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Innocent Beat 聖なるデジモンが多いこの場は、スピリットを操るものを中心にして守られており、その中の『光』のスピリットを持つヴォルフモンは、毎日の日課になっている森の見回りをしている。 スピリットを持つデジモンに、血族関係は全く無く、実はスピリットに選ばれたデジモンに受け継がれるのだ。 スピリットを持ったデジモンが倒されたり、スキャンされたり、寿命が尽きたりすると、スピリットはデジタマから離れ、また別のデジタマへと入り込み、スピリットを受け継がせるのだ。 『スピリット』は、全部で10個。 『炎』『光』『風』『氷』『雷』『闇』『水』『地』『鋼』『木』 この10個だ。 現在スピリットを受け継いでいるデジモンは、5名。 光の闘士・ヴォルフモン、風の闘士・フェアリモン、氷の闘士・チャックモン、雷の闘士・ブリッツモン、闇の闘士・レーベモンの5人だ。 生まれてないスピリットの中で、一番前に失われたのは『炎』だ。 なので、次の闘士が生まれるのなら、まずこの闘士なのだ。 「・・・そろそろ生まれてもいい頃なんだが・・・」 炎の闘士を探す意味も込めて、ヴォルフモンは見回りをしているのだ。 しばらく道を探索していると、小さな細い声が聞こえてきた。 泣き声のようだ。 ベビーデジモンに何かあったのかと、ヴォルフモンはそちらの方へと寄っていく。 茂みを別けて、ソコに行くと。 ガサリ いきなり立った音にビックリしたのか、ソコに居たデジモンはビクゥッと肩を強張らせ、身体を後ろの方へとずらす。 燃えるような髪と尻尾。 濃い肌の色。 深い碧色の、獣のような眼。 「・・・お前は・・・」 フレイモン。 アグニモン・・・炎の闘士のひとつ下の進化前の姿だ。 フレイモンはいきなり現れたヴォルフモンに怯え、ビクビクと後ずさりする。 が。 「・・・お前、足を怪我しているのか?」 よく見れば、その足には血が滲んでいる。 庇っているところを見ると、捻挫でもしているのか。 ヴォルフモンが治療してやろうと近づくと、フレイモンは遂に泣き出してしまった。 「お、おい・・・」 フレイモンは泣き虫で、言葉が拙い。 こういうのに慣れていないヴォルフモンは、どうしていいのか立ち往生してしまう。 「〜〜〜〜〜っ」 それでも放って置く訳には行かない。 ヴォルフモンはしゃがんで、出来るだけフレイモンと視線をあわせてやる。 「・・・俺はお前を傷つけないから。怪我したところを見せてみろ」 ヴォルフモンの言葉を聞き、フレイモンは涙でウルウルしている目を、ヴォルフモンに合わせる。 見上げた紅い瞳は真剣で、鋭いのにどこか優しさを帯びていた。 「・・・・・・」 フレイモンはピクンと大きな耳をひと振るえさせ、それからおずおずとヴォルフモンの方へと足を差し出した。 「ジッとしてろよ」 一言言うと、ヴォルフモンはフレイモンの足を優しく掴み、もう片方の手から自分のデジコードを出現させた。 それを、フレイモンの足へと近づけていく。 ヴォルフモンのデジコードのほんの一部が、フレイモンの傷付いたところへと入り込んでいく。 そして数十秒後には、フレイモンの足は元通りになっていた。 不思議な事を目の辺りにしたフレイモンは、まだ涙の残っている瞳をキラキラと輝かせた。 「・・・こんなもんか・・・」 軽くフレイモンの足を曲げさせてみるが、別段痛がりもしない。 