I&You&He

「まったくオリビエのやつは!」
「まったく、カイってば!!」
バタンと扉を強く閉める音の後で、二人の声が重なった。
まさか自分以外にその廊下にいるとはお互いに思っていたなったらしく、パッと目が合ってしまった。
「レイ・・・」
「ジャン、カルロ・・・?」

レイがカイとケンカした理由はこうだ。
カイが最近仕事とベイの練習で疲れているので、レイは気晴らしにカイを街に遊びに誘ったのだ。
・・・カイも寝不足で頭が回らなかったらしく、ついレイにキツイことを言ってしまったのだ。
それにレイもカーっとなり、
「カイのやつを引っ叩いてきたんだ!」
レイは、やや平が赤くなっている右手をジャンカルロの方に見せてやった。
腕は細いが、白虎族次期長であるレイの渾身の一撃は相当効いたろう。
少しカイが哀れで、ジャンカルロはコメントを控えた。
「まぁ自業自得だしね」
「だっろーっ!?」
街の一角にあるオープンカフェで、ジャンカルロにおごってもらったチョコパフェ(特盛り)を食べながら、ジャンカルロに愚痴を吐く。
「そういうジャンカルロは?なんかオリビエがどうたらこうたらって言ってるように聞こえたけど・・・」
ジャンカルロはコーヒーを飲む手を止めて、真剣な表情になった。
「そうなんだ!オリビエもなかなかわからず屋でさぁっ!」
「なになに?」
「たっかが女の子またナンパしたくらいで怒るんだぜー?信じられないよなぁ!?」
ジャンカルロは向かえの方に座っているレイを覗き込む。
「・・・それは答えなきゃいけないのか・・・?」
レイも真剣な表情でジャンカルロを覗き込む。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
そこで間が流れる。
「まぁそれはそれで置いといて」
ジャンカルロはコーヒーカップをまた傾けて、偉そうに足を組む。
「これからレイはどうするんだ?まさかカイを引っ叩くまでしておいて、すぐ帰るわけにもいかないだろ?」
カイのネタを振ると、レイはスプーンの先の方を咥えて、モノ悲しげな表情になった。
「・・・うん・・・今日は絶対カイのトコには帰んないんだ・・・」
シュンとしたその表情に、ジャンカルロはドキッとする。
そういえばレイって・・・。
「な、なぁレイ?もし宿が無いんなら俺ンとこに来るか?」
ジャンカルロが誘いをかけると、レイは弾かれたようにジャンカルロの方を見る。
「いいのか?」
キラキラとした眼や、まだ幼さの残る輪郭。
(・・・かわいいなぁ・・・)
「レイさえよければ」
レイはジャンカルロにニコッと微笑み、
「じゃあ、世話になるな!」
と純真無垢な笑みを見せた。
その笑顔に、ジャンカルロは胸のトキメキを覚える。
ジャンカルロはどちらかと言えば、ブロンドの髪の青い眼の女性(主に年上)が好きだ(オリビエは別として)
しかし、レイの濡れ烏ような髪とか、長いまつげとか、綺麗な金色のひとみとか、女の子みたいな顔つきとか・・・。
(ブカブカの服の中身は、実は女の子だったりして)
なんて思ってしまう。
言ってしまえば、レイは結構ジャンカルロ好みなのだ。
パフェを食べ終わり、『ご馳走さま』と合わせている両手を握り締め、びっくりしている眼を覗き込む。
いきなり引き寄せられて、レイは眉を寄せる。
「じゃ、ジャンカルロ・・・?」
ジャンカルロは『女性をオトスモード』に変形した!
「レイ、どうせならカイなんて捨てて僕と付き合わない・・・?」
口調もいつのまにか『俺』から『僕』に変わっている。
「・・・は?」
訝しげにレイは身を引こうとしたが、ジャンカルロがそれを追ってくる!
「レイって、よく見たら可愛いよね・・・どう・・・?想う心をわからないやつなんかと一緒に居ないでさ・・・僕と一緒に居ようよ・・・」
