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flying 〜The sky story〜 12 ザワザワと、捕まえた男たちからもざわめきが起こる。 太一とヤマトは眼を細めて、男を睨むように見つめる。 「ヴォーギ・・・アンタ、娘っこたちを売りに言ったんじゃないのかいっ!?」 女将は力の抜けた腰を引きずりながら、男・・・ヴォーギに近寄る。 そして、突っ立って居るヴォーギに掴まりながら立ち上がり、襟首を引っ張る。 「アンタ・・・っ。あいつらをどこにやったのさ!!どーしてここに居るんだい!!」 ヒステリックに女将は喚く。 ヴォーギは、毛むくじゃらの顔を顰め、揺す振っている女将を押した。 「・・・っ!!」 女将は尻餅をついて、それでもヴォーギを睨む。 太一たちは、その様子を黙ってみている。 「キアノ。俺ぁもうこりごりだ・・・人様売るなんてな・・・」 キアノ・・・それが女将の名前なのだろう。 キアノは眼を見開いた後、金切り声を上げた。 「今さら何言ってンだいっ!これ以外に、あたしたちはどーやって生活すりゃいいってんだっ!!」 「だからと言って人を売って良いと思ってんのかっ!?」 女将よりも野太く、空気を震わせるような声に、キアノはヒッと悲鳴を上げて黙った。 その大声に、太一たちも驚く。 キアノが大人しくなったのを見届けると、ヴォーギは太一たちの方を向いた。 「・・・あんたたち・・・ホントにすまねぇ事しちまったな・・・」 ヴォーギはそう言って、土下座をした。 「え・・・っ・・・ちょ・・・っ?」 いきなりの行動に、太一は思わず声をかけてしまう。 「キアノが立てた作戦とは言え、協力していたのには変わりねぇ・・・本当に・・・すまえねぇ事、しちまった・・・」 太一は光子郎たちを仰ぐ。 光子郎たちも、どう対処して良いのか困ってるみたいだ。 「あの・・・とにかく顔を上げてください」 太一に言われて、ヴォーギはようやく顔を上げる。 すっかり毒気を抜かれてしまった。 「それで・・・ヒカリ・・・オレたちの仲間は・・・」 ああ。とヴォーギは太一を見る。 「安心しろ。この街からちょっと離れた所に居てもらっている」 それを聞いて、太一はようやく安心する。 迂闊に信じるのもどうかと思ったが、何故かこの男が嘘を言ってるように思えなかった。 太一の前に伏しているヴォーギのところに、ヤマトもやってきた。 「ヤマト・・・」 「・・・ああ・・・」 不安そうに見てくる太一に笑みを返してやり、ヤマトはヴォーギに手を差し出した。 驚いたのはヴォーギだ。 「・・・事情、話してくれるんだろ?」 ヴォーギは、笑おうとしてうまく出来ず、複雑な・・・それこそ泣く様な表情を作った。 そして大きく頷いた後、ヤマトの掌に、マメだらけのゴツい手を重ねた。 麻汝羅大陸の者は、横文字ではなく『漢字』と呼ばれる名前を持つらしい。 『ヴォーギ』というのは字(あざな)らしく、本名は『戊魏(ぼぎ)』で、『キアノ』は『紀亞廼』と書くらしい。 軽い自己紹介を終え、戊魏・・・ヴォーギは顎に手を乗せ、語りだした。 キアノは憮然として、後ろの柱に腕を組んで立っている。 「そもそもの始まりは1年くらい前の事だ」 荒れた部屋を形だけ元に戻し、太一たちは1階の食堂に腰を下ろした。 1年前。 その言葉に、5人は顔を見合わせる。 「織斐は鉱物に恵まれた土地だ。宝石なんてゴロゴロ取れてな・・・街も人も土地もとっても豊かだったんだ・・・」 それが・・・と重苦しい溜め息をつきながら吐き出す。 「まったく宝石が取れなくなっちまった・・・。いつもゴロゴロ取れるはずの岩をいくら掘っても屑ばかり。 だがそれ以上に困ったのは、岩がゴロゴロおっこってくる事だ。 俺たちが山に行って掘ろうとすると、図ったように岩崩れが起こる。 特にこの街は山に近い。頻繁に行ってたら俺たちも街も死んじまう・・・。 しかしそれじゃ生活は成り立たない。ここら辺が危険とわかったら、訪れる観光客も宝石商人たちもぱたりと止んじまった。 ・・・だから・・・」 「あたしが人売りをやろうって言い出したのさ」 キアノが妬けのように言い捨てる。 