血は残っているが、傷ももう完全に塞がっているようなので、ヴォルフモンは自分のデジコードをしまった。 「もう怪我なんてするなよ」 フレイモンの頭を軽く撫でてやる。 あちこちに飛び跳ねている髪は、ネコっ毛でグローブを嵌めた手にも気持ちがいい。 フレイモンも、嫌がりもせず撫でられている。 「じゃあな」 ヴォルフモンは立ち上がり、フレイモンに背を向ける。 ベビーやチャイルドデジモンの世話をしたがるデジモンも居るが、普通デジモンは自分の力で育っていく。 野生の力というやつだ。 よほど小さな時以外、ヴォルフモンもそうやって進化してきたのだ。 はやく闘士として活躍できるよう進化することを祈り、ヴォルフモンは立ち去った。 「・・・・・・」 その後姿を見て、フレイモンは大きくフサフサな尻尾をパタパタと左右に振る。 そして、立ち上がった。 先程から気配が後方からする。 小さな気配だが、油断は出来ない。 下手に襲撃を待って、周囲に居るかもしれないデジモンを危険に晒す事は出来ないので、ヴォルフモンは警戒の意味もこめて大声を張り上げた。 「誰だっ!!」 振り返ると、少し向こうの茂みがガサリと動いた。 ・・・あそこに隠れているのだろう。 しばらくソコを眺めていると、ピョコリとソレが姿を見せた。 「――――――――――」 ソレを見て、ヴォルフモンの肩の力が一気に抜ける。 「・・・フレイモン・・・」 呼ばれて、フレイモンはそこから出てきた。 まだ少し警戒を残しつつも、ヴォルフモンに近付いていく。 フンフンと鼻を鳴らし、匂いを確認する。 そしてヴォルフモンと眼があうと、無邪気な笑顔でニコッと笑った。 「・・・なんだ・・・?」 溜め息混じりに聞いても、まだ言葉が思うように話せないフレイモンは、『あー』や『うー』を繰り返す。 「・・・わからん・・・」 もちろんそれがヴォルフモンに理解できるはずも無く、頭を抱えてしまう。 思うように伝えられない事にフレイモンも焦れたのか、態度で示す事にした。 ガシッ。 「・・・・・・」 思いっきりヴォルフモンに抱きついたのだ。 これに、ヴォルフモンは再び頭を抱えてしまう。 「・・・あのな・・・おい・・・っ」 「う?」 身軽なフレイモンはどんどんヴォルフモンの身体を上り、チョンっと肩に乗っかった。 「あーv」 そして、また楽しそうな笑顔を浮かべる。 先程の怯えた表情はなんだったんだか。 溜め息をつき、ヴォルフモンは肩に乗っかり、はしゃいでいるフレイモンの脇に手を居れて地面に降ろす。 降ろされてしまったフレイモンは不満そうな顔をしているが、ヴォルフモンは逆にそれを睨むように見る。 「悪いが、俺は忙しいんだ。遊び相手なら他を当たってくれ」 そう言い、フレイモンの膨れっ面を無視して、頭を先程のように撫でてやる。 それから立ち上がり、フレイモンに背を向けた。 ・・・が。 「・・・おい・・・っ」 ドスの聞いた声で言っても、フレイモンはもう先程のよう怯えもしなかった。 睨みつつ振り返れば、フレイモンの楽しそうな顔。 「あら、楽しそうね」 頭上から、女性の澄んだ声が聞こえてきた。 空を見れば、風の闘士・フェアリモンが舞い降りてきた。 「フェアリモン」 「はぁいヴォルフモンv・・・あら?」 ヴォルフモンに引っ付いているフレイモンに目を移し、フェアリモンは楽しそうな表情になる。 「あらフレイモン!孵ってたのね!・・・きゃ〜かわいい〜vvv」 フェアリモンがはしゃぎだすと、フレイモンはビクッと怯えてヴォルフモンにしがみついた。 「フレイモンちゃ〜ん?フェアリモンお姉ちゃんですよ〜?」 