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flying 38 「・・・ぅ・・・」 うめきと共に眼が覚めた。 瞼を開けると、空が自分を心配そうに覗き込んでおり、照れた。 「うわわ・・・っ!!」 慌てて身を起こしながら、自分の身になにが起きたかを振り返る。 「そうだ・・・!背中を切られて・・・」 丈はハッと思い出す。 が、激痛どころか疲れも無い。 何故? 不思議そうな丈に空はクスリと微笑む。 「そうか・・・法術!」 「その通りです」 空は立ち上がるとタケルの元へと歩いていく。 目で追いながら、目の前で発動される神秘の力を丈はしっかりと目に焼き付けた。 タケルの腕の傷がみるみるふさがっていく。 「じょーせーんぱぁい!!」 丈に飛びついてきたのはミミだった。 「大丈夫?丈先輩??」 涙目のところを見ると、だいぶ心配させてしまったらしい。 「うん。僕は平気だよ。ところでミミくん。ミミくんの方こそ身体は大丈夫かい?」 頭を優しく撫でてもらい、ミミは、うん!と元気よく頷く。 「光子郎くんに治して・・・こういうときでも治すっていうのかな?してもらったの!」 顔色からしてもミミが無理しているとは思えない。 法術とはすごいのだ。 丈はその力を目の当たりにして、あらためて自分の持たない力の凄さを実感した。 丈は立ち上がり、上の方を見た。 どうやら気絶してしまったのを、太一たちが地上まで運んでくれたらしい。 ミミも上を見、さっきまでの笑顔を引っ込めた。 「さっきから天使や堕天使たちがたくさん落ちてくるの。血もね、パタパタ落ちてきて・・・地面が茶色じゃないの」 涙もでない。当然じゃないその光景に、言葉さえ出ない。 空が隣に並ぶ。 「私たちが治せるのは、傷です。それに・・・ヒカリちゃん以外私たちは・・・最低階級ですから・・・ここまで負っている傷が酷いと・・・っ」 ぎゅっとコブシがキツク握られる。 「それに・・・今私たちの法力は限られてます・・・」 助けられないのが悔しい。 自分は、何のためにこっちに来たのだろう。 そう、思ってしまう。 「・・・空くんのせいじゃないよ。それに、キミたちが来てくれたおかげで僕は今こうして生きていられる・・・。 ホントに、感謝してるよ」 優しい笑みに、空は泣きそうな顔を無理矢理笑わせた。 「・・・なぁ・・・」 それまで静かだった太一が丈に話し掛けてくる。 「太一、なんだい?」 「あのさ・・・ヤマト、見えないんだけど・・・・・・」 「・・・そっか、会えてないんだ・・・」 丈は再び重いため息をつく。 「ヤマトはまだ上だよ。太一たちを探すって・・・太一たちと出会う直前に別れたんだ」 丈は太一の顔が見れなかった。 どんな顔をしているかは、鋭く息を呑む音でわかった。 「・・・オレ・・・」 「太一・・・?」 「オレ!上に行って来る!!」 「太一!?一人で行っちゃダメ!危険よ!!」 「大丈夫だから!空たちはここにいてくれ!」 とめる暇もなく、太一は空へと飛びだって行ってしまった。 「空くん・・・追いかけなくていいのかい?」 上げかけた手を下ろし、空は、はぁ・・・とため息をつく。 「今行った方が危険です・・・ここは太一を信じましょう・・・」 「空くん・・・」 確かに的確な判断だ。 それを下す為に、空はどれだけ自分を押し込めているのだろう。 「空くん」 「はい?」 「・・・独りじゃないからね」 空の眼が大きく開かれる。 丈がキツク結ばれた空のコブシをそっとほのく。 手は、爪が肉にくいこんでしまったのだろう、よっつ、傷が出来ていた。 「みんなが居るから。・・・僕が居るから。・・・ね?」 言葉に、救える力があるのなら。 誰かを癒す力があるのなら。 「・・・はい・・・!」 涙が、瞳のふちに小さく光った。 昇って行くと、ドン!ドン!と硬質な、鈍い、鋭い、いろいろな音が聞こえてきた。 慣れる事の無いそのおぞましい光景を、太一はきゅっと眉間に皺を寄せて逸らさずに見ている。 どこかに。 この近くのどこかにヤマトが居る。 早く捜して会いたいのに、なかなか捜せない。 普段は誰も近づかない秘密の場所には、たくさんの天使と堕天使たちが無意味な争いをしているから。 ・・・どこ・・・? 「ヤマト・・・」 小さな声で、呼ぶ。 「ヤマト・・・」 大好きな大好きな場所。 キミはどこに居るの? キミと僕は、何で繋がっている? 秘密の・・・・・・。 「・・・そうだ・・・!」 太一は翼を広げる。 なるべく接触を避けながら、あそこに向かう。 いつも太一とヤマトの会っていた、あの浮石のあるところに向かって。 ヤマト。 伝えたい言葉があるんだ。 あの時、言えなかった言葉。 今度こそは絶対、言いたいから。 オレの口から、お前に。 「・・・いた・・・!」 やや右側の前方に、黄昏色の髪と夜空の翼を持つ青年がキョロキョロと何かを捜している。 そんなに長いこと離れていたわけではない。 それでも何故かその姿が懐かしい。 ・・・相手もここを捜しているということに、少し胸が高鳴った。 「ヤマ・・・!」 声をあげようとすると、自分に影が落ちたことがわかった。 ハッと後ろを見る。 そこには、血みどろになり、息も絶え絶えに太一に魔術を向けている堕天使がいた。 氷の刃だろうか。 焦る身体とは別に、心は異常に冷めている。 「忌まわしき天使どもめ・・・!我々の苦痛、思い知れぇ!!」 言葉が唱えられ、氷の刃が放たれる。 死ぬ。 せっかくヤマトに会ったのに。 まだ気持ちを伝えてないのに。 こんなところで、死んでしまうの・・・? 「や・・・だ・・・」 恐い。 「ヤマトォ!!」 ―――叫んだ瞬間、ふわりとなにかが自分を優しく包み込んだ。 見開かれた眼に飛び込んできたのは、金色の髪。 ―――――。 音が消えた。 ・・・刻って、こんなにゆっくりと流れていたっけ? 鈍い感触が、ヤマトを通して太一にも伝わる。 首と背中に回された手に、力がこもる。 黄昏の視界の端に、大空が見えた。 大好きな大好きな空の蒼に、紅が不気味なくらい綺麗に映えた。 コメント ・・・ようやく・・・出会えまし・・・た・・・?(だから聞くな) ちなみに今回のこれはかなり自分的に書いてて痛かったり(苦笑) |