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flying 49 裕明と奈津子と別れて、7人は『風の境目』に来ていた。 天使たちは天使領地側。堕天使たちは堕天使領地側。 それぞれの領地から、『風の境目』をはさんで向かい合わせになる。 力を一番持つ太一が中心。 光子郎、ミミが太一の真上。 空と丈が斜め右下側。 タケルとヒカリが斜め左側。 そうやって聖三角形の魔方陣を作る。 「みんな」 太一が正面・・・堕天使領地を見ながら話し掛ける。 「ごめんな、巻き込んじゃって・・・」 沈んだふうに言われた言葉に、空が太一の方まで飛んでいった。 「・・・空・・・??」 はぁ〜っ・・・と深い深い溜息をついて、空は太一の両頬をパン!と叩いた。 6人はその光景を見て驚く。 「今更何言ってんのよ!って言うかあんた私と何年幼馴染やってるのよ」 やだやだ・・・と空が首をふる。 「あんたに付き合って、後悔、してると思う・・・?」 太一は一瞬間をあけて、笑った。 「思ってないっ」 改めて陣を組み、力を高めていく。 「いいか、みんな・・・。オレがアレクタリスを突き刺すから、皆はアレクタリスに力を込めてくれ」 静かに6人は頷く。 「それから・・・これは本当に危険だから・・・自分で限界だって思ったらすぐにやめてほしい・・・」 もう、失いたくないから・・・。 「・・・わかってるよ、太一さん・・・」 タケルが静かに笑む。 「そうよ!大丈夫だってば!」 ミミも豪快に笑う。 「・・・うん・・・」 太一は正面を向く。 一息ついてから、アレクタリスを大きく、高くかかげる。 「我は白と黒の天使を統べるもの。 遠き過去より出でた哀しい記憶のカタチよ。 我と精霊の力を持ち、汝を四散せんっ!」 太一はアレクタリスを正面に持つ。 それと同時に、空たちもそちらに力を向ける。 『我等の力と共に壁を壊し、新たなる絆を築こうっ』 アレクタリスに太一の力が込められる。 太一はそれを、思い切り『風の境目』に突き刺した。 同時に、空たちの法力と魔力もアレクタリスに注がれる。 ――――――ギュワッ!!! 言い表しがたい音と共にアレクタリスに注がれた力が、徐々に『風の境目』を溶かしていく。 テラの法力を、魔力が。 スィムの魔力を、法力が。 中和し、溶かしていく。 『壊す』とは、まず過去の2人の力を中和した後で、『壁』になったモノをアレクタリスで切るのだ。 中和するまでが大変。 なにせ『風の境目』は過去の四翼の天使の中で一等の実力を持つものが2人分の壁だ。 いくら太一が四翼の天使といっても、結構無理がある。 「――――っく・・・っ」 言葉さえ紡ぐのが難しい。 力を出しても出しても・・・吸い取られていってしまう。 ――――アキラメナサイ。 頭の中で声が響く。 ――――アキラメナサイ・・・。 「やっだ・・・っ」 太一はさらに力を込めていく。 「諦め・・・られっないっ・・・!!」 ――――コレハ距離ヲ無ニシテ有ニスル壁。 オ前ナンカノ力デハ破レナイ・・・。 「そんなこと・・・ない・・・っ!」 ――――現実ヲ受ケ入レロ。オ前タチマデ壊レルゾ・・・? 「こいつらはヤバそうだったら止めさせる!オレだけでも絶対止める」 ――――諦メロ・・・。 繰り返される言葉。 「イヤだイヤだっ!!オレは諦めたくない!諦められない!!」 「な・・・に・・・アレ・・・」 太一の真正面・・・堕天使側にボンヤリとした光が現れる。 それは虚ろながらもドンドン形作られていく。 ――――信ジタッテ・・・望ンダッテ・・・手ニ入ラナイモノガアル。 オ前ダッテワカッテイルハズダ・・・。 太一の肩がビクリと揺れる。 ――――諦メロ。コレハ壁。ケシテ埋メルコトノ出来ナイ――― 「イヤだ・・・っ」 『光』は言葉を紡ぐのを止める。 