!! ご注意 !!
骸が女体化してます。
苦手な方はリターンしてください。
 





 Sky High. Summer Blue.


骸はとにかく人目を惹く。
美しく整った顔立ちに、宝石を思わせるオッドアイ。
何よりも、豊満なボディーが色香を放ち男たちを引き寄せる。
しかも段々暑くなるのと比例して骸の露出が増えるので、追い払っても追い払ってもナンパの声が途切れない。
(…これで十人目…)
ついに二桁を突破し(いつものことだが)いい加減うんざりする。
ただでさえ暑いのに、余計不快な思いをしなければならないなんて。
「…いい加減にして頂けませんか。これ以上僕に付き纏わないで下さい」
何度目かわからぬ言葉を浴びせても、鈍いのか阿呆なのか、男はヘラヘラ笑いながら骸から離れない。
「つれないなぁ〜いいじゃん少しくらいさっ、ね?」
「イヤですよ。お財布にもならなさそうなチャラい男にこれ以上付き合うなんて」
「そう言わずに。…ホテル代ならいくらでも出すよ?」
明らかな色欲を持って骸の顔を、胸を、そして下半身を舐め回すように見る。
ツナ辺りならばそんな気配を感じた時点で半べそをかいてるだろうが、骸は違う。
(…ホテルに連れ込んでぶん殴ってから財布の中身でも頂きましょうかねぇ…)
いつも以上にイライラしているのには理由がある。
一週間前から眼をつけていたスイーツの店が、もう目前に迫っているのだ。
だがこのまま男を引き連れて入ったのならば、増長させるのは眼に見えている。
(…僕のチョコレートパフェ…!)
一日十個の限定品。楽しみに楽しみにしていたというのに。
腸が煮えくり返る。
震える肩をどう思ったのか、何もわかっていない男は骸が何も答えないのをいい事に肩に手を回す。
「さ…行こっか?」
(…堕とそう)
スイーツの恨み、思い知るがいい。
算段をつけて男についていこうとすると、突然男が情けない声を上げた。
肩から手の重みが消えている。
「…お前、何してんだよ」
「!」
振り返れば、よく知った金髪が滅多に出さない怒りの声を男に向けた。
「っ…んだ、てめぇは「…ディーノ…ッ」」
見栄だろう。震える声でディーノに絡もうとする男の声を遮って、勢いのまま抱きついた。
「ぉっわ!」
咄嗟の事に慌てて骸を受け止めると、通行人の視線を集めザワリざわめいた。
「よかった…ずっとあの男の人が離れてくれなくて…怖かったんです」
「んな?!」
「ひ、ひぃっ」
ディーノに睨まれ、先程までの威勢はどこへ行ったのか、すっかり逃げ腰になっている。
「…でもこうして貴方に会えて…僕、嬉しい…」
頬を染め、恥ずかしそうにディーノを見てはにかむ。
「う、いや、あの…その…」
ガルガル男を牽制していたが、そんなふうに見られては男の事などどこかへ行ってしまう。
「よろしければ、一緒にお茶でもしませんか?」
ね?と小首を傾げておねだりされて、頷かないものがいるだろうか。
「嬉しい!では早速参りましょう」
腕に抱きつかれ、ふにゅりと柔らかな感触が伝わってくる。
周りを呆然とさせたまま、ディーノと骸はその場から立ち去った。