フェアリモンがフレイモンを撫でようと手を出す。 フェアリモンに懐けば、自分からも離れてくれるだろうと踏んだヴォルフモンは、その成り行きを見守る。 しかし、そう簡単には行かなかった。 「ふぎゃあっ!」 「きゃっ」 フレイモンが炎を出し、フェアリモンの腕を焼いたのだ。 「フェアリモン!?大丈夫かっ!?」 思ってもいなかったフレイモンの攻撃に、ヴォルフモンもフェアリモンも驚いてしまう。 「え、ええ・・・大丈夫よ。少し火傷しちゃっただけだから」 幸い、風のシールドが炎よりも早くフェアリモンをガードしていたため、大きな怪我にはならなかった。 それに安堵したヴォルフモンは、ギッと先程よりもずっとキツく、フレイモンを睨んだ。 「フレイモンッ!!」 大声で怒鳴れば、フレイモンはビクッを身を震わせる。 「お前、何て事を・・・一歩間違えば、フェアリモンは大怪我を負うところだったんだぞっ!?」 風は炎を大きくし、相性も悪くは無いのだが、それはあくまで仲間として組んでいる時の事だ。 こうやって不意打ちを食えば、通常よりも大きいダメージを受けてしまうのだ。 「あ、あぅ・・・っ」 怒鳴りだすヴォルフモンが恐いのか、ぎゅっと握っていたヴォルフモンの服から手を離すと、フレイモンは2、3歩後ずさりをしてしまう。 「まぁまぁ・・・フレイモンが人見知りって忘れてた私も悪いんだし・・・」 「そんなのは関係ない。フレイモン、フェアリモンに謝るんだっ!」 捲し立てるヴォルフモンから更に遠ざかり、フレイモンはボロボロ泣きながら走り去ってしまった。 「おいっ!!」 「も〜っ!ヴォルフモンっ!」 追いかけようとするヴォルフモンを引きとめ、今度はフェアリモンが一気にしゃべる。 「あんな言い方って無いでしょ!?只でさえフレイモンは泣き虫で人見知りデジモンなんだし! せっかくヴォルフモンに懐いてくれてたのに・・・他に言い方ってものがあるでしょ!?」 何で俺が怒られなきゃいけないんだ・・・と思いつつも、フェアリモンが恐くてヴォルフモンはあえて言わず留めた。 「し、しかしだな・・・」 「しかしもかかしも無いわよっ!ほら、早く追いかけて行きなさいッ!!」 ビシッとフェアリモンは、フレイモンの走り去った方を追いかける。 言葉では絶対にフェアリモンには勝てない。 『泣かせてしまった』と言う罪悪感もあり、ヴォルフモンは踵を返してフレイモンを捜索しにかかった。 フレイモンは結構あっさりと見つかった。 何度か呼びかけるように叫ぶと、ひょっこりと樹の幹から顔を覗かせたのだ。 まだ目じりには涙が残っており、鼻をスンスン鳴らしてこちらを見ている。 とりあえず元気そうなフレイモンの姿にホッとし、ヴォルフモンは両腕を差し出す。 「ほらっ!そんなトコに居ないで降りて来い!」 しかし、まだ先程の事が抜けないのか、フレイモンはジリッとその場を後ずさる。 そんなフレイモンの態度にムッとしたヴォルフモンは、目尻を上げた。 「・・・さっきのはお前が悪いんだろう。何にもしてないフェアリモンにいきなり攻撃をしたんだからな。 早く降りて、フェアリモンに謝ってくるんだ!」 言えば、フレイモンは更にヴォルフモンから遠ざかる。 しばらくそんな押し問答を繰り広げていたが、やがてヴォフルモンの方が先に音をあげた。 「・・・わかった・・・そんなに樹の上が好きならそうしていろ。・・・付き合ってられるか」 ヴォルフモンはそう言い吐き、フレイモンに背を向けて立ち去ろうとする。 「・・・・・・っ!」 