flying 12

「・・・ん・・・」
かすかな声と共に太一の大きな茶色の瞳が開かれていく。
「太一!!」
と、すぐ傍から一番聞きたい声がふってきた。
「・・・まと・・・?」
なんでここに?と聞こうとすると、
「っのバカ!!!」
いきなりヤマトに怒鳴られてしまった。
一気に覚醒した太一の目がぱちくりと驚いているが、ヤマトはかまわず言葉を続ける。
「お前なんでまたこっち来てんだよ!?あんときもう来ないって言ってただろ!?」
「だ、だって・・・」
「だってじゃない!偶然俺が見つけたからいいものを・・・お前あのまま俺が気付かずに落ちてたら今度こそ確実に死んでたぞ!?」
太一は反論しようとしたが、ヤマトがあまりにも矢継早に、そして真剣に話すものだから、太一はシュンとしてゴメン、と素直に謝った。
素直な太一の姿勢にヤマトは一瞬言い過ぎたかと気持ちがグラついたが、後ろから丈の声が聞こえたのでなんとか謝りはしなかった。
「やぁ、気分はどうだい?」
「―――?」
ヤマトの後ろから現れた人物に太一は再び目をぱちくり。
「・・・ああ・・・・・・ところで・・・お前、誰?」
もっともな太一の質問に丈はニコニコと笑っている。
「はじめまして。僕はヤマトの友達の丈って言うんだよ」
『ヤマトの友達』というところで太一はパっと表情を明るくして、警戒を解いた。
「そっか!オレ太一!!オレもヤマトの友達ーv」
へへ〜と嬉しそうに笑うと、ヤマトの照れた顔が丈の視界にはいり、フフフ、と小さく笑った。
「で・・・ここ、どこ?」
「ここは堕天使領地の僕の家だよ」
はい、と太一に飲み物を渡す。
「そっか・・・オレまた風に振り落とされちゃって・・・」
「風?」
丈がすかさず質問をかける。
「そう。前にヤマトに助けてもらった時もそうだったんだけどさ、オレちゃんと結界張って来たんだよ。なのに『エアリアル』は壊れちゃうし『レジスト』はうまく行ったんだけど解いた途端また風がゴーって吹いてさ・・・」
「・・・太一くん、その」
「太一でいいよ」
「・・・太一?」
「おう!」
なんとなく入りこめない空気に、ヤマトはちょっとムっとして、それから、その気持ちに対してクエッションマークを浮かべている。
「その、『エアリアル』や『レジスト』っていうのは・・・」
「法術のコトだよ」
「そっか・・・」
丈はなにやら考え込む。
「・・・丈?」
「太一、今、法術使ってくれるかい?」
「?おう。別にいいぜ?」
お世話になったしそれくらい。と、太一はベッドから起き上がり、いつものように十字と六亡星を胸元で切る。
ヤマトも丈も太一の方に集中する。
「我、神の名の元に汝を操るもの。
汝、風を司るもの、 『SYLPH』 ―シルフ― よ・・・。
我に変幻自在の風の纏(まとい)を与えたまえ・・・。
―――――――――エアリアル!」
一瞬、太一の足元からフワリと風が動いたが、すぐに集散してしまった。
「うえっ!?」
これにはやった太一が一番驚いた。
「な、なんでぇっ!?」
もう一度と太一は試すが結果は同じ。
「????」
太一はただただ混乱するばかり。
「ちなみに太一、その法術の成功確率は?」
しばらく考えていたように黙っていた丈が不意に太一に質問に投げかける。
「100%!!ちっちぇヤツだって失敗しねぇよ!」
エアリアルは属性法術系もっとも簡単かつ有効な結界法術で、どの天使もだいたいコレを最初に覚える。
もちろん太一も。これには誰にも負けないくらい固い結界を創れる自信がある。
「うーん・・・これは僕の推測なんだけど・・・」
「なんだ?」
「多分それはここが『堕天使領地』だからだよ」
「は?」
太一はワケがわからないと言う感じで眉を寄せている。
ヤマトは腕を組んで考えていたが、ぱっと顔をあげた。
「そうか!エレメントスクウェア!!」
ヤマトが叫ぶと、丈がコクリと頷く。
「・・・えれめんとすくうぇあ??」
太一一人が首を傾げている。
すかさず、ヤマトの説明が入る。
「エレメントスクウェア。精霊には多種属性があるけど、それは『属性』だけに限らないんだ」
「・・・はぁ!?」
ますます混乱したように、太一がすっとんきょうな声をあげる。
説明が丈にかわる。
「太一も精霊に属性・・・風とか、水とか、いろいろあるのは知っているだろ?」
「おう」
「今太一の詠唱を聞いているところ、どの世界もやはり精霊の名は共通だ。
例として 『SYLPH』 ―シルフ― をとりあげると、シルフの属性は『風』でも、その『風』という属性の中にも、さらに属性があるんだ」
そこまで言うと、太一がわかったという風に笑顔を見せた。
「思い出した!『聖』と『魔』だな!」
「ご名答」
丈がニコリと笑う。
「『聖』と『魔』。どうやらこれには『法術』と『魔術』も関係しているらしい。
仮に天使領地に住む精霊を『聖』、堕天使領地に住む精霊を『魔』としよう。
領地はエレメントスクウェア・・・『風の境目』によって別けられている。
聖精霊は天使領地、魔精霊は堕天使領地にとどまっているから、聖精霊のいない堕天使領地では法術は使えない。多分天使領地で僕らが魔術を使おうとしても同じコトが起こるだろうね」
「でも・・・オレ、こっちに入ってきても法術効いてたぜ?」
「多分それは、結界っていうのは精霊を中から発動させて使う法術だからだと思うよ。
『結界』という膜から聖精霊は出れないから法術が発動する。逆に『結界』という膜に遮られて魔精霊は解けない。
太一は最初にこっちにきてから『エアリアル』・・・だっけ?使ったって言ってたよね?」
太一が頷く。
「あれは結界を発動したけど、聖精霊が魔精霊に飲まれてしまったから、壊れちゃったんだと思うよ。
・・・壊れたって表現が正しいかは知らないけどね」
「・・・ほう・・・」
「太一理解してるのか」
「・・・ぉぅ・・・」
太一の表情が沈んだということはあまり理解していないということだろう。
「違う属性の精霊が入ってきたことで・・・『聖』が『魔』にってことね。精霊同士が争いあって、ああいう結果になっちゃったんだと思うよ」
「おー!丈!お前って頭いいな!」
ソンケー☆というふうに太一が丈を見つめる。
「そ、そうかな?」
こんなに純粋に誉められる事など滅多にないので丈は頬を紅らめてしまった。
「丈・・・紅いぞ・・・」
「う、うるさいな!!」
ヤマトがからかうと、丈が絡んでくる。
そのやりとりを見ていた太一が、爆笑した。
「あははははっ!!お前ら面白いなー!!」
太一が目に涙を浮かべてまで腹を抱えて爆笑しているので、丈とヤマトも思わず笑いにつられてしまった。
「ヤマト、丈」
一通り、笑いの嵐が収まったのか、太一が二人を呼ぶ。
「これからも、よろしくな!」
ヤマトと丈が目をあわせる。そして、太一に目を戻して、
『ああ!こちらこそ!』
とうまく声をハモらせて言った。
天使と堕天使の繋がり。それが、徐々に太くなっていく。


☆NEXT☆


コメント

なんか自分で書いててもわからなくなってきた・・・!(死)
頭の中ではわかるんだけどうまく説明できない・・・すみません・・・(泣)