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flying 26 夕暮れ。 日が完全に沈んだ後、太一たちは、例の『風の境目』に一番近い場所へと向かった。 「さて・・・光子郎くんの話だと、天使領土に居るときは飛べないって聞いたんだけど・・・?」 「うん。翼をね、動かそうとしてもなんか金縛りにあったように動かないの」 空にミミが答える。 空は少し考えてから、 「じゃあ一人が一人ずつ抱えて行きましょうか・・・」 「そうだな。それが妥当だな」 空に太一も従う。 それを聞いて一番に行動を開始したのは、ミミだった。 「じゃあ、ミミ、光子郎くんがいいーv」 ぺターっと光子郎にくっつく。どうやらもう決定済みらしい。 「ちょっ!ミミさん!!」 頬を紅らめながら、ミミから離れようとする。 ミミは、そんな光子郎の態度がえらくご不満らしい。 「なぁ〜んでぇ!いいじゃない〜!」 ぎゅーっと光子郎の腕にしがみつく。 「光子郎、諦めた方がいいぞ。そうなったミミちゃんはテコでも動かないから」 そうそう、とヤマトに丈やタケルも苦笑を浮かべながら同意する。 光子郎は困ったようにミミに顔を向ける。 すると、ミミの潤んだ瞳と目が合った。 「もしかして光子郎くん・・・ミミのこと嫌い・・・?」 「ち!ちが!そういうんじゃなくて!!」 光子郎はミミが言い切る前に必死で否定した。 「ただ・・・恥ずかしいって言うか・・・照れちゃうんですよ、やっぱり」 光子郎は照れから、ミミから顔を逸らしてボソボソと呟く。 しかし、ミミはそれを許そうとせず、光子郎の襟をつかんで無理矢理自分の方を向かせた。 「じゃあ、じゃあ!嫌いじゃない!?」 「も・・・もちろんですよ・・・」 ポツリともらした言葉に、みるみるうちにミミの顔が高揚していった。 「光子郎くんだいすきーvvv」 改めて光子郎に抱きつく。 光子郎は恥ずかしげに、でも嬉しそうにミミを受け止めた。 と、周りの視線がこちらに痛いくらい向いていて、光子郎は首筋まで紅くした。 「・・・ま、あそこのカップルさんは決定らしいから、後は私たちね」 誰がカップルですかー!?と光子郎の声が聞こえたが、空はあえて無視した。 「あ、オレヤマトがいい」 な!と太一はヤマトの隣に立つ。 ヤマトも別に断る理由はないので、コクリと頷く。 太一は満足げに笑うと、くるっと空たちの方を向いた。 「じゃあ空と丈、ヒカリとタケルでいいよな」 『えっ!?』 太一のさらりといった言葉に真っ先に反応したのは、本人たちの空と丈だった。 「ちょ!太一!なんでそうなるのよ!!」 「え・・・だって空、タケルよりも丈との方が親しそうだから・・・」 「だとしても、僕たちは男と女なんだよ!?ふふふ触れ合うなんてそんな!!」 意外に純情な丈。 「え?僕はヒカリちゃんがいいなー」 タケルがキョトンと言い放つ。 それから、ね、とヒカリに同意を求める。 ヒカリは、ちょっと恥ずかしそうに、でも嬉しそうに頷いた。 「ね♪きーまり♪」 タケルの嬉しそうな声に、丈と空は、あきらめた。 太一たちは、前に光子郎が使ったように、『フロート』を使い、空へと舞い上がった。 「前にも思ったけど、自分で飛んでないって不思議な感じねー」 ミミが光子郎につかまりながら感心したように呟く。 「昼間の街、ゆっくり見てみたかったなー・・・」 「今度は、ちゃんと領土問題に決着がついたらくればいいんですよ」 光子郎がニッコリとミミに返す。 ミミは頬を少し染めながら、うん!と本当に嬉しそうに呟いた。 「そのときは、光子郎くん案内してくれる?」 