「ちょ・・・ちょっ・・・ジャンカルロ?」
レイはまだ状態を把握しきれていない!
加えてここは、野外だ!!
ジャンカルロは完全にテーブルを超えて、レイに迫る。
レイの手を握っていた片手をテーブルにつき、もう片手を逃げられないようにレイの後頭部で固定する。
「Amore mio・・・」
ジャンカルロが目を閉じ、レイ(のくちびる)に向かい急接近!
「わー―――っ!!」
逃げようとしても、前門の虎後門の狼!(むしろホントに狼だ)
(カイ・・・っ)
貞操の危機を覚えたレイは、しかしどうしようもなく眼をぎゅっと閉じた。
それをどう勘違いしてか、ジャンカルロは合意を取る。
「待たんか」
ゴスッと鈍い音がしたので、レイは眼を開けてみた。
そこには、ジャンカルロの頭に見事なくらい完璧に踵落しを決めているカイの姿と、腕を組んで目は笑っていない冷ややかな笑みを浮かべているオリビエの姿だった。
カイの左頬にレイの手形が残っているのは伏せておこう(伏せてない)
「おいジャンカルロ・・・お前ずいぶんな事してるじゃないか」
カイが何の感情もこもっていない声で淡々と話す。
「・・・殺られたいか・・・?」
カイはテーブルで更に顔面にダメージを受けているジャンカルロの胸倉を引っつかみ、プロテクターを外している利き手を振りかぶった!
「まぁ待ってよカイ」
そのカイの方をオリビエが叩く。
「オリビエ・・・」
危機を救ってもらったジャンカルロは、オリビエを涙ぐんで見上げる。
「僕が殺るんだから」
全っ然救われてません!
むしろ状況悪化してます!!
・・・まぁ自業自得だけど。
カイは自分よりも容赦なく殺ると思ったのか、はたまたオリビエの殺気に押されたのか、ジャンカルロの身柄を引き渡した。
「じっくり、イイワケを言わせてあげるよ・・・?」
ふふふ、と笑うオリビエに、レイもすさまじい恐ろしさを感じ、背筋がゾッとなる。
「ああ、レイ。この馬鹿な無礼なことをしたね」
「あ、ああ・・・」
「じゃ」
ズルズルズル・・・とオリビエに襟を掴まれて引きずられて、ジャンカルロは連行されていった・・・。
レイは唖然と見ていたが、カイの姿をもう一度見つけると、むっと表情を作り、席を立とうとした。
・・・が。
「うわっ」
腰が抜けていて、立てなかった。
そこをカイが支えてやる。
「・・・まだ許してないんだからな・・・」
レイはソッポを向く。
「悪かった・・・」
そう言って、カイはレイの頬にキスをした。
レイは、それで眉を寄せていた顔を緩め、カイに抱きついた。

・・・何度も言いますが、野外です。
しかしカイとレイも仲直りできたし・・・とりあえずは、一件落着?

―――ある屋敷の地下室から聞くのもおぞましい悲鳴が聞こえる。
「ほらほらほらほら!許して欲しいなら大人しく刑罰を受けろ!」
ビシビシとオリビエが鞭を振るう。
「ま、待てオリビエ・・・なぜあそこに僕たちがいるとわかった・・・」
本当に死にそうなジャンカルロは、オリビエに質問を投げかける。
オリビエは極上の笑顔で
「この前の僕の手料理、実は盗聴機をキミの料理に特別に混ぜておいたんだ」
わかった?とオリビエは聞き、笑顔を引っ込めると・・・
「じゃあほら!罰の続きをやるぞ!!」
「ッぎゃー――――――っ!!」
全然一件落着じゃなかった・・・!!



☆END☆


コメント

いがらし那岐様のリクエストの『カイレイ・ジャンオリ前提のジャンレイ(ギャグ)』だったのですが・・・げ、撃沈・・・(ガクリ)
やっぱりギャグは難しいっす・・・(泣)
いがらし様、またせてしまった上にこんなヘタレになってしまってすみません(泣)
リクエスト、本当にありがとうございました!