「全く…どうして男は女性の顔と身体にしか興味がないんでしょうねっ」
プリプリ怒りながら、スペシャルチョコレートパフェのアイスを掬う。
チョコチップアイスを口に入れれば、眉間に寄っていた皺がほにゃり無くなった。
ディーノはと言えば、また骸の猫かぶりに騙されたことに気落ちしている。どうして毎度引っかかってしまうのだ。
「さっきの男なんて僕をホテルに連れてく気マンマンだったんですよ!鏡見て財布の中身確認してから来いっていうか」
「…いやいやいや、違うだろう骸」
ツッコむところが全然違う骸を更にディーノがツッコむ。
「ともかく、男は短絡的すぎます。ちょっといい女性を見るとすぐに言い寄ってきて」
「……」
自分で言うな。ツッコみたいけど実際(性格以外)完璧なので何も言えない。
「ああいう男はまずアウトですね。綱吉くんにも充分言っておかないと」
「…ツナには恭弥がついてるから大丈夫だろ」
苦笑して、カキ氷に乗ってるソフトクリームを掬って骸に差し出す。
「…ま、それもそうですけど。あの子はポヤ〜としてるから心配です」
当然のように受け取る。
口の中に広がるバニラに、頬も緩む。
「ああ、でも…」
ウエハースにチョコレートアイス、生クリームをたっぷり乗せて口に運ぶ。
貰ったって返さないのも当然。
「貴方だったら、オッケーしちゃうかもしれません」
「?!」
口に含んだコーヒーを噴いた。
ゴホゴホ咽るディーノにナプキンを渡して、タオルでテーブルを拭いていく。
あらかじめ用意している様子を見ると、タイミングを計算したとしか思えない。
「ま、貴方がそんな積極的に行動できるとも思えませんけど」
イタリア男のクセに。
くふくふ笑う骸を、じとりと睨め付ける。
「…バカにしてんのかよ」
「心外ですね。誉めてるんですよ?」
「…そんなふうに聞こえねぇ」
「ホントですって。貴方のそういうところ、好きなんですし」
チョコレートパフェに刺さっているガトーショコラを一口食べてさらりと言う。
また咽そうになった。
…骸は天然なのか計算しているのかわからないところがある。
「あ、僕そろそろ行きませんと」
うぅむとディーノが複雑な気分でいると、パフェを綺麗に食べ終えた骸は華奢な時計を見て席を立つ。
「ん?誰かと待ち合わせか?」
当然のように伝票を持って後をついていく。骸は当然のように奢られている。礼すら無し。
「と言うか、買い物の途中なんです。早く行かないと良いのが無くなってしまいますから」
「セール?」
「ええ。まぁ」
「…なぁ、それ俺ついてっていいか?」
「…貴方が?」
きょとん。珍しく骸が本当に驚いている。
小馬鹿にしたように振舞うことが多いだけに、こんな時は年相応に幼く見える。
食い下がるのはもちろん、一緒にいたいから。
ただでさえ会える時間が少ないのだから、向こうが振り払わないのならば傍にいたい。
何でもない風を装いながらも、内心ハラハラしながら骸の答えを待つ。
「…まぁ、僕は構わないですけど…」
戸惑う表情が、一転いつもの笑みに変わる。
「どうせならプレゼントしてくださいねv」
元よりそのつもりだったディーノは、おう!と太陽のように笑った。

