flying 50

―――――それから・・・―――――

アレクタリスは過度の力の使いすぎにより、今は太一が所持し、力を与えている。
ロウが言うには、ヤマトが生き返ったのも、アレクタリスと太一の力のおかげだという。
というか、もとはあの光は太一の、ヤマトを生き返らせたいという切なる願いをアレクタリスが叶えたという。
その力の漏れが、カインの視力を治したり、傷を治したり、力を回復させたのだという。
それは、禁術のひとつ、死者蘇生法術『レイズデッド』と同じ効力。
『想いとはすごい力じゃな・・・』
ロウがシンミリと言ったのを、何故か太一は印象的に覚えている。

あの日から、1週間たった。

『風の境目』が壊されても、しばらくは両側とも、渡ろうとはしなかった。
偏見と疑いはそうは消えはしない。
そんな大人たちの疑を晴らしたのは、子供たちだった。
堕天使と天使の関係。
それにまだうまく理解できていない子供たちは、禁止されていたその場所に、興味津々で立ち入った。
そこで、最初の出会いが生まれて。
どんどんどんどん、通行が増えていく。
大人たちで率先してきたのは、サーナだった。
そして、トーラとカイン。
二人は無言で握手して、照れたように浮石に座ってポツリポツリと話をし始めた。

まだうまく天使と堕天使との交流が出来ているわけではない。
そこで、ロウが堕天使側の最高責任者、ミミが天使側の最高責任者となり、お互いの特徴を知ろうと勤めている。
しかし、それでは不安との意見も大いに出たので、ロウには丈と空がつき、ミミには光子郎がそれぞれついた。
そこでも大いに協力してくれたのは、お互いの子供たちだった。
初めて見る、自分たちとは違う色の翼。
「あなたもわたしたちとおなじなの?」
ミミの羽をつかんで、幼い子供がしゃべりかける。
周りを見れば、幾人かの子供たちが興味津々の眼で見ている。
ミミはニ〜っと笑って、女の子を抱き上げる。
「そーだよっ!私たちは、あなたたちと同じ」
「でもオレ、ねぇちゃんみたいないろのつばさみたとこねぇぞ!」
男の子がミミの服をつかんで、自分の方に注意を引かせる。
「うん。私もそうだった。でもね、私思ったわ」
「どんなふうに??」
また違う子が話し掛けてくる。
光子郎の方にも子供がよってくる。
「綺麗だなって。私と違うキミたちの翼の色、綺麗だなって思ったわ」
それを聞くと、子供たちの顔はぱっと明るくなる。
「ほんとうに?」
「うんっ!真っ白くてフワフワの羽。綺麗で素敵だねっ」
「でもオレ、ねぇちゃんのはねのいろもすきだぞ!」
「わたしもっ!」
「ずるい〜〜っ!あたしも〜っ!」
生まれついての懐っこさと話やすさもあり、ミミはすぐに輪に打ち解けていった。
光子郎はその光景を、安堵の表情で見ている。
「ねっ!光子郎くん!この子たちが一緒に遊ぼってっ」
「はい。今行きます」
ミミに呼ばれ、光子郎は走っていく。
二人で手の握って、子供たちと手を繋いで、歩いていく。

一方ロウの方も同様で、『ジィちゃん』の相性で親しまれている。
「よかった・・・」
それに一番肩の荷をおろしたのは、空だった。
「子供たちはすごいね。僕たちには出来ないことをサラリとやってしまう」
丈は空にコーヒーを入れてやる。
「ええ・・・。あれほど受け入れに抵抗がある大人たちがようやく努力して受け入れようとしているのを、さも当然とばかりに・・・私たちは、情けないですね・・・」
調べもせず、語り継がれてきたことをそのまま受け入れてしまっている。
その手を、丈が握る。
「・・・違うよ。キミはすごい。・・・キミたちはすごい。
伝承を信じてしまうのはしょうがないし、受け入れに抵抗してしまうのはしょうがない。
見たことのないものに疑いを持つのは、しょうがないからね。
でもね、問題はそれからだ」
空は丈を見る。
丈は外を見ながら、コーヒーを一口含んだ。
「もがいてもがいて、今の自分に打ち勝つこと。
立ち向かって、傷付いて、それでも立ち上がらなければならない。
それが出来ないって思って抵抗を止めたら、自分が情けないんだ」
「丈先輩・・・」
呟くように、空は丈を見つめる。
「なんて、えらそうだったか・・・あ・・・」
丈が言葉を切ったのは、空が丈に抱きついてきたから。
「・・・好きです。・・・そんなあなたが、好きです・・・・・・」
しっかりと前を向いて、相手の気持ちもしっかり考えられる。
そんな丈に惹かれていった。
「・・・うん・・・」
丈は静かに空を抱きしめる。
耳元に何かを囁くと、空は嬉しげに目を潤ませ、丈に微笑んだ。

