星を、空に

『織姫は毎日毎日一生懸命ハタを織り、ハタを織る事が楽しくてしかたがありませんでした。
それを見た父親は、もう少し織姫を幸せにしてあげようと、婿を探してやる事にしました。
婿探しに天の川の東側に来た織姫の父親は、そこで彦星と言う大層働き者の若者を見つけました。
父親は彦星を気に入り、織姫と結婚させることにしました。
織姫も彦星も、仲の良い幸せな夫婦になりました。
来る日も来る日もニ人は楽しそうに遊んで楽しそうです。
しかし。
遊んでばかりいる二人は仕事をすっかりやらなくなってしまったのです。
見かねた父親はニ人に忠告しましたが、返事をするばかりでまったく働こうとしません。
その間、世話のしてもらえない牛はやせ細り、汚くなっていきます。
織姫がハタを織らなくなってしまったので、天の神様も着る服がボロボロになり、困ってしまいました。
ついに怒った父親は、彦星と織姫を天の川の西と東に離れさせ、ニ度と会えなくしてしまいました。
彦星と会えなくなった織姫は、毎日毎日彦星を想って泣きました。
可哀想に思った父親は、織姫にそんなに彦星に会いたいか?と聞きました。
織姫はコクリと頷きました。
すると父親は、また毎日一生懸命働くならば、七月七日の夜にだけ逢わせてやろうと言いました。
それから織姫と彦星は、会えることを楽しみにしながら前以上に一生懸命働きました。
そして、七月七日の夜が来ました。
ニ人は天の川を渡っていき、一夜を楽しく遊びました。
雨の降ってしまったときはカササギが二人を運んで逢わせてくれました。
そして、二人は毎年七月七日の夜を愉しみにしながら仕事に取り組むのでした。』
おしまい。

