7 『事故』

あれから・・・。
再びカイと接触して以来、レイの睡眠時間はますます減ってしまった。
加えて食欲も落ちてしまい、もとから細い肢体はさらに細くなってしまっている。

あの日―――。
眼を紅く腫らして、手からは血を滴らせ、顔をその血で染めて帰ってきたレイに、仁は大いに驚いた。
手当てをしてながらワケを聞こうとしても、なんでもない。心配しないでの一点張り。
ときどきボ〜ッとして、訳も無く空を見ている。
外に行かないのか?と聞いても、行きたくない。とベットに張り付いて、寝るでもなくゴロゴロしているのだ。

3日も続くと、仁はいよいよ心配になってきた。
目の下にはクマが出来ているし、眼でしっかり確認できるほどに体重は落ちている。
もともと人よりも睡眠と食欲を摂らないといけないレイにとって、これはかなり痛い状況である。
仁は何度も病院に連れて行こうとしたが、どうもあの独特な匂いは逆に身体には障るらしく、かたくなに拒んだ。
「レイ・・・病院が嫌なら食事と睡眠をしっかり摂るんだ・・・っ」
「ぅん・・・」
レイは相変わらずベットに横たわってぼ〜っと仁の言葉を流している。
レイだって取りたくなくて摂っていないわけではない。
寝る時、目を閉じると、どうしてもカイの顔が思い浮かんでしまう。
自分を引きとめようとする真剣な顔。
『前世』を否定する怒った顔。
『好き』と言ってくれる、あの緋の眼。
最期に見た、とてもとても苦しそうな横顔・・・・・・。
どうしても・・・どうしても浮かんでしまって・・・。
そして、睡眠が取れなければ、食欲も自然と落ちてしまう。
そんな悪循環がもうずっと続いてるので、レイ自身参っている。
「カイ・・・」
仁が居なくなった部屋に、レイの小さな呟きは大きく響いた。
あれから外には一歩も出ていない。
前に会ってしまって、またあんな思いをするのもさせるもの嫌だから・・・。
「カイ・・・」
枕をギュッと抱きしめる。
心は埋まらない。
「・・・カイ・・・」
寂しそうな横顔。
でも、突き放す以外に、君を守る何が出来た?
「―――・・・」
口の中で呟かれた言葉は、反響することなく、虚空に消えた。

『外に行って新鮮な空気を吸えば、少しは眠れるかもしれないよ。
とりあえず室内にいるのはダメだ。少しでも歩いて来なさい』
そういわれて部屋から出されてしまった。
レイは何とかして外に行きたくは無かったが、どうも仁には小細工が通じない。
しょうがなく諦めて、レイは進まぬ足でホテルを出た。

日差しが眼に痛い。
こんなに太陽を厭だと思ったのは初めてだ。
牙族はその地形もあり、かなり自然と一体化して暮らしていた。
都会の曇った空気ならともかく、暖かな自然を厭だと思うなんて、自然児のようなレイにとっては意外なものだった。
それでもしょうがない。
眼はトロンと半眼だし、寝不足と空腹によって頭はガンガン鳴り響いている。
フラフラと歩いていると、トンっと人にぶつかってしまった。
『すまん』と謝って、歩を進める。

ああ、もう何を考えているんだかわからない。
気持ち悪いし頭痛いしおなかはキリキリ痛いし、思考回路がグルグル回っている。
自分は今何をしているんだっけ?
ああ、そうだ。仁に言われて今散歩しているんだ・・・。
カイ、カイを避けてる理由・・・。
前世で、緋の眼にツライ思いをさせてしまったから・・・。
ツライ。ツライ・・・。
自分も、ツライ―――――。

レイはもう何を考えているのかわからなくなっていた。
方向を変えて、信号を渡ろうとする。
その時・・・・・・――――――。
右側から凄まじいクラクションの音が聞こえる。
はっと前方を見ると、信号機の色は赤だ・・・。
横を見ようとし、衝撃が襲う。
それは、後ろに引っ張られる、車とは違う別の力・・・。
――――――――――レイの意識はそこで途絶えた―――――――――。



☆NEXT☆


コメント

短い・・・(ガクリ)
ああ〜もう自分で何書いてるかわっけわっかめ〜。
多分後2、3話で終わります☆ぇえ、今度こそ!(笑)