咄嗟に行ってしまうヴォルフモンを引きとめようとしたフレイモンは、足を踏み外してしまった。 「ぁうっ!」 変に手を枝に残してしまったので、頭が下になってしまった。 このまま落ちてしまったら、いくら身軽なフレイモンでも只では済まされい。 衝撃を覚悟したフレイモンだが、来た衝撃は、意外すぎるくらいに軽かった。 『?』と思い、頭上を見れば、ヴォルフモンがソコに居た。 「あーv」 思わず喜んでしまったフレイモンだが、ヴォルフモンの一言は 「この・・・バカッ!!」 だった。 至近距離で大声を出され、フレイモンは固まってしまう。 「何だってお前はそう危ない事ばかりするんだ!というか、お前木登りは得意なんだろうっ!?受け身くらいとれっ!」 怒鳴れば、三度フレイモンの瞳がウルウルと潤む。 これでは先程の繰り返しと思ったヴォルフモンは、一呼吸置き、フレイモンの頭を撫でた。 「・・・まぁとにかく・・・無事でよかった」 優しい仕草に、一瞬キョトンとしたフレイモンは、すぐにその撫でる手に自分の頬を押し付けて甘え始めた。 「・・・だけど、さっきのはフレイモン、お前が悪い。お前だって、いきなり攻撃されたら恐いだろう? いくら驚いたからといって、自分がして嫌な事を他人にしてはいけない。 『ごめんなさい』出来るな?」 先程よりも優しい口調だったので、フレイモンはしっかりと頷いた。 「・・・よし・・・」 そしてヴォルフモンは、フッと優しく笑んだ。 フレイモンはパッと更に笑顔を輝かせ、先程のようにヴォルフモンの肩に乗った。 今度は、ヴォルフモンも何も言わなかった。 そうして、歩き始める。 「・・・お前は危なっかしいから、アグニモンに進化できるまで俺が一緒に居てやるよ」 それは、自分でも驚くくらいにスルッと口から出た言葉だった。 だが、当のフレイモンは嬉しそうに頷いている。 「改めて・・・俺は光の闘士・ヴォルフモンだ」 フレイモンはキョトっとした後、口元に手を持ち、口の中でブツブツと呟く。 「ぉー・・・?・・・っる??」 「ヴォルフ。ヴォルフモンだ」 「う?お・・・お・・・?」 だが、フレイモンにその名前の発音は難しいらしい。 苦笑し、じゃあ・・・とヴォルフモンは考える。 「お前の言いやすいように呼べ。ヴォル、でも、ルフ、でも」 フレイモンは、まだ口の中で呟いて練習している。 「りゅ・・・?る、ふ・・・モ・・・??」 段々とそれは、『言葉』になってきた。 「・・・ルフモ・・・」 幾字か抜けてはいるが、ようやく言葉になった自分の声に、フレイモンは表情を明るくする。 「ルフモッ!」 「ルフモ・・・?初めて呼ばれるな・・・」 直してやろうかとも思ったが、あまりに嬉しそうにフレイモンがルフモルフモ連呼するので、ヴォルフモンは止めることにした。 「・・・まぁ・・・いいか・・・」 騒がしいのは好きじゃないはずなのに、フレイモンが傍に居るのは何故か不快ではない。 妙な事に胸をざわめかせつつも、ヴォルフモンはフレイモンを肩に乗せ、自分の寝泊りしている洞窟へと向かった。 ・・・余談だが、その後フェアリモンにちゃんと謝ったフレイモンだが、ヴォルフモンと同じくらいフェアリモンには懐かなかったそうだ。 コメント 前々から考えていた小説だったのですが、途中で投げ出してしまったものです(苦笑) それを、頑張って書いて見ました・・・! 私の中でのフレイモンは精神年齢3歳くらいです(犯罪だろう) ヴォルフモンは・・・年齢23歳くらい? 好評だったら続きも書きますv(コラコラ) |