flying 5

あの出来事があった以来、太一にある習慣が出来た。
学校の終わった後に、『風の境目』へと赴く事だ。
さすがにもう悪ふざけでも向こう側にはいけない。
だから、変わりにココへと足を運んでいるのだ。
金髪に、蒼い目の少年。
「なんでだろ。一回会ったきりなのにな・・・」
なんでだろ・・・。
「なんで、こんなに気になるんだろう?」
仮にも敵対してる同士。
あそこで太一を高位階級のものたちに引き渡せば、それなりの金が手に入ったはずだ。
向こうとこちらが手を出せないのは、それぞれの『チカラ』をあまり理解出来ていないため。
太一を調べれば、堕天使側の優勢は必至。
なのに、あいつはそんなことしなかった。
『堕天使』なのに、優しかった。
「もっかい会いたいなぁ・・・」
あいつとは、なんか気が合いそうな気がする。
光子郎とも、空とも違う雰囲気。
「会えないかなぁ・・・」
太一は浮石に腰を下ろす。
膜を一枚張ったような、『風の境目』の向こうにはやはり大きな空が広がっている。
「シルフに、手紙とか渡せたら、いいのに・・・」
ありがとって。書いて。
暫く、そうして『待っている』。
「・・・帰ろ・・・」
太一は腰を上げて、夕日に染まった翼を広げた。
そして、そこから飛び立っていった。

「ふぁあぁぁ・・・」
「大きいあくびねぇ、太一」
「空。おはよ・・・」
「おはよ、太一。どうしたの?眠そうに」
「ん〜昨日神学の本読んでてさ〜・・・」
「神学〜!?なんでそんな難しいのを・・・」
神学とは、すなわち『神』の事が書かれている書物のことで、特に『八神』・・・神を束ねるもっとも位の高い神々の事が事細かに書かれている、上級法書物だ。
「で。どこまで読んだの?」
「・・・四翼の天使のトコ・・・」
「・・・・・・は・・・?」
「・・・だから、四翼・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「いっちばん最初のとこじゃない・・・」
「だぁって!!難しいんだもん!!」
「あったりまえでしょ!?あれにはルーンやら魔法記号やらが多用されていて、私だってまともに読めないわよ!」
空は、光子郎と同じく高位階級に近いとされている者だ。
法力もさることながら、その性格がかわれている。
他人を平等に労わり、癒し、暖めてくれるような性格。
空自信はあまり高位階級とかに興味がないようで、事あるたびに断っているようだ。
「だぁってよ〜・・・」
「だって、なによ」
「神学系の本には古代法力のことも書かれているんだろ?それ習得できたら、一気に法力あがると思ってよ〜・・・」
太一も、外には出さないが、結構焦っている。
「・・・太一。気持ちはわかるけど、基礎をしっかり立てておかないと、結局は総崩れになっちゃうわ。
今は焦らず、じっくりと力をつけていきましょう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「ね、太一・・・」
「・・・・・・うん・・・」
太一は渋々、という感じで頷く。
昔から、空の言う事には逆らえない。
「・・・今日は私、暇だから、もし太一がよかったら私の家来ない?」
「マジで!?」
「ええ」
「行く行く!!今日はさ、天聖歌の事について教えてくれよ!!」
「あら、珍しいわね〜」
「そうか?」
「いつもは法指導について教えてくれって言うのに」
「た〜まにはな!オールマウンドにって空が言ったんじゃん?」
「まぁね」
そんな風に話していると、始業のベルがなった。
「じゃあ私席に行くわね」
「おう!またな!」
元気のいい太一だったが、開始と共に寝息を立てて先生に怒られてしまったのは、ここだけの話・・・。

天聖歌とは、礼拝堂等で唄われる、神を称える詩(うた)の事だ。
最低階級のものたちは、膝をつき、天を仰いで歌うのが一般的とされている。
が、高位階級たちは魔方陣を描き、その中で法力を発動させて唄う。
「確か、ヒカリちゃんの役目なのよね?」
「そうだぜ!ヒカリはうまいんだからな〜♪」
年に一回。陽月祭に、高位階級の『歌唄い』といわれる役目の者たちが神殿から姿を見せ、歌を唄う。
ヒカリはその『歌唄い』の役目のため、年に一回顔を会わせる事が出来る。
高位階級たちの唄う天聖歌は、最低階級たちのような『願い』ではなく、『癒し』の歌。
歌に法力を込め、風に乗せてすべての人達に祝福をもたらす。
空も高位階級たちに、『歌唄い』にならないかと、誘いをうけたのだ。
「『天聖歌』にはいろいろな種類があるわ。癒しの歌、恵みの歌、願いの歌・・・。
でも、種類の中で変わらないのは『神を称える』こと。
これが、『天聖歌』の主題とされていて、どこの歌にも書き込まれているわ」
太一は言われて、空に渡された書物を読んで見る。
確かに、どこにもそう言ったことが含まれており、冒涜するようなことは一文も見当たらない。
「まぁ当然と言えば当然よね。神は私達にとって唯一絶対、無二のものだから」
天使とは神の『種子』のようなものだ。
神に絶対的な信頼をよせ、あがめるもの。
神とはそれほどのものだし、力の持ち主だ。
「で、空。まずはどうするんだ?」
「歌詞の理解から始めましょうか。太一、どの歌までわかる?」
「『癒しの歌』まで」
「あら。結構わかるのね」
「いやいや。それほどでもありますよ♪」
「バカ言ってんじゃないの。じゃ、その次から行きましょうか」
「おう!」
努力は結果を結ぶもの。
太一は気付いているかしら?
翼が、ちょっと白に近くなってきている事に・・・。



☆NEXT☆


コメント

なにやらいろいろな言葉が飛び交ってきました・・・(苦)