one-sided love 1

気付かれないって事は、もしかしたら嫌われるのよりもツライかもしれない。
・・・だって、夢を見たり、期待したり。
結局ソレは自分への重石(おもし)となって返って来るんだから。
嫌われているのなら、いっそ吹っ切れて『友達』にはなれるかもしれない。
でも、嫌だ。
『嫌い』と言われないのなら今の位置に居たい。
・・・・・・だけど、やっぱり物足りないんだ・・・。

炎山は副社長の地位についている。
前はアメロッパであったし、今もアジーナの方へと商談で出かけている。
元々炎山と恋人関係にある熱斗の落ち込みも激しいが、そのナビ、ロックマンも無関係とは言えない。
・・・ロックマンは、炎山のナビ、ブルースの事が好きなのだ。
片想いだからこそ、ツライものもある。
それに、今は自分よりも熱斗を心配してあげたい。
自分は会おうと思えばネットを通していつでも会える。
現に、2、3日に送られてくる炎山からのメールを運ぶため、ブルースがロックマンのところまで来てくれる。
だから、今は熱斗の方が炎山に会えないのだ。
こう云う時、現実世界は大変だな。と思う。
何をするにも時間がかかってしまうからだ。
「でも、だからこそ得られるものが大きいって事もあるしな」
炎山からのメールを読みながら、熱斗が嬉しそうに言っていた。
炎山がアジーナに行ってから2週間。
ロックマンがPET内で本を呼んでいると、訪問者を告げるチャイムが鳴った。
熱斗のパソコンの内装をカスタマイズできるように、PET内も改装できる。
大体のPETは、家のように設定されている。
例えばメイルのナビ、ロールのPET内は可愛らしいパステル調の家で、PETプログラムはヌイグルミの形になっている。
ロックマンのPET内は、薄いブルーで統一されている。
それでも冷たい印象がないのは、そこにあるPETプログラムのおかげだ。
テーブルやソファーなどには生活観があるし、本棚にはたくさんのネットバトル関連の本がある。
それに、友達と撮った写真などが壁に飾られているからだ。
ロックマンはセキュリティを表示し、ウィルスじゃないかを確認する。
小さな画面の向こうには、紅いナビが憮然と立っていた。
「・・・ブルース!」
ロックマンは慌てて立ち上がり、玄関まで急ぐ。
あらためてセキュリティを解除し、戸を開いた。
「・・・遅い・・・貴様ナビならもっと迅速に行動しろ」
第一声がそれで、ロックマンはいささかムッとしたが、それでも会えた喜びの方が大きかった。
「久しぶり、ブルース!今日はどうしたの?」
「炎山さまからのメールを届けに来たに決まっている。他に何の理由がある」
ピシャッと言われたが、ロックマンはめげずにブルースに話し掛ける。
「あ、今時間ある?ちょっと寄ってかない?」
と言い、ロックマンは廊下への道を開ける為、身体をずらした。
「遠慮する。メールを届け終わったら、また仕事が待ってるんだ」
そう言われてしまえば、ロックマンがこれ以上ブルースを引き止められる理由はない。
「・・・そっか・・・」
さすがに沈んだ声は隠せなかったが、ブルースは気にせずにメールをロックマンに渡した。
「ありがと。仕事、がんばってね」
メールを受け取り、ロックマンは何とか笑顔をつくる。
「ああ」
そっけなくブルースは返事をし、踵を返した。
・・・もう見えなくなってしまった姿から目を離し、ロックマンは静かに溜め息をついた。

