flying 3

「うっひゃー!!疲れたー!!」
太一はようやく『風の境目』へとたどり着いた。
向こうとこちらでは風の流れ方や性質が違う、ここまで来るのに一苦労だった。
ひーひー言いながら浮石に身を落とし、寝転ぶ。
「なぁ〜んだってあんなに風が乱れてるんだよ!気性が荒くて操りにくすぎー!!」
太一はぜーぜーっと息を整えながら叫ぶ。
「はぁ〜まっさか向こう側に落ちちまうなんてな〜・・・ウカツだった〜・・・」
助けてくれたヤツが親切だったからこうしていれれるけど・・・。
アレがヤなやつだったら今まさに首を切られているだろうな。
「あ〜・・・そういえばあいつの名前聞き忘れたっけな〜・・・」
金髪に蒼色の目・・・。秀麗な顔立ちの、オレを助けてくれたヤツ。
「もっかい会いたいなぁ・・・」
やっぱり。堕天使だからって全部が悪いやつなんかじゃなかった。
現にオレが助けられたんだし。
太一は自分だけ持つ秘密に、心をワクワクさせた。
「光子郎でも知らないよな!こんな秘密!」
太一は立ちあがると浮石から足を離し、空を滑空し始めた。
「また会えるといいなっ!」
太一はそのまま地上へと戻って行った。
・・・下で学校をサボった太一を探している、怒りまくった空がいるとも知らず・・・。

ヤマトの父は、高位階級に位置する堕天使だ。
なので、生まれてすぐから否神殿(ひしんでん)の中で育ってきた。
だが別に特別な待遇を受けるとかそういうのではなく、言ってしまえば施設なような感じだ。
ヤマトの母は、ヤマトの弟のタケルが生まれた時に離婚してしまい、育てるものがいなくなったからだ。
幸いだったのは、二人は完全な決別をしようとはせずに、月に何回か会う事、それに、どちらの親や兄弟に連絡しようとかまわないというコトだった。
ヤマトは暇な時があればタケルと連絡を取り合って会いながら、互いの生活を報告しあっている。
「おに〜ちゃ〜んっ!」
向こうから、濃い、茶色とは違う・・・黒に黄色がかかった翼をもった少年・・・ヤマトの弟のタケルがかけて来る。
「タケル!」
「久し振り!お兄ちゃん!」
タケルは息をハァハァさせながらヤマトに笑顔を見せた。
「ホントに久し振りだな・・・1ヶ月ぶりくらいか?」
「そうだね。お兄ちゃんまた背ぇおっきくなったでしょ?」
「まぁな。そういうタケルも伸びたんじゃないのか?」
「うん。節々が痛くて困ってるよ。・・・その内お兄ちゃんも抜いちゃうかもよ・・・?」
「言ったな!」
「あははははっ」
何気ない会話をしながら、タケルの家へと向かう。
久々の兄弟の対面に、どこか緊張しながら、それでも、本当に久し振りの対面を喜んで。

「・・・なんかお兄ちゃん、嬉しそう。・・・なんかあったの?」
「?そ、そうか?」
「うん。ご飯作ってる時なんて鼻歌唄っちゃってさ。
何があったの?教えてよ〜!」
タケルは擦り寄ってくるが、さすがにこれは教えられない」
「なんでも無いって。ほら!メシ食ったら風呂入れって!」
「ちぇ〜」
タケルは笑いながらバスルームへと向かう。
ヤマトの父親が、妻とタケルの為に建てたこの家は、とても住みやすくて快適だ。
二人がなんで離婚なんかしたのかは、いつの頃からか聞かないのが二人の間で決められたコトだった。
離れていても父親は二人に援助金を送ったり、ソレと一緒に二人宛の手紙もいれている。
前に母親の書斎を掃除した時に見つけた、大切に保管させた父親の手紙。
母親は照れながら、
「あの人が書いてくれた手紙だから・・・」
と、話してくれた。
ヤマトもタケルも、小さな頃は一人ぼっちだった。
親がいない大きな部屋での独りの留守番。
それがたまらなく嫌だったし、寂しかった。
親を恨んで、人とうまく接することが出来ずに閉じこもった時期もある。
だが、それに気付いてくれたのも、両親だった。
それがキッカケで、ヤマトもタケルもだんだんと心を許すようになっていき、今では一番いい関係を築けている。
ヤマトはどうも元が人見知りする性格だったらしく、今でも許されたものにしか心を開かないが・・・。
それでも、今の生活が気に入っているし、手放す気もない。
「お兄ちゃん」
「ん?」
ヤマトは洗い物をする手をやめて、タケルに視線をやる。
タケルは微笑みながら、
「なにかが、起こるよ」
と呟いた。
「カンか?」
「カンだよ」
「そうか・・・」
タケルのカンは良く当たる。
もしかしたら、『あの事』が関係しているかも知れない。
だが、もしまた会えるなら、なんか起こってもいいかもな。
そんな不謹慎なことを思いつつ、ヤマトは洗い物をする手を動かした。



☆NEXT☆


コメント

説明を踏まえながら物語を進めていきます・・・。
だから多分すっごく読みにくいです・・・(苦)