「・・・もちろんですよ」 そういって、光子郎はにしては珍しい、柔らかい笑みを浮かべた。 「ヒカリちゃん、大丈夫?」 ヒカリに手を引っ張られながら空へと登って行く。 本当に細いその腕は、ちょっと力を入れたら折れてしまいそうで、タケルは握る手の力加減に必要以上に気を使っていた。 ヒカリもそんなタケルの優しさに気付き、ニッコリと太一に良く似た笑顔を浮かべた。 「私、こう見えても法力あるんだから。大丈夫だよ」 健気な言葉に、タケルは心を揺らがされる。 「・・・ヒカリちゃん」 「なぁに?」 「また、絶対会おうね」 タケルの言葉に、ヒカリはやや眼を見開いて驚く。 うん、と頷いたその顔は、これまで見たことが無いくらい綺麗だった。 「・・・・・・」 「・・・・・・」 『あの・・・』 今まで沈黙していたが、いざ話をしようとするとうまく声がハモってしまった。 「き、キミの方からどうぞ」 「いえ、丈さんの方から・・・」 堂々巡りを繰り返していると、空の方から再び口を開いた。 「・・・ミミちゃんのこと、『ミミくん』って呼ぶんですね・・・」 何故か聞きたかったこととはまったく違うことを口が放つ。 「う、うん・・・。なんでかな・・・向こうに勉強とか教えているうちに、なんか家庭教師と生徒みたいな関係になっちゃってね」 恥ずかしげに丈が笑う。 「私も・・・」 「うん?」 「い、いろいろ教えてもらってもいいですか・・・?・・・・・・じ、丈センパイ・・・」 気付かないふりして、ホントは始めてあったときから気になってしょうがなかった相手。 ずいぶん遠回りな言い方だが、奇跡的にも鈍い丈に伝わった。 丈はにっこりと笑む。 「もちろんだよ、空くん」 他の三組とは違い、沈黙の続く太一とヤマト。 別にケンカもしてなければ無視もしていない。 ただ、なんとなく気まずいだけ。 特に、手を引かれているヤマトは、緊張してしょうがなかった。 最近、ようやく自覚したこと。 ―――――・・・太一を、恋愛対象として、『好き』ということ。 せっかく気付けたのに、ようやく気付いたのに、会えないなんて。 そんなことを考えていたので、自然、口が閉じてしまったのだ。 「ヤマト・・・?」 不自然に思ったのは太一。 「ん?」 顔をあげると、太一としっかり目が合った。 「・・・せっかく、会えたのにな」 太一にしては珍しく、寂しそうな笑みを見せる。 「もう会えないのかな・・・」 寂しいよ・・・今にも泣き出しそうな表情。 ヤマトは少しその表情に見とれていたが、すぐにいつもの表情に戻る。 「太一」 「ん?」 「言葉は、放った瞬間に力を持つんだろ?」 昼間、太一がヤマトに言った言葉。 「また、会えるから」 「――――・・・・・・・ん・・・」 また、会えるから。 太一は、心の中で反復する。 「・・・なんでだろうな」 「なにが?」 「ヤマトの言葉は、一番安心する」 会えるから。 言葉を、繰り返す。 「・・・・・・太一・・・」 「なに?」 途端、風が唸った。 太一の耳元に、ヤマトの声は届かなかったが、口の動きを見て何を言ったかが読めた。 話し返す暇も無く、『風の境目』へと到着した。 「・・・マト・・・」 浮石に足を下ろし、太一は小さな声でヤマトを呼ぶ。 ヤマトは、太一の方を振り返る。 「今、なんて・・・」 ヤマトは少し虚空に視線をさまよわせた後、再び太一に瞳をひたとあわせた。 唇が、紡ぐ。 ―――――――――――好きだ。 コメント 長い上に支離滅裂って一番ヤな例だよね・・・(苦) さて、あと10話くらいで終わる(つもり)です。 最後までがんばりますー! |