「特にあたしたちゃ客有っての商売だ。観光客も商人たちも居なけりゃあたしたちゃ飢え死しちまう・・・それで人売りを始めたのさ」 太一が睨むが、キアノは話すのを止めない。 「たまに来る客どもをアイソ良く出迎えて、ネンネしてる間にヒッ捕まえる。朝起きりゃ自分は売られる運命ってワケだ」 「キアノ・・・っ」 ヴォーギが咎めるが、キアノは鼻で笑い、更に続ける。 「あんたたちのようなぼっちゃんじょーちゃんにはわかんないだろうね。あたしたちの気持ちなんて・・・」 ヤマトがガタリと音を立てて席を立つ。が、それを止めたのは、他でもない太一だった。 「・・・わかんないね」 キアノが眉をひそめる。 「自分たちが一番哀れだって悲観して、結局無関係な人たちを巻き込むやつの事なんて」 キアノは大声を出そうと口を開き、一瞬耐えた後に、また嘲笑めいた顔になる。 「そう言う良い方できるから、ぼっちゃんじょーちゃんだってんだよ」 「じゃあ、何で逃げなかった?」 太一の言葉に、キアノは驚いた顔をする。 「この土地を捨てて他の土地に移れば、いくらでも生活の仕方はあるはずだ。なのに、何でこの土地を捨てなかった?」 キアノは答えない。太一が続ける。 「好きだからだろ?この土地が」 太一は立ち上がって、キアノの方へ歩いていく。 「捨てられなくて、それでも生活には困る。挙句の果てに考えたのが人売り。・・・あんただって悩んでたはずだ。罪悪感があったはずだ。 ・・・大好きなこの土地を罪で汚す事を、あんただって拒んだはずだ」 太一が目を逸らさずに話していくにつれ、キアノの唇が振るえ、遂には涙がこぼれた。 キアノは急いでソレを拭うと、奥に行ってしまった。 太一は溜め息をつく。何であれ、泣かれるのはつらいものがある。 「気にすんな。あんたが言った事はホントの事だ」 「・・・うん・・・」 太一はヴォーギに言われ、椅子に座り直す。 「・・・アレの言う通りだ。生活スンには金が要る。人を売りゃかなりの金が入る。それで何とか今まで凌いで来たんだ。 ・・・悪い事だとは分かっていた。旅人たちにも、ホントに申し訳ねぇとも・・・」 だが。とヴォーギはつらそうな声を上げる。 「・・・そんな事してでも俺たちゃこの織斐に居たいんだ。・・・ここは何ものにも替えられない。一つしかない俺たちの生まれ故郷で死に場所だ」 太一たちは何も言えない。ただの欲望目当てなら、殺しまでしなくとも、それなりの仕打ちはする。 「・・・アレ・・・キアノも出来れば責めて欲しくはねぇんだ。あんたらには印象最悪かもしれないが、俺の妻だ。・・・こんな俺と一緒になってくれた、掛け替えの無い女なんだ・・・」 それでも。ヴォーギの口調はつらそうだ。ヤマトだけではないが、ヴォーギの『大切の想う気持ち』はとても強く理解できる。 「だが、俺は耐えられなかった・・・あんたたちの仲間に、これくらいの髪の長さの娘っこ居るだろ?」 ヴォーギはそういって、肩口くらいに手をやった。 セミロングの髪は空の事だ。 「空くんが・・・どうかしたんですか・・・?」 丈が我慢できずに話し掛ける。 「眠り煙を薫した後に部屋に入ったら・・・空・・・とか言うのか?そん娘が・・・足に針さしてフラフラなのに立って、俺たちに向かってきたんだ。・・・後ろの仲間を助けるためにな・・・」 ヴォーギは顔を両手で覆う。 「耐えられなかった・・・そんな姿見たら・・・もう・・・耐えらんなかった・・・」 それでヴォーギは、とりあえず空たちを捕まえて、馬車に乗せたらしい。 「で、空くんたちはどこにいるんですか?」 ヴォーギは、覆っていた手を外す。 太一たちに眼をやってから、閉じた。 「・・・ここから南にある山・・・楫汰(かじた)の山の麓で、馬車に乗ってもらっている」 コメント 次らへんで精霊さん出てくるかとー(笑) ちなみに、なぜ太一たちは漢字なのに麻汝羅以外では漢字の名前が無いんだとか言う突っ込みはしちゃ駄目v(・・・) 元のデジが漢字なので・・・そこら辺の矛盾は多めに見てやってください(汗) ところで、漢字の名前考えるの楽しいです〜(大笑) |