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3 『困惑』
「おいイワン!ボリスを知らないか!?」 ここ数日見ているリーダーの怒っている姿に、イワンと近くに居たセルゲイは、あっち。と中庭の方を指差した。 ユーリは睨むのをイワンから指差された方に変えると、肩を怒らせて、中庭の方にツカツカと早歩きで行ってしまった。 「・・・ユーリ、苦労してんなぁ・・・」 自分がユーリの立場だったら、ボリスの世話など真っ先に諦めている。 「まぁユーリの性格から言って、リーダーとして、練習をサボるヤツは気に入らないのだろうな」 セルゲイも、思わず同情してしまうくらい、ボリスは問題児なのだ。 イワンとセルゲイは、同情の眼差しを小さくなっていくユーリの背に向けた。 「ボリス!」 声を荒げてユーリは叫ぶ。 「〜〜〜まったく・・・!!」 キョロキョロと左右を見ながらボリスを探す。 練習はとっくに始まっている。 高い競争率の中、1軍に上がったと言うのに、ボリスは以前同様まったく練習に参加しない。 別に誰に命令されて探しているわけでもないのだが、1軍に上がったのならばそれなりに責任というものがついてくる。 自分たちは常に最強・・・勝者でなくてはいけない。 そのために練習は不可欠だ。 自分だってボリスを探す暇があれば身体を鍛えたい。 ボリスが見つからないのとで、ユーリの怒りは2重に膨れていた。 と、ユーリの足がとまり、次に全速力とは言わないものの、かなりのスピードで走り出した。 止まったのは、大きな樹の下・・・。 「・・・・・・」 ユーリは上を見て、静かにシューターを構える。 ――――ッドゴンッ!! 「ぅっわわわわっ」 悲鳴の次に、ボリスが樹から落ちてきた。 白い雪に身体が埋まり、サラサラとした雪が宙を待って、ユーリの方にも飛んで来た。 「あたたたた・・・相変わらず無茶するなぁ・・・ユーリ・・・」 まだ樹の幹にめり込んで回転するウルボーグを手に戻し、ユーリは尻餅をついているボリスを見下ろした。 「・・・痛い思いをしたくなければ練習をサボるな・・・」 「別になんにも恐くないよユーリ。その声、逆に可愛すぎ」 「・・・・・・っ!」 コンプレックスでもあるソプラノに近い声の事を言われ、ユーリの頬がかぁっと紅くなった。 「待った・・・!ユーリ待った!ベイブレードを人に向けてはいけません!!」 自分のこめかみにウルボーグの標準を当てられ、ボリスはユーリを制した。 今にも本当にワインダーを全力で引きそうなユーリに必死で謝り、なんとか命を守った。 「・・・ほら・・・馬鹿をやっていないで本当に練習に戻るぞ」 ウルボーグを戻し、ボリスに立つように言うと、ボリスはニッコリと笑顔で 「嫌v」 「お・・・まえなぁ・・・っ!!」 ユーリが激怒すると、ボリスはよっと立ち上がったので、ユーリは見下ろすのから見上げるのにかわった。 「相変わらずちっちぇなぁ。ちゃんと牛乳飲んでるか??」 「お前!馬鹿にするな!」 「そうそう。練習よりもいいもん見してやるよ」 ユーリの怒りをサラリとかわし、ボリスはひょいっとユーリを肩に担いだ。 ユーリの視界が反転し、真っ白な地面とボリスの下半身がかわりに目に入ってきた。 「!!馬鹿!離せ!離さんか!!」 「うん。予想通り。軽い軽い」 ユーリの3大コンプレックスを次々と言われ、ユーリは本当にウルボーグで抹殺してやろうかと思った。 「っわ!」 「ほら。じたばたするな〜」 いきなり地面が遠くなる。 ボリスの足が動くのがわかった。 樹をまた登り始めたのだ。 「おい!降ろせ!」 「いいのか?今手ェ離すと顔面から地面にゴッツンだぞ?」 「・・・・・・っ」 受身を取るには地面は近すぎる。 このまま落ちるには地面は遠すぎる。 ユーリは仕方なく、ボリスのされるがままになった。 「ほら、ついた」 ようやく太い枝に下ろされたとき、ボリスは少し汗の浮かんだ顔で、ユーリにニッコリ笑いかけた。 「今日は久々に雪が止んでるからな。良く見える」 ボリスは街の方を指差した。 教会の高い階から見るのとも、下から見るのとも違う。 針葉樹林特有の鋭い葉から見える町並みは、どこか油絵に似ていた。 「偽物みたいな風景だろ?」 ボリスが幹に体重を乗せながら、ユーリと同じところを見る。 ユーリはその風景からボリスに視線を移動させた。 「だけど、俺は大好きだ。教会から見るよりも、下から見るよりも。葉の間から見るこの風景は、これだからいいんだ」 ユーリは少し驚いた。 破天荒で、何にも考えていないヤツだと思っていた。 ・・・だけど・・・。 「・・・お前は何を考えているんだ?」 「いや?なーんも?」 ニヘラと笑ったその顔を見ると、何故がユーリの中の重石(おもし)が緩んだ。 「お前はヘンなやつだな・・・」 「・・・・・・」 と、ボリスが驚いたような不思議な表情で自分を見てきた。 「?どうした?」 「・・・いや・・・笑ったなって・・・」 「?」 ボリスの言っている意味がわからず首をひねると、ボリスがぱっと破顔した。 「ユーリ!お前笑えたんだな!」 「・・・あ・・・」 そう。ユーリは笑ったのだ。自然に。 自分自身気付かなくて、ユーリは少し驚く。 『笑う』なんて、本当に久々にして、自分にもまだそういうことが出来るんだ、と思った。 「な、もっかい笑って!」 「ば・・・っ!出来るか!!」 ユーリは顔を紅くして、樹から飛び降りた。 スタっと飛び降りると、ボリスがまだ、なぁ〜とねだっていた。 「っくだらんことを考えてないでっ!お前もさっさと練習に合流しろっ!!」 ユーリはそういうと、さっさと走り去っていってしまった。 「おーい、ユーリぃ」 届いているはずの声を無視して、ユーリは更に走っていく。 「・・・面白いヤツ・・・」 幹に座り込み、ボリスはユーリの姿を眺める。 そうして完全に見えなくなると、ポケットからファルボーグを取り出した。 途端、ボリスの楽しそうな表情に、苦渋が混じる。 「練習ね・・・」 ぎゅっと、その冷たいモノを握り締め、先程の風景をまた眺める。 何故かユーリと一緒に見た時よりも、冷たく見える。 「・・・お前と練習出来たら、最高なんだろうな・・・」 目を閉じると、先程のユーリの笑顔が浮かんできた。 普段のあの硬い表情からは想像できない、歳よりも幼い笑顔・・・。 ・・・・・・惹かれる、心・・・・・・。 ボリスは目を開け、下に視線を落とした。 白い雪の上には、先ほど自分たちが居たという、じゃれ合った後がある。 なんとなく嬉しくなり、ボリスはファルボーグをまたしまいこむと、ユーリがやったように枝から飛び降りた。 そうして、ユーリとは反対の方向に歩き始めた。 コメント ちなみにうちのボリスさんはユーリよりも背ぇ高いです(マイ設定) うん。でも結構掴めてきたかも。 ところでこれ、岡崎律子さんの曲を聴きながら書いているんですけど、かなり幸せな気分になれますv 最近の好き歌手さん〜v みなさんも是非聞きながら読んで見て下さい(大笑) ところで面白いくらいユーリとボリスの絡みを書くのが楽しい・・・(笑) |