僕等なキモチ 2

―2000年・8月1日―

空は晴れ渡り、絶好のキャンプ日和!!・・・まぁ『暑い!』と言ってしまえばおしまいなのだが・・・。
「おーいっ!!」
太一が手を振りながらこっちに駆けて来た。隣にはヒカリも居る。
「おっそい!!」
ヤマトが仁王立ちにたって太一を非難した。今の時刻は8時20分。立派な遅刻だ。
「悪い悪い!」
太一はぜーぜー言いながら必死に謝った。
「どうせ寝坊したんでしょ」
空の一言に言い返せない太一は、うっ・・・と言葉を詰まらせた。
「に、しても・・・」
丈は太一の背負っている荷物を見て呟いた。
「太一の荷物、多くないか?」
「そう・・・いえば、そうですね」
その意見に光子郎も納得する。ヤマトたちは割り振られた荷物を持って来ている。だいたい大きなリュック一つくらいに。
でも太一は大き目のリュックのほかにスポーツバックも持っていた。
「ああ、これか?ったりまえだろ〜?ヒカリの分も持ってんだから」
太一はそう言ってふーっと一息ついた。と、ヒカリが太一の服の裾をくいくいっと引っ張って呼んだ。
「あ?どうしたヒカリ」
「おにいちゃん、やっぱりわたしじぶんのにもつ、もつよ。おにいちゃん、おもいでしょ?」
心配して上目遣いで見てくるヒカリが可愛くて可愛くて・・・太一はもっとかっこつけたくなってしまう。
「だぁーいじょうぶだって!ヒカリぃ、お前兄ちゃんを甘く見んなよ」
「でも・・・」
「いいったらいいんだっ!・・・お前はまだちっちゃいし力もないんだから」
それに、と太一は屈んでヒカリの耳に口を寄せた。
「俺にもかっこつけさせろって」
な?と太一がヒカリを納得させるように言う。そう言われたらヒカリはもう
「うん」
と頷くしかなかった。

8月1日・・・。それは太一たち選ばれし子供たちがデジタルワールドに行った日。・・・否、行ってしまった日、と言うべきか。
とりあえず、その日から3日間、太一たちの『当たり前な日々』は『見たことも無い世界』を体験することになった。
そこで考えたのが8/1計画。太一が提案した、去年を振り返る3日間の旅・・・。
去年はバスで集団で行ったが、まさか今年も・・・と、そういうわけにもいかず、8人は電車に揺られていた。
提案は確かに太一が出したが、詳しいことは太一、ヤマト、空、丈、光子郎、ミミ、タケル、ヒカリの8人で決めた。
「いーか、確認するぞ!。今日と明日いっぱいはあのキャンプ場で過ごす。明後日はお台場見学!」
太一が大雑把にみんなに告げた。7人はそれぞれ頷いた。
「そういえばヒカリちゃんはあのキャンプじょういくのははじめてだよね」
「うん。わたしそのひはかぜひいちゃったからね」
「いいじゃないか、僕なんて半分強制参加だったんだから」
丈がはぁ〜と溜息をつく。ヒカリはそんな丈をちょっとむぅっとした顔で見上げた。
「そうですか?・・・わたしはいきたかったです。・・・おにいちゃんといけるってたのしみにしてたから・・・」
ヒカリがちょっと頬を染めて、それでもキッパリ言った。
「くうぅっ!ヒカリ、なぁーんてかわいいんだ!!」
太一が半分冗談(でも半分以上はマジ)でヒカリに抱きついた。
「おーおー妹想いですこと」
ヤマトの茶化した言葉に太一はうるせー!と返した。そんなヤマトの服の裾をタケルがくいっくいっと引っ張った。
「ぼくもね、おにいちゃんといけるのたのしみにしてたよ?」
タケルが可愛らしく小首をかしげて言った。タケルにあまあまのヤマトがそぉ〜んな可愛らしいタケルにジーンと来ないわけがなく・・・
「タケル!兄ちゃんは嬉しい!」
と、太一同様タケルに抱きついた。・・・こっちは冗談要素は含まれていないだろう。
「おーおー弟想いですこと」
太一がさっきのヤマトの言葉をそのまま返した。
「なぁ〜にやってんのよ」
空が冷たく突っ込みをいれ、はぁ・・・と溜息をついた。みんなが一斉に爆笑をした。

