「どうやら少しばかりお前等には力の差を見せぬといけぬらしい」
すると青年は、パチリと指を鳴らした。
「・・・何っ!?」
そうしてまた景色に変化が起こる。
先程の様に歪み始めたのだ。
「う・・・くそ・・・っ」
わざわざ相手の手に落ちたくも無いが、この状態では何とも出来ない事はついさっき経験済みだ。
そうして、相手の姿も霞み始める。
「まて!・・・お前は、何もんだっ!!」
太一は必死に叫ぶ。
青年と眼があうと、静かに青年は口にした。
「―――――・・・ゼクンドゥス・・・―――――――」



☆NEXT☆


コメント

超唐突な展開ですみません(汗)
これからは今までとはちょっと違う展開になってきます。
それは・・・秘密v(・・・)