flying 23

こうしてお互いが緊張している中、ついに沈黙がやぶられてしまった。
『風の境目』に居る人物。
それは、いつもの太一の姿の他に4人。
ヤマトに丈にミミにタケルだ。
ミミとタケルがどーしても行きたいといい、太一が大賛成したため、行くことになった(丈は半分好奇心、ヤマトは半監視役として)
「楽しみだねー天使領地♪」
ノンキな声で喜んでいるのは、タケルだ。
「いいかい、ミミくん。勝手な行動はしちゃ駄目だよ」
「わかってるってばー!もー!丈先輩ったら何回言えば気がすむのー?」
せっかくの気分を台無しにされ、ミミはブーブーと丈にあたる。
ヤマトは心配そうに太一を見る。
「だーいじょうぶだって!」
視線に気付いた太一は、いたずらっ子のような笑みをヤマトに見せる。
「でもな・・・」
「向こうに行ったら飛べなくなっちまうんだろ?
だーいじょうぶ!オレの法力を信じろって!」
太一がニパ〜☆と笑うと、ヤマトは一瞬後太一から眼を逸らしてしまった。
どうも顔を見るのが恥ずかしくて・・・。
「??ヤマト?」
太一は眉を寄せてヤマトの表情を見る。
「な、なんでもない・・・」
「・・・そっか?」
いまいち納得のいかないが、ミミが後ろでうるさいので出発することにする。
「いいか?向こうについたらオレがすぐにフロート唱えるから、絶対手を離すなよ」
太一が真ん中にいて、右側にヤマト、丈。左側にミミ、タケルと手をつなぐ。
皆の手がつながれているのを確認し、太一を最初に『風の境目』へと飛び込んだ。
風の荒れは、予想以上にすごかった。
ただ、太一と握っている手だけは、風圧を感じず、そこだけが穏やかな風に守られていた。
「出る!」
太一の言葉が、永遠に近い一瞬の間に聞こえた。
と、身体に巻きつく荒れ狂う風がやんだ。
ほっと一息をつこうとした、その時。
ずしぃ!と翼に重りがついたように、とんでもない重力がかかった。
「ぐ・・・!」
思わずうめき声をあげてしまうと、半分落下しているのと同時に、太一がブツブツ何かを唱えているのが聞こえた。
多分必死に法術を使おうとしているのだろう。
だが、落ちるにつれてすごい重みが身体を襲う。
「き、あ!」
するどい、あせったようなミミの声が小さく聞こえる。
しかし、太一もヤマトも丈も・・・みんな自分のことと、手離さないことに精一杯で構うことも出来ない。
だんだん感覚が薄れてきた。手も、しびれた。
太一の周りに風が収束するのがわかる。
でも・・・もう・・・・・・!
「フロート!!」
太一の法術が完成し、落下が急速に止まる。
しかし、それがいけなかった。
ガクン、といきなり重みがかかり、ただでさえ滑りそうな指が、相手の手を離してしまったのだ。
「しまっ!!」
太一のあせった声が聞こえる。
ミミが、金切り声で叫んでいる。
遠くの方で、太一が自分の名前を呼んでいるのがわかった。
『ウィング・ウィンド!!』
そこに、知らない男女の声が聞こえた。
途端、重力が消えて、ふわりと身が浮いた。
ぼんやりとしている意識を、無理に浮上させる。
以外にすぐ近くに、太一の顔があった。
太一の瞳は少し潤んでおり、それでいて驚きの表情を浮かべていた。
その、視線の先には・・・。
「――――――――空・・・光子郎・・・」
呼吸を忘れてしまったような、かすれた声。
太一の力を借りて、なんとか身体を立たせる・・・もとい、風を踏む。
正面には、それぞれ右腕を前に出し、法術を使っている男女二人がいた。
女の子の表情は、怒りそのもの。男の子の表情は、呆れたような真剣な顔。
無言で、丈たちを近くの浮石に身を下ろしてやる。
太一も、ヤマトも、それに続く。
「空・・・光子郎・・・」
太一は何か言いたそうな、言えないようなバツの悪い顔色をしていた。
空と呼ばれた女の子は、仁王立ちをして、黙って太一を見つめ・・・睨んでいた。
光子郎は、降り立つと同時にミミの方へと歩んでいった。
「太一・・・」
空が太一の名を呼ぶ。
太一の身体がビクリと震える。
まるでいたずらを見破られた子供のようだ。
空はまたちょっと無言でいたが、やがてはぁ、と大きなため息をついて太一と同じ目線になるように座り込んだ。
「太一」
「・・・オレは、悪いことはしてない・・・」
太一が服のすそをぎゅっと握り締める。
「そう」
「空・・・」
「なんで、ここにいたんだ?」
「太一を探していたに決まっているでしょ?」
そこで、また沈黙が落ちる。
「太一」
先に口を開いたのは、空だった。
「私は、あなたを責めているんじゃないの」
空の瞳が、寂しげに伏せられる。
「太一に、こんな重大なことを隠されていたのがショックなの」
わかるでしょ?となだめるように言われれば、太一はコクリと頷いた。
「高位階級たちに、黙っていて欲しい?」
また、大きく頷く。
「じゃあひとつだけ約束してちょうだい。もう、隠し事や、内緒事はやめて。
私だって、あなたが心配なんだから」
「・・・わかった・・・」
ごめん、と太一が小さく謝る。
優しく、太一の頭を撫でた後。
空はヤマトに視線を送った。
「天使領地へようこそ。私は空。よろしくね」
先程とは正反対の表情でヤマトに微笑みかけた。
「あ、ああ・・・」
「空さん!」
そこで、光子郎の高めの声が響いた。
「どうしたの?」
「・・・一人、落ちました」
光子郎が、静かに伝える。
その後ろには、真っ青になったミミが、光子郎に縋り付いていた。
「・・・タケル!!」
それで、ヤマトはタケルが居ないことに気がついた。
空は、また真剣な表情に戻す。
「今からじゃもう間に合わない・・・!」
悔しそうに、呟かれる。
「そ・・・んな・・・」
ヤマトの視界が真っ暗になる。
「ヤマト、ヤマト!!まだ死んだって決まっていない!」
太一が、ヤマトを必死に励ます。
「だって・・・ここから飛べもせずに落ちたら・・・!」
そこまで言いかけたヤマトの口を、太一が手でふさぐ。
「言葉は、放たれたその瞬間に力を持つ」
『言霊』と呼ばれる、術に近い詠唱のことだ。
太一の目元が、ふっと和らぐ。
「ここは神が支配するところだ。信じていれば、なんとかなる」
信じていれば。
太一のその言葉を、ヤマトは必死に繰り返す。
「・・・わかった・・・」
落ち着いたヤマトの身体を、太一が優しく抱く。
そして、大丈夫、大丈夫と呟いてくれる。 その身体は、少し震えていた。
それでも自分を励まそうとしてくれる太一が、愛おしくてたまらなかった。



☆NEXT☆


コメント

ついに、ばれちゃいましたー。
短くするつもりが結構長く!!
文っておっそろしー(あんたの文才の無さが一番恐ろしいわ)