flying 17

一方、ヤマト、丈サイドでは・・・。
「はぁぁ・・・」
ヤマトの大きな溜息に丈も苦笑を禁じえない。
「まったく・・・太一といいミミちゃんといい・・・なんで皆ムチャしたがるんだ・・・」
「まぁまぁ、ヤマト・・・」
ぐでっとテーブルに突っ伏してしまったヤマトに丈はコーヒーを渡してやる。
ちなみに、ヤマトも丈も無糖派だ。
ここ2日間、ヤマトも丈もろくに眠れていない。
もちろん原因はミミ。
天使領土に行ったというだけでも大事件なのにミミは天位階級。
丈とヤマトの苦労のかいあってまだ向こうに行ったと言う事はバレてはいない。
高位階級たちもヤマトと丈の実力と、ミミが信頼している人物と知っているので、丈の家に居るとわかると、なるべく早く帰ってくるように言って下さい、と言っただけで素直に帰ってしまった。
ず〜っとコーヒーを飲む。
「太一に伝えたいけど、まさか俺まで向こうに行けないし・・・」
「伝える術もないしねぇ」
丈が椅子を引いてゆっくりとした動作で座る。
「はぁ・・・」
また、大きな溜息がヤマトの口から漏れた。
「どうしろってゆーんだよ・・・」
「なーにが?」
『!?』
いきなり後ろから聞こえてきた声に二人はビクリと振りかえる。
「お兄ちゃん、丈さん、こんにちは」
「・・・あ、ああ・・・」
「や、やぁタケルくん・・・久し振りだね・・・」
表面上笑顔を見せるが、内心今の会話を聞かれて無いかと不安でいっぱいだった。
「お兄ちゃんたちどうしたの?クマが出来てるよ?」
うわーっとタケルがヤマトの目元を見る。
「ああ・・・ちょっとな・・・」
どうやらこの口ぶりだと聞かれていなかったらしい。
ホっとした、その時。
「ねぇお兄ちゃん。『太一』って誰?」
一瞬にして凍りついた。
一瞬の間に考えた末の二人の答え。
――――ごまこそう!!!
「あ、あのな、タケル・・・」
「そういえばミミさんもいないね。『ココに居るはずなのに居ない』・・・どうしてだろうね?」
いつもは眩しいタケルの笑顔が今は末恐ろしくて仕方ない。
「ごまかせる、なんて考えない方がいいよ?」
言葉を詰まらせたヤマトと丈。
それは二人が言った事が『嘘』と言ったようなもの。
二人の苦悩はまだまだ続く・・・。

勉強を続ける太一と空の元に、一陣の風が吹いた。
「あら・・・『風渡し』・・・」
『風渡し』とは、高位階級以上の者が使うことを許されている限定法術で、家族などに伝える、いわば手紙みたいなものだ。
太一は風に一緒に乗って来た薄く光る宝珠を手に取り、少し法力を流し込んで開封した。
『お兄ちゃんへ。元気ですか?ヒカリです。』
宝珠から、とても澄んだソプラノの声が響いた。
『私はとっても元気です。
神殿の生活は相変わらず快適だけど、やっぱりみんなに会えないのは寂しいです。
あ、でもお兄ちゃん心配させるつもりで言ってるんじゃないからね?』 
ヒカリらしい気遣いに太一は小さく微笑む。
『もうすぐ陽月祭だね。またお兄ちゃんやお父さんやお母さんに会える事を楽しみにしてます。
じゃあ、また送ります。またね』
ふっと宝珠が光を失い、太一の手元に落ちる。
『風渡し』は双月が重なる時にのみ送ってよいとされるものだ。
別に高位階級は神殿以外のものに興味を示してはいけないという掟はないが、礼拝のため忙しく、出る時間がないのだ。
それにヒカリは高位階級と言ってもまだまだヒヨッコ。
神に祈りを捧げること、これが神殿外に出ることの第一歩なのだ。
遠くて、会えなくても今は我慢。
「ヒカリちゃん、がんばってるわね・・・」
「そうだな・・・」
太一は宝珠を大切にポケットにしまった。
後で母さんと父さんに聞かせてやろうと思い。
「さっ!太一もがんばりなさい!妹に負けるなんてマヌケすぎるわよ!!」
「おう!ヒカリの為にも頑張らなきゃな!」
高位階級になるには指名制。
現高位階級のものが集まり、力ある者を見極めて階級審査へとたどる。
もちろん光子郎や空のように断ることも可能。
階級審査に見事受かれば高位階級になれるのだ。
それにはまず周囲への注目度、力量、好感度諸々が必要なのだ。
しばらくヤマトたちに会えないのは本当に寂しい。
多分、高位階級への道が開かれればそれから一生会えなくなってしまうだろう。
ズキン、と太一の心が痛んだ。
しかし、太一はその痛みを、『友と別れることがツライ』としか考えていなかった。
まだ、お互いの心どころか自分の気持ちにも気付かない・・・気付けないのだった。

「ふーん。天使領土の人がねー」
タケルも丈にコーヒーを入れてもらい(砂糖、ミルクスプーン一杯派)それを飲みながらコトの経緯を話してもらった。
「タケル、わかってると思うが・・・」
「なにが?」
「・・・タケル・・・」
兄の脅しも笑顔でかわす。
しかし今回はそれではすまされない。
ヤマトはさらに眼光を強くしてタケルを睨む。
優しい、過保護過ぎる兄がタケルを睨む時はそうとうのことがあった時のみ。
タケルは笑顔を引っ込めて小さく溜息をつく。
「お兄ちゃん。僕は堅実な信者じゃないよ。
別に神を否定ウンタラなんてそんなに興味ないし」
「タケル・・・」
黙っていてくれるのかとヤマトが表情をちょっと崩した時、逆にタケルの顔が厳しくなった。
「でもね、神の崇拝者でもないよ。
お兄ちゃんが『太一さん』って人知ってても僕は天使がどんなものか知らない。
いくらお兄ちゃんに頼まれても掟破りは掟破り。・・・違う?」
タケルの言い分は至極もっとも。
弟に言い負かされて、ヤマトは言葉を詰まらせる。
言ってる事が正論なので丈も反論が出来ない。
「だーかーら」
そこで何故かタケルがいつもの笑顔になる。
しかしヤマトはその裏にエタイの知れない『何か』が見え隠れし、恐い恐い。
こう言う顔をする時はなにかとんでもない事を考えてる時。
「僕のこの目で太一さんて人を見てみたいな♪
で、お兄ちゃんたちの言うような人で、太一さんの意見が僕を納得させたら許すよ♪」
「よ、ようするに・・・」
「まぁ要を言えば『太一さんを僕に会わせて』ってコトかな♪」
楽しんでいるとしか思えない弾んだ声にヤマトはNOを言ってやりたかったが、ヤマトたちに残された答えは、
「わかった・・・・・・」
のみだった。
ヤマトの胃に穴が開く日は近いかもしれない・・・。



☆NEXT☆


コメント

さて、またいろいろ言葉が飛び交ってきました・・・。
みなさーん。ついてきてますかー?(ヲイ)