その日は知っている。
年に数回、摘発数がぐんと増える日だ。
風紀委員が監視の目を光らせていると言うのに、女子も男子も懲りることを知らない。
いい度胸じゃない。
そう言っていたのは去年までのこと。

「……」
「委員長?見回りはよろしいのですか?」
獲物を咬み殺せることに嬉々として出かけてく雲雀が、今日はどうも消極的だ。
意見する草壁をチラッと見て、また書類に戻る。
「そんな気分じゃない」
「は…そうですか…」
サインを手早く書いていく。
気にするのは群れではなく時計ばかり。
「はい。これで終わり」
「…確認しました。お疲れ様です」
「うん。じゃあ僕は帰るから」
そそくさと帰る仕度を始め、一分も経たない内に雲雀は立ち上がった。
「見回りはきみたちでしてて。…ま、僕がいないと暴走するところがあるみたいだからよくよく目を光らせといてよ」
「はい」
「それから…少しは大目に見てやってもいいよ」
「…は?」
「…あとで処分が面倒だからね」
ぽつりと呟いた言葉だけ残し、雲雀は足早に応接室を後にする。
後に残った草壁は、はぁ…。とマヌケな声しか出なかった。

去年まではできた。
わからなかったから厳しくできた。
けれど知ってしまい、自分がその立場に立った時、今までと同じことが出来なくなった。
「……」
鞄にはチョコレートが入っている。
馴染みの店で購入したものだ。
だが風があまり洋菓子を食べているところは見たことがないし、喜ばれなかったらと思うと気力が失せる。反面、喜んでくれたらと思うと走って帰りたくなる。
矛盾した気持ち。
今年はもう知ってしまった。
雲雀は、知ってしまった。
もうきっと戻れない。

「ただいま」
「おかえり、雲雀くん」
ちょっと前までは考えられなかった挨拶をすればおだやかな声が返ってきた。
「寒かったでしょう?ご飯できていますよ」
「……は、」
わざわざ迎えに来てくれる風…の姿に、思わずマヌケな声が出てしまう。
「ちょ、ねぇ。何その頭の…」
「ああ…これですか?」
突っ込まずにはいられない。
当の風もさすがに恥ずかしいのか、珍しく照れて笑う。
当然だろう。風の頭にはカチューシャのように、そしてみつあみの結び目には真紅のリボンが結んであるのだから。
「今日はバレインタインでしょう?中国では花を贈るのですが、日本ではチョコレートと聞いて…どうしようか迷っていたらリボーンがこれを、と」
唖然と廊下につっ立っている雲雀の手を引き暖かい部屋へと連れて行く。
「私をプレゼントします、よ。雲雀くん」
それからとチョコと赤い薔薇も雲雀の手に乗せる。
「日本ではこんなプレゼントの仕方もあるんですね」
ちょっと照れますね。と笑う風。
さらりと冷たい雲雀の頬をなぜる。
「…普通、逆じゃない?!」
思わず突っ込んでしまう雲雀に罪はない。
あれだけ悩んでた僕の時間を返して!
訳のわからない雲雀の叫びは、風のキスひとつでおさまった。

ついでに鞄にいれてあったチョコは、ちゃんと風にプレゼントできました。



この先は大人のバレンタインです。
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