1年ぶりのキャンプ場は以前となんにも変わってはいなかった。
「ん〜〜〜〜っ!!きっもちいいー!」
「ほんとねぇ〜」
都会の空気とはまるで違う清々しい山の空気を胸いっぱいに吸い込み、8人はしばしその景色にみとれた。
「さぁて!そろそろ行くか!」
『うん!』
太一たちは今回テントと持ってきていた。というのも、バンガローを借りるお金が無かったのだ。哀しいかな、小学生・・・。
「太一、ここらへんがいいんじゃない?」
空がテントにはるのには丁度よさそうな、平面なところを指差した。
「そだな。よし!テントはるぞ!!」
太一たちは重い荷物をおろしてテント張りを始めた。
「じゃあ私たちは夕飯の準備でもしてよっか」
「おう。そうしててくれ」
力仕事の出来ない女子プラスタケルは夕飯の準備をすることになった。
「じゃあヒカリちゃんはジャガイモ、タケルくんはニンジンの皮剥いてくれる?」
空がそう頼んでピーラーを渡すと、二人は仲良く声をそろえて
『はぁ〜いっ』
と元気よく返事した。
「じゃあミミちゃんはお肉を切ってて」
はい、とミミに肉と包丁を差し出した。が。
「え〜っ。私、めんどくさ〜い」
「み、ミミちゃん・・・」
ここでミミの悪い癖が出てしまった。空が半分呆れて困ってると、それを見つけた光子郎がミミに一言。
「がんばってください、ミミさん。僕、楽しみにしてますから」
ミミはバッと光子郎の方に向かい、
「うん!おいしい御飯作るから待っててね!」
と言い、空から肉と包丁を奪うように取って熱心に切りはじめた。
「・・・ありがと、光子郎くん・・・」
「いえ」
「でも・・・」
「?」
「複雑な心境だわ・・・」
空が深く溜息をつくと、光子郎はハハ・・・と渇いた笑いを浮かべた。

夕飯はキャンプ定番のカレー。8人で食べる御飯のなんとおいしいことか・・・自然に会話に花が咲き、笑い声が絶えず聞こえた。
食べ終わった8人は片付けを終え、ごろりと地面に横になった。草独特の匂いを頬を撫でるような優しい風が緩和して丁度いい具合に鼻をくすぐる。
仰向けに寝転がれば都会では見れない満天の星空。
「綺麗ねぇ・・・」
「そういや、去年はココで寝もしなかったんだっけ」
「ああ。一日目に向こう・・・デジタルワールドに行ったからな」
「ほんと、びっくりしたぜ」
「それに恐ろしかった」
「怖かった〜」
「でも・・・楽しかったですよね」
「うん。ワクワクした!」
「みえないせかいをみてるようでドキドキした」
太一は届きそうで・・・けっして届かない夜空に手を伸ばした。
「いろいろ、教えてもらったよな」
それから、自分の手の平を見つめた。
「本当の『勇気』」
「なくしちゃいけない『友情』」
「心の中にある『愛情』」
「曲がらない『誠実』」
「本にも載ってない『知識』」
「自分を信じる『純真』
「たくさんの『きぼう』」
「たやしてはいけない『ひかり』」
それぞれがミツケタそれぞれの紋章のイミ。そして、想い。
「アグモンたち、元気かなぁ」
「大丈夫。あいつらは」
「そうよ。私たちのパートナーですもの」
「ああ、そうだな!」
「パタモン・・・あいたいなぁ・・・」
タケルはぼそりと呟いた。それはみんなの願い。
「だいじょうぶ」
ヒカリが小さな声で言う。
「わたしたちが『あいたい』っておもってれば、またあえるよ。だって」
「私たち、そう願ってるものね!」
ミミが元気に言う。みんな、それに頷く。
「今は逢えなくても」
「時期(とき)がくれば、また」
そしてまた、風が葉を揺らす。
「・・・さぁーて!そろそろ寝るか!」
「そうね。今日はもう疲れたわ」
「ふわぁ〜〜。・・・おにいちゃん、ねむいぃ〜」
タケルが眼をこすってヤマトに身を寄せる。ヒカリも同様、あくびをこらえている。
「ああ。タケル、寝袋は?」
「おかあさんがおにいちゃんのにいれてもらいなさいって」
確かに、まだ小さいタケルに大荷物はツライ。
「わかった。ほら、こい」
ん〜。とタケルは寝ぼけ眼でヤマトについていく。その様子をヒカリが羨ましそうに見ていた。
「ヒカリ、お前も一緒に寝たいのか?」
気付いた太一が意地悪半分聞くと、ヒカリは正直にコクリと頷いた。
ヒカリのほっぺが暗闇でもわかるくらい紅い。太一はそんな妹が本当にいとおしかった。
「じゃ、寝るか」
太一がヒカリの頭を撫でた。そうしてる太一の頬も、紅い。
「うん!」
ヒカリは元気よく頷いた。
「こぉ〜しろ〜くん♪私たちも一緒に寝る?」
「なっ!なに言ってるんですかミミさん!!」
「もおう、冗談よ、じょ・お・だ・ん!そんなにいやがらなくったっていいじゃない!」
「い、いやがってるんじゃなくてですね・・・」
はぁ・・・と光子郎は深く溜息をついた。
ざわざわと8人はテントの中に入っていった。・・・もちろん、空とミミは別のテントに。
疲れていたのか、寝袋に入るとみんなすぐに寝入ってしまった。
また、ざぁ・・・と風が吹いた。想いよ、どうかこの風にのり、デジモンたちの下へ・・・。



☆NEXT☆


コメント
まだ続きますYO☆