「信じたって、望んだって、手に入らないものがあるのは知ってる。 オレが力不足だって言うのも知ってる」 だけど・・・っ。 「もう決めたんだ!信じるって!この力を・・・絶対有効に使うって!!」 ――――無駄ダ・・・。 ブルブルと太一が頭を振る。 「無駄なんかじゃない!オレは諦めたくない!諦めて、終わりなんて絶対ヤだ!!」 ――――現実ヲ受ケ入レロ!今ノ現状ガ物語ッテイルダロウッ! 「・・・お前は・・・」 太一は『光』の眼を見る。 「お前はそうやって・・・諦めたのかよ・・・っ・・・!スィム!!」 『スィムっ!?』 驚いて空たちは『光』を見る。 「信じることを諦めて・・・それでテラを憎んだのかよっ!?」 ――――何ガ悪イッ!? 突風が吹く。 ――――誰モ何モナイ空間ニタダ独リ。ソンナ中デ何ヲ望メトイウノダッ!? テラヲ憎ンデ何ガ悪イッ!? 「確かに!!確かに何も説明しなかったテラも悪い! だけど、いきなり自分たちと違う黒い翼を持ったものが出てみろっ!天使たちはどうするっ!? 仮にテラの分身と説明してみたら、力の不安定さまでわかってしまい、不安にさせちまうっ!」 ――――・・・ッ!! 「結局はお前を護るために閉じ込めたんだっ! 何故殻に閉じこもって他のものを見ようとしないっ!? 何故テラの気持ちも考えようとしないっ!?」 ――――・・・今更・・・ッ。 「・・・?」 ――――今更思ッテドウナルッ!?モウドウシヨウモナイ・・・ッ! ワカルカ!?コレハ私トテラノ気持チガ擦レ違ッタ証ナンダ!! 「だったら・・・」 ――――ッ!? 「なおさら、壊せばいい」 スィムの頬に赤味がさす。 力と力のぶつかりあいで、あたりが光の粒子に囲まれて、スィム以外見れない。 それとも、これはスィムの作り出している空間なのだろうか? 「種族の違いも、思いの擦れ違いも、壊してしまえばいい。 そうしたらまた築けばいい」 ――――夢語リダ・・・ッ。 「そうかもしれない。でもっ!信じないよりずっとずっとマシだ!! オレは・・・すごく・・・わかった・・・・・・っ!」 太一の痛々しい表情に、スィムも一瞬言葉につまる。 「一度でいい!一瞬でいい!!信じてみろ!テラの事、自分の事!!」 ――――無理ダ・・・私ニハモウ、ソンナ事出来ナイ・・・ッ。 頼りなさげにスィムの表情が歪む。 「そんなこと、ない」 「――――っ!?」 太一とスィムの声に第3者の声が割り込む。 低い、よく通る声。 もう絶対絶対聞けないと思っていた、大好きな人の――――。 「っー―――わっ!!」 一瞬気がそがれてしまい、力が押し返されてしまう。 それを、後ろから支えられた。 背中を抱かれ、太一の手ごとアレクタリスを握りこむ。 横を見れば、黄昏色の髪。 「太一、しっかり」 呼ばれ、はっとして、アレクタリスに再び力を送り込む。 「お前がそうやって考えられるなら、絶対出来るはずだ」 スィムは言葉に詰まる。 「諦めるな。言ってみろ。絶対、出来る」 『言霊』 放った言葉は力を持つ。 自分が、彼に教えたこと。 ――――出来ナイ・・・ッ。 スィムは顔を手で覆い隠す。 「スィム」 太一は静かに呼ぶ。 「大丈夫」 言葉を、静かに放つ。 「白と黒を持つ、オレが居る。大丈夫」 スィムの眼から大粒の涙がポロポロと零れ落ちる。 ――――信ジタイ・・・。 子供のように泣き崩れる。 ――――本当ハ、信ジタカッタ・・・ッ。 テラが触れようとして、弾かれた時に、触れられることすら許されないんだと思った。 ――――タダ、抱キシメテホシカッタ・・・ッ!! 「大丈夫だ」 低い声が静かに響く。 視線が、上を向く。 2人はつられて上空を見る。 フワリ。 静かに舞い降りて、スィムの前に立ったのは、テラ。 ――――・・・ッ。 