flying 〜The sky story〜 11

その夜。
女子と男子で部屋を別け、ベットを部屋にそれぞれ一つずつ入れてもらった。
太一たちは一人一つでは寝れないので、ベットに太一と光子郎、ヤマトとタケル、少し小さめのベットに一番身体の大きな丈が寝ることになった。
少し古めの窓は、外からの風でカタカタなっている。
「・・・お兄ちゃん、起きてる・・・?」
背中合わせに寝ているタケルが、本当に小さな声でヤマトに話し掛ける。
「・・・ああ・・・外・・・部屋の前に誰か居るな・・・」
ヤマトもタケルも目を閉じたまま、会話をする。
「ヤマトたちも気付いたか?」
そこで太一たちの声も混じる。
殺気は隠しもしていなかったので、太一たちも起きていた事には驚かなかった。
「どうする?魔術でやっつけちゃう?」
「いや・・・入ってきていきなり食らわせるのも危険だ。・・・建物が古いしな・・・」
「ミミさんたちが心配ですね・・・」
光子郎の『心配する』は、身体的なことよりも、『ミミが切れて大魔術を使わないか』という事だ。
「まぁとりあえず・・・この状況を何とかしようか・・・」
魔術、法術が無くても勝機は十分にある。
太一たちが会話を止めると、少し立ってからひとつしかない扉がカチリと、極力音を消して聞こえてきた。
寝てるか?とポソポソ話す声が聞こえる。
金属の擦れる音が微かに聞こえたので、剣が何かを持っているらしい。
「いいかい、布団を捲ってすぐに眠り薬を嗅がせるんだよ?」
その中に、少し野太い女の声も混じる。
光子郎は溜め息をついて、気付かれない程度に身体を構える。
・・・静かに、布団が捲られた。
「残念☆」
そう言ってタケルは、両手を耳の横に置くと、思いっきり足を垂直に伸ばした。
「っぐ・・・っ」
まさか起きているとは思っていなかった男は、いきなり顎に重い一撃を食らわせられ、床に沈んだ。
「もしかしてとは思ってましたが、本当にあなたもグルだったとはね・・・女将さん」
光子郎は護身用にと手放さなかった短剣を逆手に構える。
女将は唖然とした後、悔しげに喉を鳴らした後、男たちに命令を下した。
「構うこた無いっ!多少怪我さしてでもトッ捕まえなっ!!」
男たちは気合の大声をあげると、太一たちに向かっていた。
太一と光子郎は、短剣と武道でどんどんと倒していく。
金属音と、悲鳴。
傷をなるべくつけないように、出来るだけ気絶させながら、手加減を忘れない。
ヤマトとタケルは長剣。丈は戦いながら、太一たちの倒した男たちを一纏めに隅の方へ寄せていく。
「・・・くっ」
劣勢と判断し、1階に下りようとするのを、太一が顎の裏側に短剣を突きつけて押しとどめた。
手を使えないように、背中で捻る。
「・・・切られたくなかったら、大人しくしろ」
女将がヒッと喉を鳴らし、大人しくなった。
そのまま身体を、扉から部屋の方へ向ける。
「この人がお前たちの親玉だなっ。どちらにしても勝機は無い!大人しく武器を捨てろっ!」
「あっあんたたちっ!早く戦うのをお止めっ!ああああ、あたしの首が吹っ飛んじまうよっ!」
太一が声を張り上げて言うと、女将が血相を変えて男たちに命令をする。・・・と、乱闘が徐々に止んでいった。
「さて」
大人しくなった男たちに、ヤマトたちで手套を食らわしていく。
強めに叩き込んで行くので、男たちは泡を吹いて床に伏した。
もっとも、4人の行動が素早いので、逃げたりする暇などなかったが。
「丈、光子郎」
ヤマトは首を空たちの居る部屋の方へとしゃくった。
丈と光子郎は頷いて部屋を出る。
出て行ったのを見ると、太一は女将を離して、扉を締める。
これなら、こちらから女将たちが逃げようとするのにも、援軍が来るにしても、幾分かの隙が出来る。そこを叩くのだ。
「で、これは何なの?」
タケルは長剣を男たちにちらつかせる。
男たちは一様として、女将の方を見ている。
ヤマトが、剣を男たちに向けたまま、後ろの方に居る女将を睨む。
気圧されるように、女将は舌を絡ませながらしゃべりだす。
「あ、アンタたちを売りに出そうとしたのよっ」
「・・・売り?」
太一が首を傾げると、ヤマトが、奴隷市場に出す事。と教えてくれた。
「アンタたちは顔も整っているし、賢そうだ。さぞかし良い値段で買ってくれるだろうと思ってねっ」
開き直ったのか、女将は饒舌になる。
太一がムカっとすると、扉がコンコンと叩かれる。
「太一」
丈の声がしたので、何?と聞く。
「・・・空くんたちが、居ない・・・」
『――――っ!?』
これには、さすがに太一たちも驚きを隠せない。
空たちの部屋とは少し間があるので、物音は響きにくい。
しかし、空が気配を感じられないはずがないのだ。
「・・・おいっ」
太一は女将の襟首を掴む。
女将は顔を真っ青にさせながらも、笑みを表面に作った。
「女は特に上等だからね・・・眠り煙で先にふっかい眠りに落としといたのさ」
外道め。
太一は歯軋りをする。
本気で一発殴りたかったが、さすがに女なので、何とか堪えた。
と、女将は更に聞いても居ない事をしゃべる。
「今ごろ馬車の中さ。明日には市場に着くからね。
大概奴隷は性奴隷になるのさ。金持ちのジジィとかにいいように」
「ダマレ・・・ッ」
太一に強く睨まれ、女将は押し黙る。
怒りに太一が震えていると、あの。と光子郎も入ってきた。
「あの・・・太一さん・・・」
光子郎が恐る恐る話し掛けると、太一はゆっくりと振り返った。
最初、悲しげに光子郎に注がれていた視線は、次に驚きに変わる。
光子郎の後ろに入ってきた、大柄の男。
「ヴォーギ・・・っ!?」
最初に声をあげたのは女将だった。
ひっくり返ったような、悲鳴じみた声に、恐れからの悲鳴も混じる。
そう。光子郎の後ろから現れた男。
それは、女将の夫にして、この宿の主たる男だった。



☆NEXT☆


コメント

遅々と進む・・・(汗)
ようやく書けて一安心です〜(苦笑)
これからはも少しヤマ太を目立たせたいなぁ・・・うーん。
ノーマルカップリング書くのも楽しくってー(笑)