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flying 37 大空が大好きだ。 浮石から見る一番空に近いところは、太一の一等地。 楽しかったとき、哀しかったとき、泣いたとき。 いつでもここに来た。 空の蒼が、大好きだった・・・。 上・・・『風の境目』周囲はひどいありさまだった。 錆びた鉄のような匂いが鼻をつく。 ひどい血の臭い。 死臭。 耳をつく、金属のぶつかりあう音。 太一の大好きな場所は、赤く、紅く、朱く、染まっていた。 吐き気がする。 ヒカリは卒倒寸前。 空も顔色を青くして、それでもなんとか立っているのは見上げた精神力だ。 と、太一たちのもとに一人、堕天使のものが攻撃を放ってきた。 『―――!?』 唖然としていた太一たちはそれに反応が遅れてしまう。 呪文が間に合わず、直撃を覚悟した時・・・。 「プロテクション!!」 太一たちの前に緑色の盾が出現し、魔術から守った。 声の聞こえた方を見てみると、ラカだった。 「来るなって行ったのに・・・どうなっても知らないからね」 見下すように言った後、ラカは再び戦いの輪に加わっていった。 「・・・行きましょう、太一・・・」 空の言葉に、太一は無言で頷いた。 レジストを唱え、堕天使領地へと入る。 そちらはもっと酷い有り様だった。 天使領地に入れない堕天使たちと、堕天使領地に入れる天使たち。 必然的に戦いの舞台は堕天使領地の方へと傾いてしまう。 または『風の境目』を真ん中においての互いに譲らない攻防。 「ヤマト・・・」 太一たちはその姿を探す。 「エア・スラスト!!」 また魔術が太一たちを襲う。 レジストのおかげでいくらか軽減できたものの、傷を負ってしまった。 「我等は傷を負いし白の子。 汝、水を司るもの『UNDINE』 ―ウンディーネ― よ・・・。 『REM』 ―レム― と手を取りあいて、我等に癒しの加護を与えたまえ・・・。 キュア・オール!」 さぁ・・・と傷が癒されていく。 「あまり精霊を無駄には出来ないわ・・・。私たちは短剣くらいしか武器を持っていない。 出来るだけ接触しないように進みましょう」 レジストにより、少しは精霊・・・法術を使うことが出来る。 制限があるからこそ無駄には出来ない。 太一たちは周囲に今まで以上に気を配りながら、ヤマトたちを探していく。 ヤマトたちは、戦いに巻き込まれていた。 「汝、清楚なる緑を身にまとうもの。 内に秘めし汝の力、我等に示したまえ・・・。 全てを塵に帰すべき切り裂きの力を我に! 六亡星の一角を司るもの、汝の名・『SYLPH』 ―シルフ― よ! サイクロン!!」 風系の魔術はヤマトの専門だ。 しかし、微妙に天使たちから外し、威力も抑えている。 『戦いを起こさせない』 それが、太一たちとの約束だから。 先程から一人も殺してはいない。 向かってくるものだけを攻撃し、脅しているのだ。 「丈!タケル!ミミちゃん!大丈夫か!?」 タケルと丈はともかくとして、連日の刺客との戦いでミミは体力、魔力共々消費している。 集中力が落ちているのが目に見えてわかる。 集中力の低下は、不覚に繋がる。 はっとしたとき目の前には、天使。 「ファイアー・ボール!」 タケルの横からの一撃で、なんとか攻撃を逃れる。 「あ、ありがと、タケルくん・・・」 力なく微笑むミミの顔色は、かなり悪い。 「どうする・・・?ミミくんがこんなんじゃ、ここにいてもいつかやられるぞ!」 「だが、ここにいれば太一たちに会える可能性は一番高い!」 「だけど!!」 丈の言うことももちろんわかる。 ここにいても犠牲を増やすだけだ。 「・・・丈、タケルも一緒につれて3人で下に降りてくれ」 「・・・ヤマト・・・!?」 「俺はまだここにいて太一たちを探してみる。丈、ミミちゃんとタケルを頼む」 一人になると言うことは、それだけ死ぬ確率が増える。 仲間が居れば、四方面を見渡せ、互いにかばいあうことが出来るから。 「ヤマト、本気か!?」 「本気だ。大丈夫。頃合いを見計らって俺も降りるから」 頼むな。 それだけいうと、ヤマトは丈たちから離れて行った。 とりあえず丈は下に降りることにした。 ミミがもう飛ぶことさえままならない状態だったからだ。 ゆっくり下降していると、突然背中に妬けるような痛みが走った。 「・・・・・・ぁ・・・っ」 背中が切られた。 あまりの衝撃に声さえも出せない。 ミミをかばうように、それでも敵・・・天使たちに向かい合う。 見ればタケルも腕に負傷している。 「ここから抜け出せるとでも思ったの?」 クスクスと笑いながら女は刃を振り上げる。 天使たちみんなに争いを避けるようにと伝わってはいない。 例え伝わっていても、天使たちには反堕天使たちが腐るほどいる。 いつか隙あれば。 そんなコトを思っている天使たちも少なくは無いのだ。 「神に逆らうものには制裁を」 剣が迫ってくる。 背中の傷が、深い。 暑いのに寒い。 冷や汗がさっきからとまらない。 呪文を唱えなければ、唱えなければ、唱えなければ・・・! そういくら思っても口が動いてくれない。 浅く速い呼吸だけがさっきから口をつく。 「死を持ってその身の愚かさを知るがいい・・・!」 死―――――・・・。 迫ってくる姿を見たくないのに身体が動かない。 タケルの声がヤケに遠くに感じられる。 キィン! いきなり視界が暗くなる。 タケルではない。 タケルはこんなに明るい茶色の髪をしていない。 長さだって、もっと短くて。 スカートもはいてるし・・・。 これではまるで・・・。 「丈先輩・・・!大丈夫ですか・・・!?」 前方から聞こえてきた声は、想い人の声だった。 言葉に出さず、想っていた人。 「・・・空くん・・・」 空は短剣で長剣を受け止めている。 ド。音がした後、天使がゆっくりと崩れていった。 後ろから姿を現したのは太一。 短剣の柄で相手を叩き、失神させたらしい。 「太一・・・」 太一と空はすぐに丈たちの元へ駆け寄ってきた。 自分の身体が、ゆっくりと崩れていくのが、やけに他人事のように思えた・・・。 コメント 出会えませんでした・・・!(苦) なんて約束破りな自分・・・!(泣) 今度は絶対させます!(何故かと言うと進まないから・・・) |