スィムは何か言おうとして、俯いた。 それでもテラはスィムの手をとる。 ――――ゴメンネ。 静かに紡がれる言葉。 スィムはたまらずテラに抱きつく。 ――――暖カイ・・・。 スィムはそれだけ言って、太一たちの前から溶けるように姿を消した。 テラは見送ってから、太一たちのほうを向く。 ――――ア・リ・ガ・ト。 テラもそう言って、宙に溶けた。 再び、身体に強い負荷がかかる。 「ぁっ・・・くっ・・・っ」 油断していた太一は必死にアレクタリスを持ち直す。 「太一・・・」 ぎゅっと、太一の手を包んでアレクタリスを持っている手に力が込み上げる。 見上げると、蒼い瞳が優しく微笑んでいた。 「独りじゃない」 力が、送られる。 「皆が居る。天使も堕天使たちも、力を貸してくれている」 口が呟く。 「空も、丈も、光子郎も、ミミちゃんも、タケルも、ヒカリちゃんも居る」 必死に力を送ってくれている、6人の姿がモヤから見えた。 「俺が、居る・・・」 だから、一緒に下に降りよう・・・。 「ッヤ・・・ット・・・」 太一とヤマトは額を擦り合わせる。 「さ、太一・・・」 「うん・・・っ」 太一は正面を見据える。 迷わない。 決めたんだ。絶対、諦めいって。 白と黒の閃光が目に妬きつく。 9つのそれぞれの光が、飛び出して、『風の境目』に穴を開けていく。 それから、ガラスが砕けるように、壁が無くなった。 「・・・・・・いち・・・っ・・・!たいち・・・っ」 ふと目を開ける。 空が心配そうに自分を見下ろしていた。 どうやら、あれから気絶していたらしい。 そこは、神殿の一室だった。 「・・・空・・・『風の境目』・・・は・・・?」 太一が気がつくのを確認すると、その場に居た6人はホッと胸をなでおろした。 それから、空がコクリと大きく頷く。 ふー・・・っと太一は大きく息を吐きはっと気付く。 「・・・ヤマト・・・ヤマトはっ!?」 バッと太一は起きる。 「太一・・・?」 空がビックリして1、2歩後退する。 「ヤマトが居たんだ!空たちも見ただろうっ!?」 空たちは顔を見合わせる。 「太一、疲れているのよ・・・今はゆっくり休みなさい?」 太一は反論しようとして、止めた。 もしかしたら、あれは自分が自分に見せた幻だったのかも知れない。 「私たちはロウ様のところ行ってるから。・・・お疲れ様、太一・・・」 「うん・・・みんなも・・・サンキュな・・・」 太一は手を振って皆を見送った。 パタン。 静かにドアが閉まる。 太一は仰向けになって、天井を仰ぐ。 「・・・ヤマト・・・」 呟く。 独り言のはずのソレに、返事が返って来た。 「なに?」 太一は驚いてドアの方を見る。 「・・・マト・・・?」 「うん」 足音をたてて、ヤマトが歩いてくる。 太一もベッドから降りて、距離を縮める。 「大丈夫か、太一・・・」 コクリと頷く。 「今・・・空たちが笑い込み上げて部屋出てったけど・・・なんかあったのか?」 はかられた。 そう思っても込み上げるのは嬉しさで。 「本当に、ヤマトだよ、な・・・?」 太一がヤマトに手を伸ばす。 その前に、ヤマトが太一の頬に触れる。 暖かい。 フワリとにおう、ヤマトの匂い。 一も二も無く抱きつく。 ポロポロポロ。ポロポロポロ。 涙が頬を伝う。 言いたいことが死ぬほどあるのに、今はただこうして抱き合っていたかった。 互いのヌクモリを確かめ合う。 ふと眼が合う。 そこで、思い出した。 一番一番、伝えたかった言葉。 「オレも、大好きだよ・・・」 ヤマトは少し照れて、すごく嬉しそうに微笑む。 自然に唇が重なる。 再び出逢えた。 出逢えたんだ。 コメント ようやく次で終わります☆ よかった・・・最初と最後だけは(強調)しっかりと予想通りに終われそうだ・・・☆(固羅) あと一話。 お付き合いください。 |