flying 18

夕焼けの朱が闇の紺に劣ってきた時刻。
人影を避けて、ミミにマントをかぶせて、光子郎とミミは少し大きな広場に来た。
「ここなら翼を広げても周囲にぶつかりませんね」
キョロキョロと人が居ない事を確認し、ミミのマントをとってやる。
「さ、ここからまっすぐ上に飛んでいけば『風の境目』へとつけますよ」
「うん!やってみる!」
ミミはそういうと、光子郎の手をぎゅっと握り締めた。
「ちょっ・・・ミミさん!?」
女の子どころか特定の人ともあまり肌を接しない光子郎は戸惑った。
「ありがと!光子郎くんと会ってなかったら私今頃殺されてたかもしれないわ!
ホントにホントにホーントに!ありがとv」
純粋そのものの笑顔に、光子郎は思わず顔を紅らめる。
「じゃ、そろそろ行くね!」
ミミは光子郎の手を離すと、右の頬にチュっと可愛い音を立ててキスをした。
これには光子郎も驚いた。
「なっ!ななななな!!!」
キスされた方の頬を手で抑えて、光子郎はミミを見つめる・・・というより凝視した。
「?どーしたの?」
しかしミミは何事も無かったかのように小首を傾げる。
「なっなにって・・・っ!き、キキキキ・・・!!」
あまりの驚きに言葉が紡げない。
「キス?がどうかしたの?」
「どうかしたのって!キスなんてきやすくしてはダメですよ!!」
「え〜?なんでぇ〜?」
不服そうにミミがブーブー言う。
「き、き、キスっていうのは好きな人にするもんです!!
きやすくしてはいけません!しかもお、お、男に!!」
「・・・女の人ならいーの?」
「ダメ!!!」
もしハタから見てる人がいたら夫婦漫才にしか見えないだろうが本人達は真剣。(とりあえず光子郎は)
「じゃあどんな人にならしていいのー?」
「そりゃっ!す、好きな人にですよ!!」
真っ赤な顔をさらに真っ赤にさせて光子郎が熱演する。
ミミは一瞬キョトンとしたが、次にはニコーと笑顔になっていた。
「じゃあダイジョブよ!私光子郎くん大好きだものv」
照れもせず言われた言葉に光子郎は卒倒寸前。
もう言い返す気力もない。
「??」
ミミはただ頭をひねるばかり。
「あ!じゃあホントに帰るね」
ミミはピン、と翼を広げた。
「じゃあね〜!」
トン、と地面を軽く蹴り上げてミミは空に舞いあがった。
つもりが・・・。
「・・・あれ・・・?」
飛べない。どころか、浮きもしない。
「ど、どうしたんですか・・・?」
光子郎もミミの狼狽ぶりに再び驚く。
「飛べないの〜〜〜っ!」
先ほどの笑顔とうってかわり今にも泣き出しそうな顔のミミ。
「そういえば最初落ちてきてましたね・・・」
「なぁ〜んでぇっ!?なんで飛べないのぉっ!?」
ミミは光子郎に近付き、胸元を掴み上げて光子郎の身体を揺らす。
「なんでと言われましても!!」
ミミは光子郎を揺らす手を止めてハタと気付いた。
「そういえば私落ちてきたんだっけ・・・」
「そういえばそうでしたね・・・。なんで落ちてきたんですか?」
光子郎の質問にミミはんー、と考える。
「なんかね、『風の境目』通り過ぎた途端翼が重くなってね、飛べなくなったの」
なんでかなぁ?とミミが光子郎にすがりつく。
光子郎はちょっと考えてから、
「多分、エレメントスクウェアのせいでしょう」
「・・・それってアレでしょ?私がこっちに来てから魔術使えなくなったっていう・・・」
「そうです。多分こちら側の風の精霊がミミさんに働きかけてくれなくなったんでしょうね」
光子郎が冷静に言うと、ミミは再び泣き顔に。
「じゃあ私・・・どうやって戻れば言いの・・・?」
いくら泣いてるのが自分のせいじゃないと言っても女の子の涙を見るのはどうにも心に悪い。
「うえ〜〜〜・・・っ」
遂にミミが泣き始めてしまった。
「な、泣かないで下さいよミミさ〜んっ」
「だってだって!私向こうに帰りたい〜〜!」
あーんっ!とミミが大声で泣き始める。
このままココにとどまっていたら人が来てしまうだろう。
「泣かないで下さいってば〜〜〜!僕が送っていってあげますから!」
その言葉を聞くと、ミミがピタリと泣き止んだ。
「・・・ホント?」
「それしか方法無い様ですからね・・・」
ふう、と光子郎が溜息をつく。
一転、ミミの表情が再び明るくなった。
「ありがとー!光子郎くんってホントいい人v」
「・・・ありがとうございます・・・」
照れ半分、呆れ半分で光子郎は乾いた笑顔を浮かべる。

「じゃ、しっかりつかまっていてくださいね」
「うん」
ミミが光子郎の胸に顔を摺り寄せる。
光子郎は心臓の音がドキドキして、ミミに響かないか心配していた。
が、呪文を唱えるには集中しなくてはいけない。
光子郎は深呼吸を繰り返し、集中するように努めた。
「風の中に礎を持つもの。
汝、風を司るもの、 『SYLPH』 ―シルフ― よ・・・。
我に自在なる風の術を与えたまえ・・・。
フロート!!」
ミミを助けた時のあの法術だ。
「わ・・・軽い・・・」
自分の身体が自分のでないように軽い。
「フロートは重力と反対の力を持って浮くんです」
光子郎は簡単に説明を終わらせると、自らの翼をはためかせて上へ上へと昇って行く。
「すっごぉーい!!魔術も面白いけど、法術もすごいわねー!」
「そうですか?」
当たり前な自分たちの能力をここまで誉められると、やはり嬉しい。
多分ミミが魔術を使ったら自分も同じ反応をするだろう。
「機会があったら今度はミミさんの魔術を見せてください」
「うん!絶対絶対見せるから!」
他愛もない会話をしていると、『風の境目』へとたどり着いた。
「では、本当にお別れですね・・・」
「うん・・・なんか、寂しいな・・・。せっかく光子郎くんとお友達になれたのに・・・」
お友達。
その言葉が光子郎の心に残る。
「じゃ、『またね』!」
「またねって・・・また来る気ですか・・・?」
「うん!!」
しっかり頷かれたことに光子郎は近頃多くなった溜息をつく。
「ま・・・お互い受け入れるようになりましたらね」
「あはは♪そうなるといいね!・・・じゃあ」
ミミは軽く光子郎の肩を押して、『風の境目』の向こう側へと帰っていった。
「・・・また・・・」
光子郎は穏やかな笑みを浮かべ、生まれて始めてキスされた頬を抑えながら降りていった。



☆NEXT☆


コメント

光ミミvヤマトと太一と比べて一日でかなりの進展(笑)
タケヒカもやっていきたいなぁ・・・。