ヒカリとタケルは、元『風の境目』の管理人になった。
というか、いざこざが起こった場合の歯止め役。
しかし以外に両側ともケンカひとつ起こしはしなかった。
なので、二人はそこの名物人となってしまった。
もともと可愛らしかったし、なじみやすいので、差し入れをしてくれたり、話し掛けたりしてくれる人が多くて、2人には堕天使や天使の友達も出来た。
わざわざ2人に逢うために来てくれる人も居る。
悩みと言ったら、タケルにしてもヒカリにしても恋敵が出来たこと。
それでも一緒に居れるコトに、2人は幸せそうだった。

それから・・・。
太一とヤマトは忙しい日々を送っている。
ヤマトは精霊の安定のため(天使側と堕天使側の性質の違う精霊がぶつかり合い、交じり合ったので、まだ精霊たちが不安定になっている。なので、まず風の精霊から安定をはかっている)に天使側と堕天使側を飛び回り、太一はロウとミミの様子とお互いの暮らしを見に飛び回っている。
天使と堕天使の精霊面でもまだまだ安定は難しい。
逢えない日々が長く続くが、充実した生活を送っている。

・・・それでも、やはり寂しい。

だから、そういう時は・・・。

「太一」
人目のつかない神殿の裏庭。
太一が鳥たちと戯れていると、ヤマトが姿を見せる。
太一から見て、それは逆光で表情を読み取ることは出来ない。
ヤマトが近付いてくる。
自分も、歩んでいく。
鳥たちが飛び立ち、羽根が幾枚か2人の間に落ちてくる。
だんだん、ヤマトの顔が見えてくる。
嬉しそうな、顔。
多分自分も、すごくすごく嬉しいのを隠せないでいる。
「ヤマト・・・っ」
久々に会う恋人は、相変わらず自分を優しく受け止めてくれる。
「太一・・・」
甘く囁くその声色。
逢いたかった。
耳元で、囁かれる。
「オレもだよ・・・」
寂しくない、って言ったら嘘になる。
だけど、離れていても大丈夫だよ。
キミにこうして逢えるから。
好きになる喜びを知れたから。
生きている歓びを知っているから。
「大好きだよ・・・」
肩に顔を埋め、囁く。
俺も。と、返ってくる、声。

太一は顔をあげる。
蒼い青い空。
溶けるように白い、雲。
眩しい日の光。
大好きな人。
大切な人たち。

景色が、ヤマトの顔で遮られ、視界いっぱいにヤマトが飛び込んでくる。
それが、だんだん近付く。
太一はそっと眼を閉じる。
触れる唇。
一度離し、額を擦り合わせて笑いあう。
それから、何度も何度も。
じゃれあうように。
確かめ合うように。
2人は口付けあう。

永久(とわ)という時間がないのなら。
永遠というものがないのなら。
せめて、せめて、この瞬間。
あなたの胸の中。
抱かれながら、笑いあっていたい。

すべての人たちに感謝して。

すべての事柄に感謝して。

僕たちは今、ここに生きている。



☆NEXT☆


コメント

終わりました!
約半年かかっての完結!(汗)
長い期間にも関わらず、お付き合いしてくださった皆様、本当にありがとうございます。
お礼の言葉は語っても語りきれませんが、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
初の長文ということもあり、文法的にも表現的にも納得のいかない点が多々ありますが、今は私も嬉しい限りです。
すべての人に。
ありがとう。