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flying 31 誓約のもとになりたった制約。 それが禁術。 天使たちは基本的に魔術は使えない。 血は穢れとされているからだ。 そんななか、2つの攻撃法術がある。 光の粋を極めた攻撃法術と、神の雷。 そして、黄泉の者を蘇らす、死者蘇生法術。 この3つが禁術とされ、また、決まった条件・・・制約のもとに発動する、最高位法術。 この3法術だけは、今まで本当に数えるだけしか使われてはいなかった。 「ロウ様・・・わかっていただけてよかったわね」 神殿を出て、空はホッと呟いた。 「まーったくだ!これで向こうとの・・・ヤマトたちと戦わなくてすむもんな!」 太一がウーンと空に向かって伸びをする。 ヒカリはクスリと笑いながら兄を見ていたが、浮かない顔の光子郎が黙々と歩いているのを視界に捕らえた。 「・・・光子郎さん・・・?どうしたんですか?」 ヒカリがそっと話し掛けると、光子郎ははっとしたようにヒカリの方を向いた。 「いえ・・・サーナ様のコトが気になって・・・」 ああ、とヒカリは納得したように表情を曇らせた。 「悪い・・・方ではないんですよね・・・」 「ええ・・・ただ、神への信仰心がとても厚い方で・・・」 ふう、とヒカリはため息をつく。 太一は、そんな妹を励まそうと、わざとお気楽そうに笑顔を作った。 「だーいじょうぶだって!ロウ様だってオレたちに協力してくれるって言ってたし・・・そんなに悩むなよ! 兄ちゃんがついてるだろー?」 太一がヒカリの頭をポンポンと撫でてやると、ヒカリはくすぐったそうに、嬉しそうに微笑んだ。 闇が、世界を包む。 辺りを照らしてくれるのは、地上からの灯火と星と双月のわずかな光のみ。 それにかまわずサーナは、グングンと空を昇って行く。 辿り着いたところは、『風の境目』であった。 サーナはバサリと翼を広げると、『風の境目』に手の届くところで、足に風を纏わせ、翼をはためかさなくても浮けるようにした。 そこから、さらに自らの法術で、空中に魔法陣を描いていった。 準備が整うと、サーナはふう、と息を整え、一枚のなんからのカタチにハサミを入れられた紙を取り出した。 右の人差し指と中指に挟み、眼を静かに閉じる。 「敷居に収まりしは我の与えし仮の命。 風の恵みによりて、掌を飛び立ちしは空の翼を与えられしもの。 汝、風を司しもの『SYLPH』 ―シルフ― よ・・・。 我が依代に命の吐息を与えたまえ! プロビジョナル・ライフ!」 途端、紙に風が集まり、紙が鳥の姿を模した。 それは鳥の姿をしただけでなく、なんと動いたのだ。 『プロビジョナル・ライフ』 風見師の使う限定法術で、風の力により、依代(よりしろ)に仮の命を与え、自在に操る法術。 「堕天使領地に赴き、この毒胞子を撒き散らせ。 いいか、なるべく中枢にだ。 ・・・・・・さぁ、お行き!」 サーナは式神を放ち、『風の境目』に穴を開け、向こうの領地へと侵入させた。 式神は崩れることなく侵入に成功し、任務を果たすべく地上へと降りていく。 ・・・サーナが細く笑んだ瞬間。 ッパァンッ!! 風船の割れるような音がして、式神が破裂・・・いや、破られた。 「・・・・・・っセパレート!!」 サーナは間一髪、式神との糸を切る。 式神が破られると、その術は術者に跳ね返ってきてしまう。 その繋がりを解く呪文が、『セパレート』なのだ。 きっと睨んだ向こう側には・・・他でもない。堕天使側高位階級のトーラとカインがこちらを、サーナを睨んでいた。 「随分な扱いではないか」 トーラが腕を組みなおし、サーナを見下す。 「当然のことだ。お前らの同士は我らの領地を侵した。 罰は身をもって償わなければならない」 「愚の骨頂よ。先に仕掛けてきたのはお主らであろう? 我らに反撃を有するこれ以上の理由があるか?」 たわけものめ。そんな風にトーラは鼻で笑った。 「神、神、神。そんなに神が愛しいか? それならばその身、神に捧げればよいではないか。手助けするぞ?ん?」 トーラの小馬鹿にしたような口答えに、サーナの表情が怒りへと変わる。 「お前ら!それ以上神を侮辱してみろ!天罰を与えてくれる!!」 「やれやれ・・・また『神』か・・・。馬鹿の一つ覚えじゃのう」 3人・・・いや、女2人の間に恐ろしいほどの緊迫した空気が流れる。 サーナが、ビッとトーラを指差し、こう告げる。 「神と精霊の名のもとに、お前らに天罰を与える!! 見ていろ・・・その表情を後悔のどん底に立たせてやる!」 「おもしろい!やてみるがいい! が、我らとてやられるだけなぞ性に合わん。 その時は神の懐にでもお送りしてやるわ」 フン、と嘲笑し、トーラとカインは『風の境目』から離れていった。 顔を怒りに染め、腕をブルブルと憤怒に奮わせる。 サーナの姿が神殿から消えたのは、それから数日後のことだった。 コメント 女の戦いの巻ー・・・(笑) 個人的にはトーラさんが好きだったり(笑) 次辺りから戦い繰り広げて行こうと思いますー。 |