「はぁ〜。七夕物語ってこう言う風になってたのか〜」
ホームページの物語を読み終え、太一は電源を落としてリビングに向かった。
「なんだ、太一知らなかったのか?」
台所で麦茶とバニラアイスを用意したヤマトは、ソファーに腰掛けた太一にお菓子を出し、
自分も隣に腰掛けてアイスにスプーンを入れ、口に運ぶ。
太一はバクバクと一気に食べきり、麦茶をおいしそうに飲んでいる。
プハーっと一息ついてから、ヤマトの方に視線をやった。
「ってゆーかさ、オオマカな内容しかわかんなかったんだよ。
別にそんなに知りたいー!とも思わなかったし」
太一はそういうと、麦茶を継ぎ足しにコップを持って冷蔵庫まで行く。
ヤマトは太一に声が届くぐらいに音量を上げて、聞く。
「じゃあなんでさっきパソコンで調べてたんだよ」
太一はすぐには答えず、戻ってヤマトの隣に座ってからしゃべった。
「別に〜。ただパソコンあったし。なんとなく」
太一はそれだけ言うと、テレビをつけてチャンネルをパチパチ変え始めた。
ヤマトはアイスを食べ終え、たいして面白くも無い内容に耳を傾けた。
「・・・なぁ・・・・・・」
「ん〜?」
「もしさ・・・もしだぜ?
オレとお前が織姫と彦星みたいに離れ離れになっちまったら・・・どうする?」
太一の方に目をやると、太一は好奇心と、その仲に不安の入り混じるような目でヤマトを見上げていた。
いつもはしない質問に、ヤマトはちょっと驚いたように太一を見る。
太一は相変わらずヤマトを見つめている。
何故か弱気な太一にヤマトはフッと小さく笑った。
そして、自分の部屋に入って暫くして何かを持って戻ってきた。
「なに?」
目の前に差し出されたそれは、縦長の色紙だった。
「短冊。書こうぜ」
ほら、とマジックを太一に渡し、ヤマトも何かを書き始めた。
「た、短冊って・・・どこに飾んだよ・・・」
太一は戸惑い半分、呆れ半分でヤマトに問い掛ける。
「いいから」
ヤマトに強く言われ、渋々太一は何かを書き始めた。
暫く双方とも無言で短冊に願いを書いていった。
つけっぱなしのテレビの音だけが、部屋に響いている。
「よし、書いだぞ!」
ぶつぶつ言ってる割には一生懸命考えたらしく、見るとヤマトはとっくに書き終えていた。
「で、これをどこに飾るんだ?」
書いてるところを見られてちょっと照れた太一は、さっきのふてくされてる表情を顔にまた出す。
「ん?まぁついてこいよ」
するとヤマトはたちあがり、さっさと部屋を出ていってしまった。
「???」
さっぱりわけのわからない太一だが、とりあえずヤマトの後を追った。
ドアを開けたとたんにもわっと身体に生暖かい空気がまとわりつく。
冷房で冷え切っていた身体に、それは一瞬だけ気持ちよかったが、湿度が高いためにすぐに身体からじわっと汗が噴き出してきた。
「っちー・・・」
今年は例年よりも気温が高いらしく、一部ではもう40度近い気温を観測している。
手に持った短冊にも汗がついたらしく、少しシワシワになってしまった。
それでも太一は黙々とヤマトの後をついていった。
エレベーターに乗り、ヤマトは最上階のボタンを押した。
ポーン・・・という軽い音がして、エレベーターの扉が開いた。
屋上についた二人は、さらに一番高いところへと登った。
太陽が出て、丁度梅雨の終った頃の空は、綺麗に青色に晴れ渡っていた。
そんな中、労働をするもんだから二人は汗まみれだ。
普段滅多に汗をかかないヤマトでさえ汗をかいているのでその暑さは想像できるだろう。
「で、何を、するんだ?」
少し息を切らせた太一が、同じく疲れているヤマトに話しかけた。
ヤマトはフーっと息を整えた後、太一に短冊をよこせと手を出した。
「?」
さっぱりワケのわからない太一は素直にヤマトに短冊を渡した。
ヤマトはそれを受け取ると、内容を見ないようにして自分のと重ねる。
次に、ごそごそとジーパンをあさって、父親からくすねてきたライターを取り出した。
「お、おい・・・?もしかして・・・・・・」
ヤマトはニヤリと笑うと、ふたつの短冊両方一気に火をつけた。
紙は、灰になって行き、ヤマトの手から離れて風に乗って行く。
軽いもと短冊は、風に乗ってどこまでも流されていった。
「おまっ!なにすんだよ!せっかく書いたのにー!!」
ひでぇっ!と太一はヤマトを睨む。
「なんで燃やしたりなんかすんだよ!」
太一の怒りももっともだ。
いきなり短冊を書けといわれてせっかく書いたら燃やされて・・・。
「結局、お前は何がしたかったわけ?」
完全に怒った太一が、不機嫌を隠そうとはせずにヤマトを睨む。
「なぁ太一、天の川はどこにある?」
また突拍子もないヤマトの発言に、太一は切れる寸前だ。
「〜〜〜〜っ!!空の上!」
「じゃあさ、オレたちの短冊も天の川に届くな」
ニッコリと言われた言葉に、今度こそ太一は絶句した。
「誰よりも空に近い俺たちの願いなら、絶対叶うよな?」
ヤマトの意図が読めた太一は、嬉しさがどうしても滲み出してしまう苦笑を漏らした。
「っはは!くっせぇヤツ!」
「想像力があると言ってくれ」
それから二人は、暑い中、暫く吸い込まれそうな空の”蒼”を見ていた。

太一とずっと居れますように。
ヤマトの傍に居れますように。

二人の願いは、織姫と彦星に届いたのだろうか?



☆END☆


コメント

七夕企画みたいな感じで書いて見ました(笑)
ちなみにこの題は見る人が見ればわかると思うんですが、『Tales of phantasia』のエンディングソングですv
見れるかなぁ、天の川・・・。