2日ぶりの炎山からのメールは、大いに熱斗を喜ばせた。
先程まであんなに沈んでいたのに、今は輝く太陽のような笑顔を浮かべている。
「炎山くん、なんだって?」
ナビもメールの内容は確認できるし、開けたその時点で内容を取り込むことも出来る。
だが、熱斗にも見られたくない内容のメールも無いわけでもないので、ロックマンはなるべくメールの内容をみないようにしているのだ。
熱斗はウキウキとしながら、メールの内容をロックマンに話す。
「えへへ〜!炎山がな、明日には帰って来れるってさ!」
熱斗は本当に嬉しそうにそういって、PETごとベットにダイブした。
「へぇっ!ようやく仕事終わったんだ!よかったね、熱斗くん!」
「おうっ!ありがとな、ロックマン♪」
オペレーターが嬉しいのなら、ナビだって無条件に嬉しい。
熱斗の落ち込みようを知っているからこそ、その喜びも2倍だ。
「で、熱斗くん、どうする?炎山に早速メールを書く?」
ロックマンが提案すると、熱斗はしばらく悩んだ挙句、いいや。と言った。
多分即答で『お願い』と頼まれると思ったので、熱斗の返事にビックリして目を丸くする。
「だって、今送ったって炎山の奴忙しいし疲れてるだろうし。
ロックマンだって、明日行った方がブルースと余裕もって話せるだろ?」
こういう、自分以外のものの事もしっかり考えてくれるのは、ロックマンの好きな熱斗の性格のひとつだ。
ロックマンがブルースの事を好きなのは、熱斗も知っているので、ロックマンは否定せずに、『ありがとう』と笑顔を作った。

「じゃ、これを炎山のトコに頼むな」
昨日の炎山のメールに書かれていた飛行機にちゃんと乗っているのなら、今はもう家に帰っているはずだ。
それをちゃんと確かめて(それまでそわそわそわそわしていたが)熱斗はロックマンにメールを渡した。
「帰りは遅くなってもいいからさ。たまにメールの受け渡しであってたっつっても、どうせブルースの事だからさっさと帰っちゃってたんだろ?」
「うんっ!」
ロックマンも照れて頬を染めながら、ブルースのいる炎山のPETへと急いだ。

ブルースの居るPETはシンプルなものだ。
PETにいるのに最低限のものしかないし、PETプログラムは最小化して、ちゃんとした形にはなっていない。
それでも、やはり伊集院家のナビ。
家具は一級品ばかりだ。
ロックマンは何度か深呼吸を繰り返した後、ロックマンは来訪を知らせるチャイムを知らせた。
間髪をおかずにブルースの顔が小さな画面に映った。
ロックマンが話そうと口を開くと同時に画面は消え、代わりに扉が開いた。
「なんだ」
率直にブルースは用件を聞く。
「あっあのね・・・っ」
預かったメールを出そうとすると、PET内に炎山の声が響いた。
「ブルース?」
「はい。ここにおります」
ロックマンと話すときよりも幾分も声に揚抑があり、炎山の声がかかってからはロックマンの方に見向きもせず、PETの画面へと向かっていってしまった。
・・・小さく向こうの部屋から話し声が聞こえる。
さすがに今の態度は堪えた。
あんなに、自分と炎山の間には距離がある。
――――――胸が痛い。
ロックマンは俯き、メールを持っていない方の手で、自分の胸を抑えた。
目頭が熱い。
もう、今はこれ以上ブルースと向き合う事も、話す事も出来ない。
ロックマンはメールを目に付く場所に置き、PETを立ち去った・・・。
・・・それから少しして、ブルースが再び戻ってきた。
しかし、そこにロックマンの姿があるはずも無く。
「・・・・・・?」
バイザーの奥で眉を潜め、ブルースは横の棚においてあるメールに気付いた。
送り主は熱斗と表示されている。
いつもはしっかりと手渡しするのに。と思いつつも、ブルースは炎山にメールを渡すために扉を閉めた。
・・・カチリと・・・。
何かが壊れるような音がした・・・。



☆NEXT☆


コメント

続いちゃった(笑)
前々から考えていたネタなんですが、なかなか形に出来なくって(苦笑)
ここまで書くのにも苦労しました(苦笑)
これは3話くらいで終わる予定です〜☆
ぜひお付き合いくださいv