flying 29

一方、太一たちは。
ヤマトたちを見送ったあと、しばらく『風の境目』を眺めていた太一たち。
ふっと眼をそこから外すと、ヒカリの強張った顔が視界に入ってきた。
視線の先。
そこには・・・。
「サーナ・・・様・・・」
そこには、密かに太一たちを見張っていたサーナの姿があった。
これには太一たちも驚きを隠せない。
サーナはやや眼を見開いて驚いていたが、あくまでそれは一瞬の事だった。
「お前たち・・・やはり堕天使のやつらと密通していたのか・・・!」
サーナは静かに激怒する。
「サーナ様!これは・・・!」
「ヒカリ!お前もやはり仲間だったか!」
せっかく目をかけてやったのに!そんな風にサーナは言うと、右手に法力を収束させた。
「この事は他の高位階級たちに報告する。
堕天使たちとの戦いが始まるであろう。お前たちにも眼にモノ見せてくれるわ!!」
サーナはそういい残し、突風と共に去っていった。
太一たちは、しばらく唖然としていた。
最初に動いたのは、太一だった。
「・・・まと・・・!」
「太一!!」
太一は『風の境目』に飛び込もうとしたが、反応の早かった空に引き止められる。
「空!どいてくれ!!」
それでも太一は暴れて空の静止を振り切ろうとする。
暴れる太一に、空は右手を太一から大きく離し、思いっきりはたいた。
パァン。
痛々しい音が空にこだまする。
太一は殴られた頬を押さえることもせず、ただ呆然としている。
空は太一から手を離し、今度は両肩に手を置く。
「落ち着きなさい、太一。
考えてみなさい、今向こうに行ったらそれこそあっちの思うツボ。
全面戦争になっちゃうわ!!
今は、冷静に、こちら側から対処していくの!!」
一字一句しっかりと、それこそ自分に言い聞かすように空は言う。
太一は、何か言いかけて、うん。と小さく頷いた。
「じゃあ早速サーナ様を追いかけましょう!」
ヒカリがなにやら浮石に魔方陣を描いている。
法力増幅の法陣。
ヒカリほどのものがこの魔方陣を描くということは、結構大きな法術を使うということだろう。
法陣の中心に立ち、六亡星と十字を切る。
「風よ。全ての息吹を司る風よ。
汝の力、時の力に換え、我らを彼の地へと送り出したまえ・・・。
汝、風を司しもの『SYLPH』 ―シルフ― よ・・・。
我らを風に換え、走らせたまえ!
ヘイスト!!」
一瞬、さらりとした風が身体に纏った感じがした。
違和感はすぐに消えたが、身体がものすごく軽くなった。
「ヘイスト・・・移動速度を速める法術ですね・・・」
光子郎が関心したように呟く。
ヘイストは風に属しているが、精霊をわけてみると時の精霊ゼクンドゥスも含まれている。
前にも言ったが、円陣から外れているマクスウェル、ゼクンドゥスは大きな力のためそうは操れないのである。
「あまり時間はもちませんが・・・これでサーナ様とは追いつけるはずです」
まず始めにヒカリが翼を広げた。
続いて太一、空、光子郎。
4人は浮石を思いっきり蹴ると、ものすごい勢いで神殿を目指した。

トーラとカインを撒いたヤマトたちはとりあえず離れた林の樹に身を潜めている。
「すぐにここも見つかるな・・・。定期的に動こう」
丈が周囲に気を配る。
「そろそろ完全に日が暮れるね・・・」
タケルが顔を上げる。
樹の先端にだけ、夕日が見えていた。
「多分、あいつらは刺客を放つだろうな・・・」
ヤマトが殴られた右頬をさすりながら言う。
「・・・ミミが言っても、無理なのかな・・・」
「多分無理だろうね。ミミくんの立場は、あくまで正常の範囲。
反逆を犯したものにその必要性はないからね・・・」
「・・・・・・」
丈の容赦のない言葉に、ミミは再び俯く。
そんなミミの様子をみて、ヤマトが囁くようにミミに問う。
「ミミちゃん・・・。こんなことに、なっちゃってさ・・・太一たちに出会ったこと、後悔してる・・・?」
ヤマトの質問に、ミミは顔を上げて、やや驚いたようにヤマトを見つめる。
ヤマトの困ったような真剣な表情に、ミミは微苦笑を漏らした。
「私たちはなんにも間違ったことしてないわ。
後悔する暇があったらこの戦いを阻止しなくっちゃ☆」
いつも通りにふるまうミミに、ヤマトは苦笑を漏らす。
泣き虫で、我侭で・・・なのになんでこのコはこんなにも強いのだろう。
「とりあえず、今日は僕たち3人で交代交代番をしていこう」
タケルの発案に、否を唱えたのはミミだった。
「ミミも番するわ!女の子だからって差別しないで!」
ぷうと膨らませた頬を微笑ましげに見つめて、タケルは丈に助けを求めた。
「ミミくん。別にキミをトクベツ扱いしているわけじゃないんだ。
敵は高位階級クラス。
はっきり言って僕たちの力じゃ勝てる自信は無い。
でもミミくん。キミは天位階級だ。いざという時のためにも体力を温存していて欲しいんだ」
ね、という丈の言葉に、ミミはまだ納得のいかない様子。
やれやれ、と丈はもう一言付け加える。
「次に光子郎たちに会うとき、ボロボロの顔で出迎えるのかい?」
「ミミ、寝る!体力温存しとくー!!」
丈のその一言に、ミミは手の平をひっくり返したように態度を変えた。
・・・これは使える!!
そこに居た3人が、それからなにかあると光子郎の名前を出すようになったとか。



☆NEXT☆


コメント

対戦の時が近づいて参りました!!
どうなるどうなる!?(死)