flying 30

ヒュっと鋭い音と共に、太一たちは神殿へとたどり着いた。
「・・・はや・・・っ!」
いつもと同じように飛んでいるはずなのにスピードが格段に違う。
これが高位階級の力。
平然と使いこなすヒカリが太一は羨ましい。
「で、ヒカリ。どうするんだ?」
太一が横に並ぶと、ヒカリは神殿を見つめたまま答える。
「ロウ様に会いましょう」
『ロウ!?』
そこに居る3人の声がハモる。
ロウは、天位階級のもの。
それゆえ神殿からは必要以上出ない・・・否、出れなく、幻の存在と言われているものだ。
「ヒカリ、ロウ様に会えるのか!?」
「うん・・・前にちょっとあって・・・何回かお話したことあるの。
そしたらなんか私のコト気に入ってくれたらしくて・・・」
ヒカリは、太一同様人を引き付ける魅力がある。
「すっごく気さくな方でね、多分お兄ちゃん、一目で気に入られると思うわ」
冗談も交えたその言葉に、少し緊張が解けた。
「でも、ヒカリはともかく、オレたちは最低階級だぜ?
ロウ様会ってくれるのか?」
「ええ。だって内緒で会うもの」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
『は?』
さらりと笑顔つきで言われた言葉に、太一たちは思わず聞き返してしまった。
「ひ、ヒヒヒヒヒヒカリちゃん・・・?それって・・・つまり・・・」
「侵入する、ってことになりますかね?」
なんでもないことのようにヒカリはいい、神殿を見上げる。
「ロウ様は最上階に居ます。ここから飛んでいけば見つかる可能性は低いし・・・」
大丈夫ですよ。再度ニッコリと言われた言葉に、空たちははぁ・・・と頷くしかなかった。
「やっぱりヒカリちゃんは太一の妹ね・・・」
空の呟いた言葉に、光子郎はその通りだな、と心のそこから思った。

神殿は天使領地最大の建造物。
巨大な神殿を、太一たちはグングン昇っていく。
「――――ここです!」
ヒカリは静止をかけ、テラスへと降りた。
「・・・居るか・・・?」
「・・・うん・・・!」
ヒカリは頷いて、太一たちもこちらに降りるように手を振る。
「まずは私が行って事情を説明するね」
うん、と太一たちは頷く。
「ヤバいと思ったら絶対戻ってこいよ!」
「うん」
ヒカリが立ち上がり、窓に手をかけようとした時、窓は向こう・・・内側から開かれた。
『!!!!!』
これには全員身を固くした。
逃げようと翼を広げようとしたとき、顔を出したのは温和そうな老人だった。
老人は太一たちを優しく見渡すと、ニッコリと微笑んだ。
「逃げんでもいいよ。ぬしはヒカリじゃな・・・」
老人は、ヒカリの方を見て、ニッコリと微笑む。
「あ・・・はい!お久しぶりです、ロウ様!」
「うむ、ぬしも息災そうでなによりじゃ」
ロウは豊かなあごひげを撫でながら太一の方に向き直る。
「して、こちらの若者たちは何者かな?」
太一たちは眼が合うとはっと我に返り、身を正して挨拶をする。
「はじめまして!オレ、ヒカリの兄の太一っていいます!」
「わ、私は空と申します」
「僕は光子郎と申します。お、お会いできて光栄です!」
ペコリと4人そろって挨拶をする。
ロウはその初々しさに、微笑を浮かべる。
太一のような太陽の微笑とは違う、木漏れ日のような笑顔。
「そうか。おぬしらが堕天使と交流をもつものたちか」
少し眼を見開くと、好奇心旺盛そうな翠色の瞳が白髪の眉から覗いた。
「あの!オレたちはじいさん・・・じゃなくてロウ様に用があって!」
「ふむ。そのようじゃの・・・。して、用件とは?」
「あの・・・!」
「おっとその前に・・・」
太一の勢いはロウのおっとりとした声にそがれてしまった。
「ここで話すのもなんじゃな・・・中に入ってお茶でも飲みながら話そうではないか」
ロウは決定済みらしく、とっとと中に入って紅茶を入れはじめた。
ポケッと太一たちがしていると、ロウが太一たちを呼ぶ。
「おぬしらもはいらんか。立ちながらはつらいじゃろ?
時に、おぬしらは甘いものは平気か?
そうか、大丈夫か。イチジクの砂糖漬けでもだそうかのう・・・」
楽しそうなその様子は、孫が来たことを喜ぶおじいちゃんのよう。
太一たちは、想像していたのとあまりに違う天位階級のものに、少々唖然としていた。

「ふむ・・・堕天使のものたちとのう・・・」
とりあえずロウが用意してくれたお茶と菓子をつまみながら事情を話す。
「オレたちはなんにも悪いことはしてない。
会うことが許されないなんて、そんなの間違ってる」
太一は紅茶を飲みながら、真剣にロウを見つめる。
「・・・おぬしは、これからも堕天使たちと会うのか?」
ロウが質問すると、太一は黙ってから、わからない。と首を振った。
「何故、わからないのじゃ?」
「会いたいって思ってるのはオレたちだ。ヤマト・・・堕天使たちじゃねぇ。
なのに、無理して会って、向こうを巻き込む事なんてしたくない」
カチャ、と陶器が擦れる音を立てながら太一はカップを皿に戻す。
真正面に座っていたロウは、立ち、太一の方へと回りこんだ。
太一たちがその行動にクエッションマークを浮かべていると、太一たちの頭をひとりずつ、撫でていった。
「おぬしらはいい子じゃの。
自分の気持ちを押し付けず、それでも行動はする。
なんとも矛盾した行動だが、わしはそういうのは嫌いではない」
再びクッションのきいたソファーに腰掛け、太一の瞳を覗く。
太一はなにか全てを見られている気がして、それでも瞳をそらさなかった。
そらしてはいけないような気がした。
自分たちは間違ってはいない。そう、信じてほしかった。
しばらくして、先に眼をそらしたのはロウだった。
「みな、曇りなきよいまなこをしている。
わしも、ぬしらの考えを信じよう」
「それじゃ・・・!」
ロウが豊かに微笑む。
「天位階級の名にかけて、この戦争を阻止してみせよう」
太一たちの表情に、初めて笑顔が浮かぶ。
「ありがとうございます!!!」
それぞれに、ロウに礼を述べる。
「ヒカリよ」
「は、はい」
「良き兄と友人を持ったの」
ロウのその言葉に、ヒカリは頬を染めながら、最高の笑顔でハイ!と頷いた。

廊下でその話を聞いていたのは、他でもないサーナであった。
表情には、激怒が浮かべている。
―――許せない!!そんなこと、許さない!!
これは、天使たちが堕天使たちよりも優位に立つために『しなくてはいけない』戦争なのだ。
それを、阻止されてたまるものか!
サーナは扉を開けることなく立ち去った。
「戦いは運命つけられたこと。私は、神の意志に従う・・・!」
サーナは十字をきり、早歩きで神殿から立ち去った。



☆NEXT☆


コメント

太一バージョンですー。
後10話くらいで(多分)終わります・・・(汗)