flying 35

刺客たちから逃げる中、ヤマトはハッと振り向いた。
「ヤマト?どうした?」
気付いた丈が、ヤマトに話し掛ける。
ヤマトは翔けるのをやめて、空にとまっている。
上の方の空に何かを見つけたように凝視する。
「・・・風が、騒いでる・・・」
ハッと、丈たちもヤマトの向いている方向を見つめる。
「・・・太一たち・・・?」
「・・・多分、違う」
太一が来たときは、こんな風にざわめかなかった。
興味を持った精霊たちが、好奇心から見に行く、というような感じだったのだ。
しかし、今回のコレは、まるで異質のものから逃げるような感じ。
「・・・行ってみよう」
ヤマトたちは、風のザワメク方向・・・サーナたちの方に向かって駆け出していった。

一方、天使領地では、着々と使者を送り出す準備が進まれている。
使者に命じられたのは、ヴァージという高位階級のものだ。
武術にたける男で、特に大剣を得意とする。
「では頼むぞ」
「お任せください。このヴァージ、必ずこの使命果たしてみせます」
ニヤリという笑いと共に言われたその言葉に、ロウはうむ・・・と頷く。
「それと・・・コレを持っていきなさい」
ロウがヴァージに手渡したのは、聖剣ロスト・セラフィだった。
「ロウ様!コレは・・・」
「ワシからのせめてもの礼じゃ。いざというときはこれを使ってでもして戻って来い・・・!」
切実に呟かれた言葉に、ヴァージは真剣に頷いた。
戦いのときは迫っている。
それまでになんとしてでもこの戦いを食い止めなくては・・・!

たどり着いたヤマトたちが見た光景。
それは、サーナとトーラの熾烈な戦いだった。
相手が属性を変えたら、その1歩2歩3歩先を読んで攻撃を繰り出す。
手加減なしの『殺し合い』は、その言葉どおり二人をボロボロにしていた。
「ヒドイ・・・」
刺激の強すぎたミミは、ガタガタと震えながら涙声でうめいた。
ミミに刺客はイヤと言うほどやってきている。
しかし、ミミはどれも血を流させず、一撃で確実にしとめてきた。
こんな流血沙汰の対決は、コレがはじめてみるのだ。
「コワイよぅ・・・」
ミミは丈にしがみつき、泣き始めてしまった。
先にこちらに気付いたのは、サーナだった。
「お前ら!何をしている!!」
剣をはじきながら、サーナは怒鳴り声をあげる。
トーラもはじかれた瞬間、間合いを取る隙を見てこちらをチラリと振り返った。
「お前らも神に反するものたちだろう!?こちらに来て戦わぬか!!」
サーナが怒鳴るが、ヤマトたちはそこから動かない。
チッとサーナは舌打ちすると、再びトーラに向かっていった。
「・・・ヤマト・・・」
丈がヤマトに話し掛けようとすると、タケルの息を飲む音が後ろから聞こえてきた。
気になって振り返ってみると・・・。
そこには、最悪の事態を想像してしまってもおかしくない光景が広がっていた。
堕天使たちが、こちらに向かってきているのだ。
予想以上の数に、サーナは再び舌打ちをする。
「どうした?恐ろしくなって戦う気も失せたか?」
小馬鹿にしたようなトーラの言い方に、サーナはうるさい!と叫び、漆黒の刃を振り回していく。
しかし、それはトーラに当たるどころか、剣と交わりもしなかった。
いつの間に回りこんでいたのか、カインが剣を弾いたのだ。
キィン・・・と澄んだ音と共に、アレクタリスは落下していく。
「・・・終わりだ」
息を呑むサーナの喉に、カインの短剣があてられる。
「バリアー!!」
ガキィンッ!
今度は剣が折れた。
カインの代わりに、トーラが声の方向に顔を向ける。
・・・そこには、ヴァージの姿。
ヴァージは『風の境目』を広げて、サーナに防御法術をかけたのだ。
続いて、レジストを唱えて堕天使領地へとはいってくる。
「・・・なにものだ」
「天使に決まってんだろ?お前の眼は節穴か?」
笑みと一緒に言われた毒舌は、サーナのよりもずっと効く。
トーラは一瞬言葉につまってから、何しに来た!と叫ぶ。
「・・・和解を求めに来たんだけどな・・・どうもそうも行かない様子みてぇだもんでさ・・・」
ヴァージは愛用の大剣を抜く。
「ロウ様にはわりぃが、俺も天使だもんでね。仲間は見捨てらんねぇだろ?」
サーナをかばうようにヴァージが前に出る。
カインも、トーラよりも前に出て戦闘態勢をとる。
しかし、絶対不利なのは目に見えてサーナたち。
これではあまりに多勢に無勢だ。
「・・・引くか・・・?」
「ならない!!これは神の定めた意志!私は戦う!!」
サーナはヴァージを振り切ってまた前に出る。
ヴァージは後ろで苦笑すると、大剣をしまい、腰に挿していた剣を抜く。
音で、サーナは振り返る。
トーラ、カイン、他の堕天使たちもその刀身をみてざわついた。
それは、聖剣ロスト・セラフィだ。
「さぁ来いよ。相手になるから来いよ?」
最初に手を出したのは、すぐ横に居た堕天使だった。
スッと横に振ると、当たっても居ないのに相手は吹き飛ばされていった。
ヒュウ。
口笛を鳴らしながら、本人であるヴァージでさえその威力に感嘆をもらす。
「こいつぁーすげぇ!羽根みてぇに軽いのに威力がそこら辺の剣とじゃ全然比べもんになんねぇ」
新しいオモチャを買ってもらってご機嫌のような表情のまま、ヴァージは堕天使たちを見ていく。
「さ、次はどいつだ?」

バタバタと騒がしい足音が響く。
その足は迷わずにロウの部屋へと向かっていた。
バァン!
やや乱暴な音を立てて大扉が開いた。
音に、ロウはしばしビックリしている。
誰が来るかはわかっていたが、こんなに乱暴に扉が開くとは思っていなかったのだ。
「どうしたのじゃ、空に光子郎。それにヒカリ」
開けたのは空たち。
その表情には、今までになく焦りの色がある。
「―――・・・太一が、向こう・・・堕天使領地に行ってしまいました・・・・・・」



☆NEXT☆


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つーぎから正面衝突です☆