flying 48

ロウとミミはそれぞれ領地に戻り、事のあらましを天使、堕天使たちに話した。
賛否は両論。
しかし以外にも賛成の旗をあげてくれたのは、あれほどまで互いに嫌悪を露わにしてたトーラとサーナだった。
それでも反対者はいた。
『ゆっくり話し合おう。しかし、知り合わずしてどう図る?』
ロウの言葉に、高位階級たちも渋々頷いた。
逆に受け入れが早かったのが最低階級たち。
『私たちは従う立場だから。それに、なによりロウ様を信頼している』
それが多くから返って来た返事。
一方堕天使たちの領土では、ミミやトーラ、カインが説得をしていてくれた。
そして、太一。
『絶対にどちらにとっても悪くはしない』
天と堕の翼を持った太一。
必死の説得の甲斐あって・・・もちろん一部は強引に納得させざるを得なかったが、なんとか承諾してくれた。

カツカツカツ・・・太一がアレクタリスを持って(まだ完全に力が安定していないため、太一が所有して安定させている)否神殿を通る。
ソコに居た、一組の男女。
「太一くん、だね?」
「あ・・・はい・・・」
黒の翼を持つ堕天使。
何故か男の言葉に、太一は自然に頷いてしまっていた。
「ちょっと、いい?」
続いて女の人の方も話し掛けてくる。
「あの・・・あなた方は・・・?」
男と女は視線を合わせる。
それから、太一の方を見る。
「初めまして、四翼の天使さま」
「私たちは、ヤマトとタケルの両親です」

太一とヤマトとタケルの父と母・・・裕明と奈津子・・・は茶屋に移動した。
しばらくは無言が流れる。
実は堕天使側の説得には高位階級のものたち・・・裕明と奈津子も協力してくれていたのだ。
「あの・・・ヤマトのこと・・・」
太一が下を向く。
言葉が続かない。
血の匂い。
冷たくなる身体。
光を映さない瞳。
ドス黒い大地。
ヤマトの、声・・・。
忘れてはいけない。
でも、鮮明に思い出すにはまだ辛すぎる。
「ありがとうございます」
そんな太一にかけられた言葉。
ばっと正面・・・裕明と奈津子の方を見る。
二人は、笑っていた。
「ヤマトに聞いてるかもしれませんが・・・」
「あのっ!敬語は・・・止めていただけませんか・・・?」
話の腰を折るようでイヤだったが、太一は思い切って言ってみた。
二人は顔を見合わせると、苦笑して、わかった。と言った。
「ヤマトに聞いてるかもしれないが、俺たちは離婚しているんだ」
知ってる。
まだ会って間もない頃、ヤマトがちょっとだけ話してくれた。
「私たちは両方とも高位階級でね・・・一緒に過ごす時間なんて本当に無かったんだ」
「そのうちヤマトが生まれて、タケルが生まれて・・・。
否神殿には養護施設もあるし、学校も中に一緒に設置されている。
最初はソコに入れて、俺たちも一緒に否神殿に住んでいったんだ」
裕明が一息ついてコーヒーを飲む。
「でも・・・」
続きを語り出したのは奈津子。
「そのうちに・・・やっぱりドンドン溝が出来ていったわ。
お互いの考え・・・子供の育て方とかにも意見の食い違いが出てきて・・・結局耐え切れなくなった。
身勝手よね、本当に大人って・・・」
太一は口を挟めず、そのまま聞いている。
「それでも、仕事の関係上私たちは顔を見ちゃうし、子供たちにも、別に会ったりするなとかは言わなかったわ。
それはあまりにも傲慢すぎるもの」
二人は幼かった。
だから、別れた後もしょっちゅう会って、兄弟と言う事も教えた。
護って、護られることを教えて。
「だから・・・」
裕明が再び話し始める。
「嬉しかったんだよ。ヤマトが、誰かのために命をかけてくれたことが」
自分の生き方を、見失わなかったことが。
「私たちは身勝手すぎた。
ヤマトもタケルも、死ぬほど言いたいこと、ワガママ、頼みたいことがあるだろうに、一言もそういうことを漏らさなかった。
・・・でも、かわりに、神経質になってしまった」
一枚の壁を置くように、どこか離れている。
「それが、いきなり笑うようになった。・・・今思うと、ちょうどキミと会ったくらいの時にね」
裕明は思い出すように目を閉じる。
「ヤマトは何も話してくれなかったが・・・まぁ話せない内容だけどね。
それでも、ヤマトのその変化が嬉しかった」
だから。
裕明は改めて太一を見る。
「キミにはホントに感謝しているんだ」
その言葉に驚いたのは太一。
「オッレ!何もしてないですよっ!?」
いきなり頭を下げられて驚いてしまう。
「いいえ・・・」
奈津子が首を横に振る。
「あなたのおかげよ。
私たちでは溶かすことの出来なかったヤマトの心の中の氷を、あなたは溶かしてくれたわ」
奈津子は太一の手を握る。
「命をかけて、あなたを護った。
私たちがあんなこと・・・離婚しちゃって、一番不安だったのは、人を好きになることを拒むことだったの」
奈津子は瞳を伏せる。
「実際、あの子・・・タケルも含めてだけど、今まで一度も人を好きになったこと、なかったわ」
手から、奈津子の体温が伝わってくる。
少し震えて、冷たかった。
自分でさえ、あんなに苦しくて痛かったのに。
息子の死を受け入れるのに、この人たちはどれくらいの苦労が必要としたのだろう。
「それでも、あなたを好きになってくれた。
死んでも護りたい。そんなふうに思うようになってくれたのが、私は嬉しい・・・」
奈津子は眼を上げる。
淵に雫が込み上げている。
「・・・ヤマトは・・・」
太一はやや瞳を伏せる。
「少なくともオレは、ヤマトに何もしてやれなかった。
そう・・・思ってた・・・」
眼を、閉じる。
あの時のヤマトの顔が、今だ鮮明に思い出せる。
「でも・・・」
太一は握られていた手を解いて、逆に奈津子の手を握った。
「でも、そういうふうに言ってもらえたら、嬉しい。
だけど・・・だけどね、おじさん、おばさん」
太一は二人の顔を交互に見る。
「絶対オレだけの力じゃないよ。
丈やミミちゃんや空や光子郎やタケルやヒカリ・・・それに、おじさんとおばさん。
みんなの力で、みんなに影響を与えているんだよ」
手に、力を込める。
言葉以上に、言いたい気持ちが伝わるように。
「少なくともヤマトは、二人を恨んでない。
ヤマトは、絶対絶対、二人の事、大好きだよ」
太一は笑顔を浮かべる。
過去に出来ない気持ちや想いがある。
とうとう堪えきれなくなった奈津子の眼から、今まで耐えてきた分の涙も一緒に流れてきた。
迎えに座っていた奈津子は、太一の方に移動してきて、思いきりだきしめた。
ありがとう。
何度も何度も、呟きながら。
太一は嗚咽が止まるまで、ずっと抱いてやっていた。

太一の眼から一筋だけ涙がこぼれる。
切なくて切なくて切なくて・・・それでも、嬉しかった。



☆NEXT☆


コメント

・・・あれ?(汗)
最後の最後で話がずれた・・・(汗)というか脱線してしまった・・・っ(滝汗)
49話からはまた戻さないとね!(続くよ・・・まだ・・・(脱力))
ところで石田父と高石母の名前。
どうやってだそうか5分くらい悩んだ・・・(笑)