■□■

クスクスと潜めた笑い声がそこかしこから上がる。
「買い物って…ふ、服じゃないのか?」
「おや、僕はそんなことひとっことも言ってませんよー」
恥ずかしがるディーノを面白がっている骸は、今にも噴き出しそうな笑顔。
「…俺、外で待って「そんなことしたって見世物になるのは変わりませんよー」おっまえ!楽しむなー!!」
「ばれましたー?」
くふふふふーとディーノを引きずって入ったのは、水着フロア。
ちらちらとこちらを見る好奇心の視線が痛い。
(あああぁぁぁあああもう俺変態っぽい…!)
視線が痛くて痛くてたまらない。
悶えるディーノを尻目に、骸は辺りに眼を配る。
(…とりあえず傍に居させていれば牽制にはなりますかね…)
自分のモノ宣言しなければ、すぐに女性に囲まれてるだろう。
まったく、ディーノこそ見目映えることを気付けというか。
もてる自覚がないのも考えものだ。
「…骸…」
ディーノがすすすと更に近くにくる。
「…傍離れないでくれよ」
捨てないでぇと擦り寄ってくる仔犬のような視線で見てくる。
きゅんっときた。
「…そういうところがタチ悪いんですよ!貴方は!!」
「は、はぁ?!」
突然怒られ、何がなんだかわからない。
「まったく…これだから天然は…」
大きく溜め息をつき、さて。と気持ちを切り替えてカラフルな水着を物色しだす。
「今年はどういうのにしましょうか」
「…去年の水着…パレオの。あれでいいじゃねぇか」
暇だからと言って水着を見るのも気恥ずかしくて、どこを見ていいのかわからない。
「そういって早く済ませようとしても無駄ですよ。それに、あれは足がほとんど見えないから嫌です」
「あれで?!」
「もちろん。…ちらりと見えるのもマニアックぽくていいかと思いましたが…失敗でしたね」
僕とした事が。と悔しそうに呟く。
去年の水着は、オレンジを基色にしたトロピカルな柄のものだった。
ディーノ(を初め男たち)からしたら、パレオから覗く細く白い足が蠱惑的だったのだが、どうも本人は気に入らない様子。
「い、いや俺はあれで充分だと…」
「何を言ってるんですか!夏に見せずにどこで見せると言うんです!」
骸は自分が魅力的ということを、もう、すごく、これ以上ないほどわかっている。
それにプラスして注目されるのが大好きだから彼氏としては頭が痛い。
「…けど、それで言い寄ってくる男をうざがるって、ちょっと矛盾してないか?」
「僕は見せつけたいだけであって、言い寄られたい訳ではないのです」
「……ああ…そうですか…」
ヘンなヤツ。言わないけれど。
「今年はせっかくウェスト少し絞ったんですから、やはりビキニがいいですかね…でもあんまり出すと下品になってしまいますし」
唸りながら、下着よりもずっと面積の小さい水着を手に取る。
思わず想像しては耳まで熱くする。
「…ディーノはどういうのが好みですか?」
「へ、あ、俺ぇ?!」
突然振られ、声が裏返ってしまった。
何気なく聞いたつもりだったが、真っ赤っ赤な顔を見て、ニヤリ笑う。
「…何を想像してたんです?」
「!!」
「…ディーノのえっち」
「んな!!」
ぽそりと耳の傍で囁かれ、思わず後ずさりする。
耳の奥に骸の声が引っ付いて離れない。
「まぁいいです。…で、何が似合うと思います?」
「…お、俺に聞くな…い、いや待て!」
ココにいるだけで精一杯なのに、と断ろうとして、待ったをかける。
(…ここで希望出しとけば、ビキニだのハイレグだの着せずにすむか…?!)
やはりディーノとしては、あんな、本当に隠してるのかわからない水着は着て欲しくないのが本音。
(できるだけ自然にワンピースタイプのを薦めて…)
だがまともに水着を見れやしないので、どれがいいかが全く頭に入ってこない。
早くしなければ骸が我慢が切れてしまう。
何か、何か。と焦っていると、ついにソレを発見した。
「こっ、これなんてどうだ?!」
口端を引きつらせて笑顔を作る。
自然にしたつもりがとんでもなかった。
「…これ、ですか?」
指差した先の水着に、骸はキョトンとする。 シンプルな、飾り気の無い紺色の水着。
競泳用のだった。
(あ、あれ?!)
別のものを指差した筈だったのに。
(どうしよう…!)
いくらなんでもこれはあからさますぎる。けれど今更訂正もできない。
またバカにされる!と覚悟するが、骸からは嫌味も嘲笑も聞こえてこない。
おやと骸を見れば、口元に手を当てて真剣な眼をしている。
「…ま、とりあえず試着してみますか」
「お、う…」
あっさりオッケーが出た。
案外好感触なのか?とドキドキしながら、試着室前で骸を待つ。
「…ディーノ?そこにいますか?」
「ああ、いるぜ」
「じゃあ出ますね」
カーテンを引く音がし、中を見る。
「…ブッ!!」
慌てて両手で口と鼻を覆い、骸に背を向ける。
競泳用の水着。なるほど、覆う面積は多い。
しかしカッチリとしたデザインが逆にいやらしかった。
なんというか
「マニアックですねぇ」
ニヤリ骸が笑う。
まるでこうなることがわかっていたような。
「ちが…!そういうんじゃ…!」
「何言ってるんですかー。こんなの選んでおいて」
やっぱりバカにされた。
どころか、後ろを向いてるのをいいことに、脇下から腕をさしこんで抱きつくと、むにゅりと胸を押し付けてきた。
「ッッッ!!!」
「でもワンピースタイプはダメなんですよ…だって、ほら」
そっと、先程と同じ様に耳の近くに呼吸を感じる。
「胸のサイズが合わなくって潰されちゃうんです」
苦しいんですよ。
高校生とは思えない肢体。その胸が自分の手にも納まらないくらい大きいことも知っている。
夜の情事、骸の乱れた身体を思い出してしまう。
「ひっ人前でこんなことすんな!!」
骸を引っぺがすと、再び試着室のカーテンを閉める。
「これじゃなくていいんですかー?」
「いい!べ、べ、別のにしてくれー!!」
俺が悪かったと土下座したくなる。
もう少しで本当に変態になるところだった。
ディーノの内心を知ってか知らずか(いや絶対わかっているだろう)骸は試着室の中でくふふと密やかに笑った。


それから一時間、選びに選び抜いた水着を会計し、骸は上機嫌だ。
振り回されっぱなしのディーノはようやくあの空間から脱出し、ぐったりとしている。
「ディーノ、ディーノ。ありがとうございます」
くふふと笑って腕に抱きついてくる。
文句も疲れも全部全部、その顔を見るとどこかへ行ってしまう。
「…はぁ…」
怒らなければといつも思うのだが、実現できたことは少ない。
ともかく、骸が嬉しそうにしているのが嬉しくて。
「折角水着も買ったんですから、どっか行きたいですねぇ」
「じゃ、じゃあ俺ん家のプライベートビーチとかどうだ?」
「へぇ。そんなの持ってるんですか」
にこ。笑いながらも、やはり骸にはディーノの思考はお見通しだ。
どうせ、誰にも見せたくないからとかいう独占欲からだろう。
(まぁわかりやすいことで…かわいらしい)
七歳も下のやつに可愛いと思われてることも知らず、ディーノは必死に行こう行こうとアピールしてくる。
(…別に乗ってあげてもいいんですけど…)
ディーノを見れば、笑顔の向こうに真剣な瞳が見える。
(からかうとまた楽しいんですよねぇ)
ゾクゾクとS心が膨れ上がる。
にこにこと笑顔の下に綺麗に隠しながら、ディーノの手を取る。
「ではぜひ連れて行ってくださいな」
プライベートビーチ『にも』
パァとディーノの顔が喜色めく。
「おう!」
その笑顔が凍りつくのを想像して、骸はペロリと唇を舐めるのだった。
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