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Roundabout 2 『どんなことがあっても、神田のことだけは覚えてたいな』 『・・・なに言ってんだよ』 『本気ですよ!僕、絶対に神田のことだけは覚えてますから!』 『へいへい・・・。期待しないでおくよ』 ・・・そんな会話をしてからはまだ、月日はそんなに経ってはいないと言うのに。 なぜ。 どうして。 やっぱり、と呟いたコムイの言葉は、この事態を予想していたものだった。 あれからすぐ連絡用ゴーレムでコムイらを徴収し、起きたアレンを診てもらってのことだ。 「・・・やっぱり、って・・・なんなんさ・・・」 ラビが動揺を表に出し、コムイに聞いてくる。 だがコムイは、いつものふざけた表情ではなく、ラビ、リナリー、それから神田を宥めるような眼で見返す。 「予想はしていたんだよ。記憶と、身体の容量は比例しているから。 ・・・これに関して言うのなら、僕よりも記憶のプロフェッショナルのラビの方がわかるんじゃないかな。 ともかく、今のアレン君の身体で、現在までの記憶を全て収めようとすると、パンクして精神が崩壊してしまう可能性があるんだ。 それを回避しようとして、記憶も身体と同じくらいの容量になってるんだよ」 つまり、現在七、八歳ほどのアレンは、その歳ほどの記憶しか持ち合わせていないということだ。 「・・・記憶は・・・」 「戻るよ」 表情を崩し、コムイは安心させるように笑む。 「身体が戻れば、記憶も戻るから」 ね。と、優しく言われれば、普段はつっけんどんな態度をとる神田も神妙な顔をする。 ・・・だが・・・。 「・・・あ、の・・・」 そこで声をかけてきたのは、先程からきょろきょろと辺りを見回していた、アレン。 きょとんとした表情は、今は不安に揺らめいている。 「ここ、どこ?」 「・・・アレン君・・・」 「マナは?マナはどこ行っちゃったの?」 「――――――――」 その名前に、神田は眉を顰めた。 「ねぇ、マナは?」 「、アレン・・・」 ラビが宥めようとするが、次第に興奮してきたアレンはその腕を払ってしまう。 「どこ行ったの?!」 くしゃりと顔を歪め、今にも泣き出しそうな顔で、コムイたちに問う。 「アレン君・・・」 困惑したコムイたちだが、逆に神田はアレンに苛立ちを募らせていく。 自分の事を見ようとも、関心も寄せず、ただの『ヒト』として扱われることに。 かんだ。 甘い声と甘い笑顔。 自分の姿を見つけるたびに駆け寄り、嬉しそうに抱きついてきて。 「――――うるっせぇな」 そこでアレンが、ようやく自分の方を見た。 ハッとした表情に見えるのは、困惑と畏怖。 「ごちゃごちゃとうるせぇな。マナはここにゃいねェよ」 冷たく言い放てば、アレンのその大きく開かれた目からぽろりと涙がこぼれ落ちた。 「嘘だッ」 「嘘じゃねェよ!」 「違う!!」 混乱し、叫ぶように否定するアレンに、神田も感情的になってしまう。 「ユウ・・・っ」 「嘘だッつーなら教団内全部調べて見やがれ!影すらねぇってことがわかるからな!!」 「神田っ」 リナリーがアレンと神田を遮るように立ちふさがる。 その眼が、これ以上アレンを責めるなと訴えており、神田は舌打ちをして部屋を去っていった。 「――――――――」 泣き続けるアレン。 溜め息が、思わず、漏れた。 コツコツと、石でできた回廊に響くブーツの音が耳障りでたまらない。 苛々と部屋を出た神田は、人通りのない細い曲がり角で足を止めた。 「―――――――っ」 ドン、と壁が叩かれ、空気も振動する。 それだけでは到底気が治まらず、拳を握り、もう一度。 やるせない。 それと同時に、思い知る。 思い知ってしまう。 自分の中の、アレンと言う存在の大きさを。 ――――――改めて。 □■□ 憶測はしていた。 だが、ここまでの事態を予想出来なかったのは、完全に自分の落ち度で他ならない。 椅子に腰掛け、コムイは大きく長く、息を吐き出す。 「兄さん!!」 だが、その静寂も一瞬で破られてしまう。 何人目かの、抗議によって。 なのでつかつかと早足で歩み寄ってくる愛妹が、何を言いたいのかは予想がついている。 それは確実に、つい先刻リーバーとラビにも繰り返された質問。 「どうして?!」 バン、と、書類の山で埋もれてしまっているコムイの机を叩けば、いくつもの山が崩れ床を一段と白くした。 それに一瞥すらくれず、コムイは至極優しい目で妹を見つめる。 「あれが、一番良い方法だと思ったからだよ」 「そんな・・・っ・・・だって、そんなッ」 「リナリー」 コムイは激昂してしまっているリナリーに歩み寄り、項垂れてしまっているその頭を撫でてやる。 幼い時から、こうするとリナリーは自分に心を赦してくれた。 大切な大切な妹。 彼女が自分の事を忘れてしまったと言ったのなら、自分は例え時間と共に思い出すと言われても、正気でいられるだろうか。 ・・・そんなことを考えてしまうと、とてつもなく恐ろしい。 リナリーの肩の力が抜けていく。 やはり腐っても兄、と言うべきか。 「つらいのは、神田君でもあるんだから」 わかってる、とはリナリーは言えなかった。 そう、本当にそのつらさがわかるのなんて、本人達だけなのだ。 「僕たちは、サポートするしか出来ないんだよ」 それも、わかっている。 そして例えサポートと言えど、彼らに自分たちは無くてはならないものと自負できることも。 「どうしても無理そうだったら、ちゃんと計らうから」 今は、とりあえず。 「様子を見てみよう?」 ね、と促すと、リナリーはやはり顔を俯けたまま、それでもちゃんと頷いてくれた。 「―――――――」 部屋に入り、驚いたこと、は―――――――。 「―――――――――――」 むしゃくしゃを少しでも解消しようと鍛錬をしていた神田が、ようやく気が済み部屋に戻ってみると、そこにはまだ見慣れぬ幼い人物が立ち尽くしていた。 「―――――な、」 向こうも、こちらに気付いた。 そして神田の姿を見つけ、さらに困惑した表情になった。 「な、んでテメェが・・・ッ」 と言いかけ、どうせコムイだと思い返す。 こんな、意地の悪くお節介なことが出来る権限と度胸を持ち合わせているのは、神田の考える限りコムイとクロスくらいだ。 「・・・ぼ、く・・・」 呟きつつ、自分を見てくるのは、あの視線ではなく。 ――――――かんだ 「・・・ちッ」 盛大に舌打ちをすると、神田は部屋を出て行ってしまった。 違う。 あれは、自分の知っているアレンではない。 追い求めてしまっている、彼ではない。 自分を、他人として恐がっている、あの瞳。 耐え切れない。 ・・・どうしても、神田には耐え切れなかった。 コメント 話の展開が急すぎる。・・・気もしなくもないのですが(汗) 不協和音を書くのは久々な気がする。 ・・・でもないか・・・ラビューで書いてますわー(笑/・・・) その内これようのページを作らなくっちゃです・・・ね・・・。 |